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「そして彼女は私を捨てた」  作者: どるとけい


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「私から見た先輩」

性描写あります。苦手な方は閲覧をお控えください。

「好きです。先輩」

 と告白した翌日、私は彼女に捨てられた。どうやら、ヤリ捨てされたらしい。最低だよ、先輩。

 彼女といっても恋人ではない。でもセックスをしたわけだから、どちらかと言えばセフレの関係の方が近いかも。一回きりの。

 目が覚めると、そこに彼女はいなかった。ベッドには裸の私一人。

 昨日あれだけ激しいセックスをしたのに。

 かけられた布団からは彼女のタバコの残り香がした。


「んん...くさい...」


 そういえば、先輩が喫煙所でタバコを吸っているところは何度か、いや喫煙所の前を通るたび先輩がいる気がする。吸い過ぎでしょ。


 私は女子大に通う一回生。サークルで知り合った四回生の先輩に告白して、一夜を共にした。でも目覚めたら彼女はいなかった。

 あぁ私は遊ばれたのか。

 大学生になったばかりで世間を知らない、毛の生えてない一回生だから簡単に手を出せたのかもしれない。

 彼女の熱を帯びた瞳が、汗が滴る身体が、艶かしい腰つきが、官能的な啼き声が忘れられない。

 いやなんといっても顔がいい。あの顔に出会えることはそうそうないだろう。でも性格は微妙かな。私の心を見透かしたように、嫌な笑みを浮かべるあの顔。

 そんなことを考えながら、ベッドから起き上がった。


「あ、タバコ忘れてってる」


 机に一箱タバコが置いてあった。

 買ったばっかりだったのか、まだ中身は二本しか減っていなかった。

 どうせ取りに来ないだろうし、捨てるのはもったいない。そう思って一本吸ってみたけど、すぐにむせた。やっぱり美味しくない。

 大人になれば美味しさがわかるかもしれない。あと4ヶ月したら二十歳になる。その時にもう一回吸おう。

 その頃には彼女はもう卒業しているはずだ。そうなったらもう一生会わない気がする。どこに就職するんだろう。

 そういえば、彼女のこと名前と年齢しか知らない。連絡先も知らない。あ、でも今日吸ってるタバコの銘柄は知れた。

 


 先輩と過ごした夜が過去になりつつあった頃。喫煙所の前を通った時、ふとタバコのことを思い出した。私は二十歳になった。

 湿気が入らないように密閉してしまい込んでいたあの箱を取り出す。

 白を基調に黒文字で名前が書かれたパッケージ。シンプルで私は好きだ。一本取り出して火をつける。吸ってみたけど、やっぱりむせた。

 美味しいとは言えない。煙は臭いし、吸うたび喉が痛くなる。でもタバコを捨てる気にはなれなかった。

 一日一本、そう言って吸い続けていると、二週間くらいで先輩のタバコの箱の中身は空になった。


「これで吸わなくなったら先輩との唯一の繋がりがなくなっちゃうのかな」


 なんて思って初めて自分でたばこを買いに行った。

 コンビニに入ったものの、買い方がわからない。


「あの、すみません。タバコが欲しいんですけど...」

「いらっしゃいませ!何番ですか?」

「何番?」

「こちらに表示されている番号ですね。どのタバコをお求めですか?」

「えっと、これと同じのを」


 とパッケージを見せると、店員さんは慣れた手つきで「103」と書かれた場所から白いパッケージを取り出した。

 あぁ、番号ってそういうことね。


「こちらですね」

「ありがとうございます」


 バーコードを読み取ってから


「年齢確認ができるものはお持ちですか?」

「あ、はい」


 免許証を差し出した。年齢確認なんて初めてでなんだか緊張する。店員さんはさっと確認して私に免許証を返した。


「六百円です」


 これで六百円もするのか。タバコ買う人って裕福だなぁ。なんて思いながらお金を払う。


「ありがとうございましたー」


 店を出て、買ったばかりのタバコの箱を眺めた。自分でたばこを買ったからか、少しだけ大人になれたような気がした。



 それからさらに一年、私は同じ銘柄のタバコを吸い続けた。

 最初は一日一本だったのが、気づけば二本、三本と増えていった。もう煙でむせることもない。

 先輩のことも、普段はほとんど思い出さなくなっていた。



 三回生にもなると、就活やらなんやらで忙しくなる。

 今日はインターン初日。

 周りには私のようにまだスーツに着られているような、初々しいインターン生が集まっていた。

 会社の説明やオリエンテーションが時間通りに進んでいった。そしてお昼になり、各自休憩をとるようにと指示が出た。私はタバコを吸いに行こうと屋上に出た。外の光がまぶしくて目を細める。喫煙所にはすでに先客がいたらしい。


「あ、見ない顔だね。今日のインターン生かな?」

「はい。よろしくお願いします」


 まぶしくて顔がよく見えないが、声からして女性だろう。でもどこか聞き覚えがある。

 目が慣れてきて、相手の顔が少しずつ見えるようになる。


「あ...」


 忘れるわけがない、あの顔がいい先輩。あの時私を捨てた先輩だ。

 嘘。もう二度と会わないと思っていたのに、まさか先輩がこの会社に就職していただなんて。こんな偶然ってある?

