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「そして彼女は私を捨てた」  作者: どるとけい


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2/2

「君から見た私」

「私から見た先輩」の解答編のようなものです。

「私から見た先輩」→「君から見た私」の順で読むとよりお楽しみいただけると思います。

君が入学してからずっと気になってた。

 かわいい子だなって思ってた。

 サークルで見かけるたびに目で追っていたし、飲み会で君が話していると、つい耳を傾けてしまった。

 そんな君から「好きです」と告白されたときは嬉しかった。だから私は君の誘いに乗って一夜を過ごした。私を見つめる瞳、君の啼き声、赤く染まった身体はとてもきれいで魅了された。

 でも本当は知ってた。君が私のことを好きではないことは。好きなのはたぶん私の顔だけだろう。だから私は、私が傷つく前に君の前から姿を消した。買ったばかりのタバコだけ置いて。

 君のことはいろいろ知ってる。名前、年齢、誕生日、血液型、好きな食べ物、家族構成、好きなタイプ。全部君がサークルの飲み会で話してたこと。だけど連絡先だけは知らない。

 私は四回生だから大学に行く機会ももうほとんどないし、もうすぐ卒業する。今後、もう君と会うことはないだろう。自分勝手な先輩で、ごめんね。


 だから二年後、屋上で再会した時は驚いた。

 あれ、タバコ吸うようになったのかな。

 でも私は彼女のことを知らないふりをした。どうせ君もそうするでしょ。

 だけど、君が取り出したタバコのパッケージをみて、一瞬息が止まった。私が吸っているものと同じ銘柄で、偶然か必然かはわからないけど私は初恋のようにドキドキしている。

 いつもなら、喫煙中は誰とも話さないのに思わず話しかけてしまった。


「あ、見ない顔だね。今日のインターン生かな?」

「はい。よろしくお願いします」

「同じ銘柄吸ってるね。珍しい」

「あ、ほんとですね」

「...」

「...」


 夏の日差しがその沈黙に追い打ちをかけるように、じりじりと肌を焼き付けてくる。慣れないことはするものではない。


「...じゃあ、これで。インターン頑張ってね」

「ありがとうございます」



 私はタバコを消して屋上を後にした。バタンと閉まった扉に背中を預けてしゃがみ込む。


「うそ...なんで、なんで君がいるの」


 私は君のことを捨てたけど、本当はずっと会いたかった。でも会ったらまた好きになってしまう。だから知らないふりをしようとしたのに。


 インターンは十日間あるらしい。

 私は君に会いたくて毎日昼休憩の時間に喫煙所に向かった。案の定、君もタバコを吸いにやってきた。インターン生のくせに毎日タバコを吸いに来るなんて生意気だな。なんて思ったりっていうのは冗談だけど。

 さすがに毎回一緒になってるから時々話したりする。

 私たちは口にはしないけど、もうお互いに覚えていることに気づいている。


 そして最終日。終業後に私はいつものようにタバコを吸いに屋上に出た。

 今日で彼女と会えるのは最後だった。でもいつも彼女が来るのは昼だけだったから、もう彼女に会うことはないだろう。

 でも彼女はやってきた。


『最後に一本吸いたくなって』


 なんて嘘をついて。なんとなく分かる。




「好きです。先輩」


 ああ、あの時と全く同じだ。

 君は寂しくなるたびこうやっていろんな人に縋りついたの?

 あの時は私があなたの手を取ったでしょ。だから今度はあなたが私を連れだして。

 君が何を望んでも、私は君の想いに応えるよ。私もたいがいだな。だから今は私だけに夢中になってほしい。

 君の手に引っ張られてホテルに向かった。


 キスをして、身体を重ねた。 

 あの時と変わらない。君は私を求めてくれる。私で感じてくれている。君の啼き声がもっと聞きたい。もっと啼いてよ。もっと私で気持ちよくなって。




「好きだよ、悠」


 どちらが決めたってわけでもないけど、セックスの時だけ呼べる名前。最後に呼びたかった。

 眠りに落ちていく君を見つめる。私は君の髪を撫でて笑顔を作る。涙がこぼれないように。

 やっぱり私は君と一緒にはいられない。

 だから私は、あの日と同じように彼女の前から去ろうと思った。


 いつの間にか私も眠ってしまっていた。

 物音を立てないように、ゆっくり服を着る。


「...先輩...?」


 それなのに、君は起きてしまった。


「あ、ごめん。これはその...」

「何も言わずに帰るんですか?」


 私は黙り込んだ。


「...また、私を捨てるんですか?」


 その言葉を聞いて、胸が痛くなった。悲しみが含まれているように見えるけど、君は無表情でまるでロボットみたいだった。

 君は一人になるのが怖いんでしょ?誰かにすがっていないと不安になるんでしょ?

 たまたまそこに私がいた。君は私の気持ちを知ってた。だから好きでもない私を選んだ。

 私は君と一緒にいたいけど、君はわたしの気持ちには答えてくれないんでしょ?


 君の「好き」は、私じゃなくてもよかったんでしょ?



 だから私は笑った。あの日と同じように。


「だって、君...私を好きって言ったのうそでしょ?」

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