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生還者の光と闇

ウォドリング国を進み首都のファロールに到着した花春達。

街の中を少し見て回った後冒険者クランで依頼を探す。

そんな中気になる依頼を見つける。

その依頼で西側諸国が平民にもしっかりと手厚い理由の一端を垣間見る事になる。


「西側諸国の依頼は大陸中央部に比べるとだいぶ毛色が違うね」


「まあそこはお国柄ですわね、環境なども大きく違いますし」


「何かいいクエストはありましたか?」


そんな中で見つけたのは体が不自由な人の世話というのがあった。


どうやらいつも来てもらっているハウスキーパーがどうしても外せなくなってという事らしい。


「このハウスキーパー代理ってなンだろう」


「恐らくハウスキーパーがどうしても外せない用事が出来て、当人の代理という事だろう」


「なるほど、ならこれを受けようかな」


「花春さんは人の世話とか好きですよね」


とりあえずそのクエストを受理してもらう。

受理が完了し依頼人の家に向かう。


少し豊かな家をイメージしていたが、その家は少し年季の入った家だった。


「お邪魔しまーす…冒険者クランの依頼で来ましたー…」


「ああ、よく来てくれた、待っていたよ」


「えっと、あなたがこの家の人ですか?」


出てきたのは車椅子に乗った初老の男性。

片足は失われていて、体も不自由な様子。


とりあえず話を聞く事に。


「おじさンはハウスキーパーを雇ってたンだよね?」


「ああ、ただ彼女は家族の葬儀に出ないといけなくてね」


「それで代理を頼むと冒険者クランに依頼を出したと」


「ああ、とりあえずハウスキーパーがいつもやっている仕事を説明するよ」


「はい、お願いします」


いつもハウスキーパーがやっている仕事について聞く。

初老の男性は典型的な昔の男らしく、家事は苦手らしい。


そもそも体が不自由で思うようには出来ないのもある。

国が斡旋してくれるハウスキーパーは公共事業の一環なのだという。


なので報酬は国から出るという事もあり、結構な数が確保出来ているという。


「おじさンは過去に何かあった人なの?」


「この足の事が気になるのかい?」


「はい、たぶん過去に傭兵とか軍人をしてた…ですよね?」


「正解だ、昔傭兵として大きな戦争に参加してね、生き残ったのはいいがこのザマさ」


「戦争かぁ、やっぱりロクなものでもないンだなぁ」


初老の男性は過去に傭兵として大きな戦争に参加したという。

その際に生還はしたものの、大きな怪我によりこの体になったとか。


生きているだけ儲けものなのか、だが生還しても貧しくなっただけだったとか。


「戦争で生還したって事は武功は立てたンだよね?」


「ああ、でも当時の王家は戦争により財政破綻寸前でな」


「生還者に報酬を払う余裕すらなかった、という事ですか?」


「ああ、それでその当時の王族は貴族の位階を作り出して、それを販売してな」


「位階の販売、それを買って貴族の仲間入りした人がいるンだね」


話では戦争により財政破綻寸前になった国が新たな位階を作りそれを売ったという。

つまり貴族の仲間入りをした傭兵や騎士がそれなりの人数いたという事になる。


だがその者達は貴族院に席がもらえるわけでもなく、貴族からも煙たがられていたという。

とはいえその位階を買って騎士爵や男爵になった傭兵や騎士もそれなりにいた。


その一方で貧しい人は家も家族も職も失いさらに貧しくなっただけだった。

当時の西側諸国は乱れに乱れており、それが今の国を形成する理由になった。


貧しい人はもはや無敵の人であり、貴族ですら襲撃により少なくない数の人が殺された。


その危機感から平民に対しても手厚い政策が取られるようになったという。


「戦争でそれだけの事が起きたって、なンか想像出来ないなぁ」


「まあ戦争なんてそれこそ貴族が始めたのに平民が苦しむもんだしな」


