エルムVS紫の大魔法使いブレイス2
「実は儂もできるようになっていたんですよ。詠唱破棄――煉獄!!」
「なっ!?」
初手のブレイスの攻撃に意表を突かれ、エルムは直撃を食らうことになった。
ダメージ自体はあるが、エルム自体の魔力防御もあって一発程度なら深刻ではないと思いガードをした。
「おっと、伝説の竜装騎士エルムならそこまでダメージは入りませんよね? そこで今回は特殊な仕掛けを魔法に施しているんですよ……!」
煉獄の炎がエルムに当たった直後、その炎が大爆発したのだ。
エルムは疑問に思った。
爆発というのは周囲へのダメージを拡散させるもので、対象となるエルム一人へのダメージが上がるものではない。
「まさか……」
「魔力防御している者は無事でも、ここは幼いコンの精神世界の中――この爆発に耐えられますかねぇ?」
地面や空が揺れ、苦痛の意思がエルムにも伝わってくる。
「ブレイス、お前……」
「これを防ぐ方法はただ一つ、同じ極大呪文を、同じ強さで放ち相殺するしかありません。さぁ、ルールはわかりましたね? 紫色の魔法の時間を始めましょう」
次にブレイスが放ってきたのは氷獄だ。
エルムも急いで詠唱破棄で同じ氷獄を唱える。
「詠唱破棄――氷獄! くっ、間に合わないか!?」
相手が撃ってきたのを見てから、カウンターで同じように放たなければならないのだ。
間に合うはずがない。
氷獄も大爆発を起こし、さらにコンの精神世界を破壊していく。
「エルムぅ、魔法の上手さではブレイスには勝てないよ」
「バハさん、それはわかっている……けど、どうしたら……」
「エルムが勝っているのは経験だよ」
「経験……」
「まっ、格好良さとか他にもいっぱい勝っているところはあるけどね!」
バハムート十三世の言葉を反芻して、思い出していく。
この精神世界に入ってからの戦いのことを――。
「そうか、ありがとう」
「まっ、そういうことだよね」
次にブレイスは辺獄を放とうとしたのだが、エルムは身体に纏う魔力の動きから事前に先読みすることができた。
サンドラの先読み対策だ。
その経験がエルムの魔力読みを上げた。
『詠唱破棄――辺獄!!』
二人の声が重なり、極大魔法がぶつかり合う。
「さすがですよ! ですが、いくら早くても威力が同じでなければ――」
「それも大丈夫だ!」
アナスンとの戦いで得た、素の魔力操作で掴んだ感覚だ。
その経験がエルムの魔力調整力を上げた。
「見事に相殺……ですが、まだまだぁぁあ!! 詠唱破棄――流獄! 至獄! 天獄! 魔獄!」
ブレイスは魂の叫びのような声で、残りの極大魔法を連打してきた。
以前ではありえないような能力だ。
エルムもそれに驚きながらも、冷静に対処していく。
これだけの極大魔法の切り替えはハンスと戦ったときの経験だ。
「詠唱破棄――流獄! 至獄! 天獄! 魔獄!」
土、水、雷、光、闇――様々な色やエネルギーがぶつかり合い、まるで花火のような綺麗さを見せている。
すべてが無事に相殺されていき、周囲は再び暗くなった。
「これで終わりです。ですが……ふふ、儂の勝ちです……」
ブレイスはそう言うと消えてしまい、エルムも精神世界の外へと強制的に出されたのであった。