 でも私は知らないふりをしてタバコに火をつけた。たぶん先輩もそうするだろう。


「あれ、同じ銘柄吸ってるね。珍しい」

「あ、ほんとですね」

「...」

「...」


 夏の日差しがじりじりと肌を焼き付けてくる。


「じゃあ、これで。インターン頑張ってね」

「ありがとうございます」


 そう言って先輩はタバコの火を消して、屋上から中に戻っていった。


「ひどいよ、先輩。私のこと無視するなんて」

 

 ふぅ、と煙を吐き出した。まぁ私もたいがい人のことは言えないけど。

 インターンは十日間ある。嫌でもまた会うだろう。

 

 思っていた通り、私が昼休憩で屋上に行くたびに先輩はタバコを吸っていた。


「大学の時もそうだったけど、先輩、いつもここにいるけどちゃんと仕事してるのかな」

「え?」

「あ...」


 考えていたことがそのまま口から出てしまった。


「すみません」

「あはは、いいよ別に。いつもここいるのは否定できないから」

「...」

「ねえ、君はどうしてこの会社を選んだの?地元には戻らないの?」


 あぁ、やっぱり先輩は私のことを覚えている。


「地元にはあまりいい思い出がないので。それにこの会社、皆さんが生き生きとしていて働きやすそうだったと思ったからです。先輩こそ、ここ地元じゃないですよね」

「うん。まあ、私も似たような感じかな」


 そんなことを話していると、昼休憩が終わりそうになる。


「じゃあ、休憩終わるので戻ります」

「うん。またね」


 タバコの火を消して、身なりを整えて屋上を後にした。


 インターン最終日はなんとなく終業後もタバコを吸いたくなり、屋上に足が向かった。

扉を開けたら先輩がいた。先輩は私がこの時間に来るとは思っていなかったらしくて、少し驚いた顔をしている。


「お疲れ様です」

「お疲れ様。今日最終日だったし、もう帰ったと思ってた」

「私もそうしようかと思ってたんですけど、最後に一本吸いたくなって」

「そっか」


 そう言って、先輩は隣を少し空けた。私はその隣に立って、タバコに火をつける。

 しばらくの間、二人とも何も話さなかった。夏の夜風が、昼の熱を少しだけ冷ましていく。

 

 私はタバコを灰皿に押し付けて先輩の方を向いた。

 そして、あの時と同じ言葉を口にした。


「好きです。先輩」


 先輩は私に弱い。私はそれを知っているから、先輩が私を拒むことはないと分かっている。

 あの時も私が好きって言ったら、喜んで誘いに乗ってくれた。啼いてくれた。

 先輩は一瞬何かを言おうとして口を閉じた。それから目を細めて笑った。


「...うん、ありがと」


 ほら、あの時と同じだ。私が「好き」って言ったら先輩は嬉しそう笑って、私の手を取って、それから...。


「...先輩」


 私は一歩先輩に近づいた。先輩は何も言わず、ただ私を見つめている。

 もう一歩近づいて今度は私から先輩の手を取った。

 そのまま私たちは、屋上を後にした。

 ホテルに向かうまでの道のり、私たちは一言もしゃべらず、ただ手を繋いで歩いた。


 ベッドに二人で腰を掛ける。

 肩を優しく押され、ベッドに背中を付けた。顔が近づいて唇と唇が触れた。先輩の香水とタバコがふわっと香ってきて、彼女が近くにいることを感じる。ちゅっちゅっとつつき合うような優しいキスから、先輩の舌が私の唇をノックし、私は少し口を開けて彼女の舌を迎え入れた。お互いを求め合うように深く、激しいキスを交わす。唾液が絡まる音、二人の荒い息遣いがより一層私をかき乱す。今は私だけに夢中になってほしい。


「...優希先輩」


 見上げると、キスで少しうるんだ瞳をしている先輩はとても艶めかしかった。あぁ、これだよ。先輩のこの顔が私をさらに欲情させる。


「...うん」


 私は服を脱ぎ下着姿になった。恥ずかしさはないけど、興奮している全身は赤く染まっているに違いない。

 先輩は私の鎖骨にキスを落とし、少しずつ下に下がっていき下着で覆いきれていない胸元にもキスを落とす。背中に手が回りホックを外されブラをはぎ取られた。私の上半身を覆うものが無くなり、2つの豊なものがあらわになる。