「それは否定しません、戦争が起きるのは結局は人の野心が大きいですから」


「ただそれで考えを改めただけマシなんだろうな、今の国は戦争の記憶を恐れてる」


「戦争って結局は領土を広げたいとか、相手を踏みつけたいから起こすものだよね」


初老の男性もそんなもっと貧しくなった人の一人だった。

家族は離れていき、家も職も奪われ一時期は残飯漁りのような生活をしていたという。


それでも賊に堕ちる勇気はなかったという事なのかもしれない。


多くの人が賊に堕ち、国に討伐された事もあり当時はそれだけ国が乱れていたと。


「でもそンな状態になったって事は、事実上西側諸国は負けたって事だよね?」


「ああ、それによって何かと相手国と揉めてな、まあこの平和もそんな揉めたからこそだよ」


「戦争、私も歴史の授業やお父様から聞いていましたけど、想像以上なんですね」


「結局は金があるかどうか、それにより生還者達の分かれ道だったんだ」


「お金がある人は騎士爵をもらったり、位階を買って貴族の仲間入りをしたりか」


金があるかどうかが生還者達の分かれ道だった。

金がある者は騎士爵を賜ったり位階を買い貴族の仲間入りをした。


貧しいものは全てを失い無敵の人になり凶賊へと堕ちた。

その差がお金だったというのが何よりも現実を皮肉っていると花春は感じた。


「お金があるかどうかが分かれ道だったのはなンか皮肉な話だなぁ」


「結局は金があるかどうかで人生は決まっちまうんだよな、悲しい現実だよ」


「お金持ちも最初からお金持ちだったわけではないですから、貴族がなぜ貴族になったかです」


「国の決まりで財産や権力は子供に引き継がれるしな、でも金持ちも苦労してるのは知ってる」


「そうだね、貴族だって寧ろ人生ハードモードなンだよね」


貴族だって最初から貴族だったわけではない。

寧ろ貴族や王族は普通に人生ハードモードである。


ただ戦争は貴族が起こすものという認識があるから、貴族への感情は悪いものになる。

西側諸国は無敵の人になった平民を恐れているからこそなのだろう。


無敵の人に貴族が襲撃された話も過去にはそれなりにあったという事らしい。


「料理出来た、いつものハウスキーパーさンの料理とは少し違うけど」


「でも美味しそうじゃないか、とりあえずいただくよ」


「おじさんは戦争で生き残っても邪険にされてきたんですね」


「生きてこその物種ではあるけどな、こうして美味い飯が食えるのは生きててよかったよ」


「そう言ってくれると嬉しいな、ありがとう」


その初老の男性は美味しい食事にありつけるだけでも生きていてよかったという。

それは戦争を経験したからこそ生への執着がより強くなったのだろう。


貴族は薬も食事もすぐに手に入る、平民にとってはただの風邪ですら死の恐怖なのだ。


今でこそ平民も医療などへのアクセスが簡単になったのは、国も変わったという事か。


それからしばらくおじさんの世話をして、予定された時間になる。


「とりあえずこンなものかな」


「いろいろ助かったよ、ありがとな」


「いえ、興味深い話が聞けてよかったです」


「報酬はそこの引き出しに入れてあるって言ってた、持っていってくれ」


「うン、ありがとう」


そのまま報酬を受け取り、クランに戻り報告を済ませる。

テントに戻って今後の相談をする事にした。


とりあえず首都にはもうしばらく滞在する事に。


「とりあえず首都にもうしばらく滞在かな」


「あとここから行けるのはブナンザ国とデュライ国になりますわね」


「どっちに行くかはすぐに決めなくてもよかろう」


「とりあえず首都に滞在していろいろ見たいですしね」


「なら決めるのはあとにしますか」


そんな昔の戦争の話を聞いた花春。

戦争から生還した人達は金があるかどうかで大きく人生は分岐していた。


貧しさからはどうやっても抜け出せないという現実。


異世界でも貧困から抜け出す事の難しさを感じた。

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