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 大天球 白い月のように(あるいは大きなたまごのように)みえる空に浮かんでいる巨大な白い球体。天使たちの家。(ホーム) もう一つの月。あるいはにせものの月とも呼ばれたりする。

 世界を生み出して、世界を消滅される、巨大な舞台装置。(ストロボライト)立体構造物。(ストラクチャ)


 世界樹 あるいは、塔。(タワー) 空高くまで生えている白い枝と幹をもつ葉や花のない巨大な木。その近くに大天球は浮いている。

 大地を育み、空を清めて、海を作り、自然を豊かにする。


 大天球に大きな変化が訪れ始ます。

 空に浮かんでいる白い月のような、巨大な球体である大天球が、悲鳴のような音を立てながら、『軋んでいきます』。内側に、内側に。徐々に、その『中心点』にとても強い力で引っ張り込まれるようにして、吸い込まれていくようにして、軋んで、べこ、べこ、と音を立てて歪んでいきます。

 ……、大天球が飲み込まれようとしている。

 ……、『空の渦』の中に。

 重力の底に。

 強大な力で、飲み込まれて行こうとしている。

 そして、大天球が飲み込まれてしまったあとには、そこには大きな空の渦があらわれる。(あるいは、それだけが残る)

 ……、空の渦は、空の穴。

 ぽっかりと開いたなにもない巨大な穴。

 その穴の中に、この世界の、あらゆるすべてのものは飲み込まれてしまうのだ。逃れることは絶対にできない。空の渦の力は、この星のすべてのところにまで届くほどに巨大だから。

(空間や時間までも、ありとあらゆるものを、歪ませてしまうほどに)

 五百枝は大天球を見ながら、そんなことを思いました。

 風がとても強くなっています。(きっと、大天球の影響があるのでしょう)空をうまく飛ぶことがとても難しくなっています。

 ……、十六夜。十六夜はどこにいるの?

 五百枝はきょろきょろと空の中を見渡しました。

 まるで、強い嵐の中にいるみたいでした。

 ごーーー、という強い風の音が聞こえます。

 十六夜の姿はどこにも見えません。

 五百枝が大天球を見ている間に、十六夜はどこかに姿を隠してしまったみたいでした。

 そうやって五百枝が十六夜を探していると、いきなり、五百枝の目の前にずっと探していた十六夜が(おそらくは急降下をしてきたのでしょう)その姿を見せました。

 五百枝はびっくりして、思わず、その動きを止めてしまいます。

 すると十六夜はにっこりと笑って、そのままぎゅっと五百枝の体を抱きしめました。

「あ」と五百枝は言いました。

 十六夜に抱き着かれてしまって、空が飛べなくなってしまったのです。

 それは十六夜も同じでした。

 五百枝もまた、十六夜と同じように、十六夜に抱きしめられたあとで、体が動くようになると、十六夜の小さな体をもう逃げられないように捕まえるようにして、ぎゅっと抱きしめていたからでした。

 二人の小さな天使は嵐のような真っ赤な夕焼けの空の中を、空を飛べなくなって、そのまま自由落下しています。

 そのまるで我慢比べみたいな、自由落下のときでした。

「十六夜。なにをするつもりなの? このままだとぼくたちは一緒に大地の上に落っこちてしまうよ」と(十六夜のことを心配して)五百枝は言いました。

「五百枝。私はずっと前から、本当はね。あなたのことが大嫌いだったんだよ」と十六夜は五百枝の耳元でそう小さな、優しい声で言いました。

 その言葉が十六夜の本当の気持ちなのかどうなのかは、五百枝にはわかりませんでした。(五百枝の心の中にいる十六夜は五百枝のことを好きだよ、と大嫌い、と言っている二人の十六夜が同時に、まるで天使と悪魔のように存在していました)

 ……、でも、その十六夜の言葉は、五百枝の小さな子供の心を、とても大きく、とても深く、……、傷つけたのでした。(ずっと忘れることのできないような、傷でした)

 五百枝の大きな瞳から、大粒の透明な涙があふれて、空の中に(さかさまに)昇って、消えていきました。


 君といつも一緒にいるよ。

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