「...やっぱり悠、大きいよね」

「それ今言いますか」

「いつも食べたいなって思ってた」


「優希先輩ってえっちですよね」


 そう言い返そうとしたとき、先輩の舌が私の胸のふくらみに触れた。


「あっ」


 しゃべっている途中だったからか、突然の快感に体が震え、思わず声が出た。私の反応に味の占めた先輩の舌はだんだん私の胸の中心に近づいていき、直前で止まった。


「んんっ」


 中心を避けるように舌で舐められたり、吸われたり、反対側は手で揉まれたり。まるで私の反応を楽しんでいるみたいで。もう私の胸の中心の突起は痛いくらいに膨らんで固くなっている。


「...っ触って...」


 その言葉を待ってましたと言わんばかりに先輩はその突起を口に含んだ。


「...んっ、はぁっ」


 大きな快感に目の前がチカチカしてくる。今度はその突起を舌で転がされたり、吸われたり、舐められて唾液で光っているそれを指ではじかれる。声を我慢できず腕で口を覆おうとすると、先輩に阻止され、両手を頭の上で拘束された。


「だめだよ、悠。声、聴かせて」


 私たちはセックスするときだけ名前で呼び合う。あの時もそうだった。私の名前を呼ぶ先輩の声は、色っぽくていっそう興奮してしまう。胸を触られているだけなのに下腹部がうずいて、太ももをこすり合わせる。

 私に夢中になってる先輩の頭を撫でると、下腹部に刺激が走った。


「あっ」

「なんか余裕ありそうだね、悠」

「そん、なこと...んっ」


 布越しにその固い部分を指先でピンっとはじかれた。


「すごい、下着にまで染みてきてるよ」

「言わないでっ」

 

 先輩が下着に手を掛けたのでそれに応えるように腰を浮かすと、一気にずり降ろされた。見なくてもわかる、私のそこはもう準備万端だった。

 先輩の指が割れ目をなぞるようにゆっくり動かされ、ときどき軽く指先でたたくようにするとピチャピチャと音を立てる。

 表面だけを十分なくらいいじられたら、彼女の指は中への入り口を探すようにのろのろと動き出して中へ入り込んだ。たくさん愛撫されてでどろどろのそこは何の抵抗もなく受け入れた。

 声にならない声が出て、でもそんなことどうでもよくて、ただ気持ちがいい。


「大丈夫?痛くない?」

「う、んっ」


 先輩は私が大丈夫そうなことを確認すると、ゆっくり指を動かし始めた。


「かわいいよ、悠」 


 動かしながらキスをしたり、胸を触ったり、私にありとあらゆる快感を与えてくる。次第に限界が近づいてきて声を我慢できなくなると、それを察した先輩はスピードを速めた。濡れた音と快楽に目の前が白くなってくる。


「あっ、まっ、て、ダメっ、イッ、っく」


 先輩の首に腕を回して抱きついて体が強張りビクビクと震えた。

 体の力が抜け、ぐだっとベッドに沈み込む。はあ、はあ、と荒い息を整えていたら、先輩も服と下着を脱いで裸になった。


「悠も、触って」


 そう言われて胸に手を伸ばした。


「あぁ...」


 先輩の官能的な声に、私の理性は飛び去って行った。懐かしい触り心地、懐かしい声に、彼女をめちゃくちゃにしたいと思った。私の上に先輩が向かい合わせになる体勢で、私は彼女の胸に吸い込まれた。突起をつねって、転がして、舐めて、吸って、噛んで、触って。


「んんっ、あっ」

「優希先輩、胸触られるの好きですよね」

「んっ、夢中になってくれるのが、うれしっ、くて」


 そういって先輩も我慢できなくなったのか、また私をベッドに押し倒し、今度は私の片方の膝を抱えて、反対側の脚にまたがった。

 腰を落とした先輩のそこが私のそこに重なった。

 あぁこれ好きだなぁ。先輩が感じながら滑らかに腰を動かしている姿がきれいだ。二人の声と荒い息、重なり合う音が混ざりあって、もう私の頭も身体もぐちゃぐちゃだ。

 お互いに気持ちがいいところに当てたくて、固いところに押し付けたり、スピードを早めたり。私たちは合図もしてないのに同時に達した。

 夢中になりすぎて息苦しい。荒い息を整えていると、急に眠気が襲ってきた。

 先輩は私の頭を撫でながら


「好きだよ、悠」

 

 そう言って寂しそうに笑った。意識は遠くなっていったけど、先輩の声ははっきり聞こえた。でも私は聞こえないふりをした。




 どれくらい眠っただろうか、ゴソゴソという物音で目が覚めた。


「...先輩...?」

「あ、ごめん。これはその...」


 先輩は服を着て帰ろうとしていた。私が起きたことに驚いて、言葉に詰まっている。


「何も言わずに帰るんですか?」

「...」

「...また、私を捨てるんですか?」


 聞かなくても、その理由は私が一番わかっている。





 ほら、やっぱり先輩は人の心を見透かして不敵な、でも悲しそうな笑みを浮かべた。

 あの時と同じように。


「だって、君...私を好きって言ったのうそでしょ?」

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