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恋は虹色orドブ色?  作者: 黒辺あゆみ
第六話 恋はなに色?

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50/50

エピローグ

本日は二話連投しますので、ご注意ください。

色々なことがあり過ぎた夏休みが明けて、二学期が始まる。

 ダルそうに登校する者、久しぶりに会う友達と楽しそうにおしゃべりする者と、様々な生徒が校舎に入っていく。

 由紀もそんな生徒に紛れて、校舎へと続く道を歩いていた。

 そんな中、注目を集めている二人がいる。

「おい、あれ!」

「え、あの二人って付き合ってるのか?」

こうした声に晒されているのは、永野愛花を隣に連れた田島であった。

 会話しながら並んで歩く二人は楽しそうで、愛花もまんざらでもない様子である。

 デートは大成功だったと店に来た田島から報告を受けたが、その後の経過も上手く行ったらしい。


 ――おーおー、ラブラブだねぇ。

 由紀が眼鏡をずらして二人を見れば、とても綺麗な光景が広がっていた。

 二人の色はお互いに青色で、それが色彩を変化させながら徐々にピンク色になる。それは、まるで虹色で。

 ――恋の色だ。

 二人で生み出す恋の色は、まるで二人の未来を表しているようだ。

「いいなぁ、お幸せに」

胸いっぱいになった由紀がホゥ、とため息を漏らすと。

「おい、なに見てるんだ」

いつの間にか、背後に近藤が立っていた。


「あ、おはよう」

「って、田島か」

由紀の視線の先で愛花を連れて登校する田島を見て、近藤が目を細める。

「とっても綺麗な恋の色だな、って思って」

そう告げた由紀は虹色をいつまでも見ていたい気もするが、人が多くて色酔いするだろうから、眼鏡を元通りに直す。

「ふぅん……」

近藤は由紀をちらりと見た後、再び田島たちを見る。

「鼻の下が伸びてそうなのは、俺にもわかるがな」

「確かに、デレデレしてる」

由紀たちが田島の締まらない顔を観察していると。


「二人並んで、どうしたのー?」

柴田が現れて声をかけてから、田島と愛花の姿に気付く。

「あれ、近藤くんのお仲間じゃない? へー、愛花ちゃんと付き合ってるんだぁ。案外お似合いだねぇ」

柴田が素直に感心していると。

「幸せそうなカップルはみんな消えればいい」

「まーまー、幸せのおすそ分けがあるかもしれないじゃん」

朝から呪いでもかけそうな勢いの中田が続いて現れ、一緒に来たらしい下田が取りなす。

 ――確かに、おすそ分けがありそうな色だよね。

 なんと言っても、由紀だって虹色の恋の色は滅多に見ないのだから。

「よし、来い! 恋のオーラ!」

幸せカップルの空気を取り込もうと、中田が手で空気を掻きよせる仕草をしていると。


「いいや、幸せの独り占めをする奴は、同じくらい不幸になればいいんだ」

「ちくしょう、上手くやりやがって」

呪いをかけそうなのが増えた。

 近藤のバイク仲間の残り二人だ。

 どうやら彼らは夏の恋をゲットできなかった模様である。

 田んぼ仲間が勢ぞろいしてしまったところに、近藤のバイク仲間まで揃ったので、由紀の周辺だけ朝から騒がしい。


「うるせぇな、テメェらはよぉ」

近藤がそう言って男子二人に呆れた視線を向けるも、逆にギロリと睨まれる。

「お前はいいよな! 幸せ一杯だから!」

「そうだ、弘樹も俺らの敵だ!」

ぎゃいぎゃいと男子二人が近藤を糾弾するのを聞いた田んぼ仲間三人組が、ニタリとした顔で由紀を見る。

「幸せ一杯なんだぁ」

「ふぅん」

「お話を聞きたいなぁ」

「……やめい、その顔は」

糾弾が由紀にまで波及したところで。


「賑やかね、あなたたち」

朝から爽やかな声が聞こえて振り向けば、新開会長がいた。

 ――ファミレスで話して以来だな。

「おはようございます」

「……はよ」

由紀はペコリと頭を下げて、近藤は口だけで挨拶をする。

「おはよう近藤くんに西田さん、のんびりしていたらホームルームに遅れるわよ?」

新開会長はそう忠告して微笑むと、校舎の方に歩いていく。

 そこに夏休みの際の面影は全くない。


 ――よかった。

 由紀はドブ色を脱した新開会長にホッとする。

 あの後眼鏡を壊したお詫びだとして、新開会長から由紀の家に高級洋菓子セットと高そうな伊達眼鏡が郵送で届いた。添えられた手紙には反省の言葉が綴られていて、由紀のおかげで目が覚めた思いだと語られている。

 由紀としては夏休み中にちょっと突っかかって来られただけで、元々彼女に恨みを抱いているわけではない。

 それに本来は素敵な人なのだ。

 ぜひこれから「弘樹ちゃん」への未練を吹き飛ばすような、大恋愛をしてもらいたい。


「あの人、雰囲気変わったね」

夏休みに見た新開会長を思い出しているのだろう、柴田がボソリと零した。

「失恋しちゃって、吹っ切れたのかなぁ」

「なんか、大人の女ってカンジがしたねぇ」

中田と下田も、新開会長の変化に目を丸くしている。

 一方、新開会長の夏休みの動向を知らない男子二人はというと。

「いーなぁ、あんな美人と付き合えたらなぁ」

「きっと毎日バラ色だろうなぁ」

そう言って新開会長に熱視線を送っていた。


「挑戦してみればいいじゃねぇか」

「バッカ、それが出来れば苦労しねぇんだよ!」

「お前は幼馴染だから見慣れているだろうけどな!」

彼らに近藤がそう発破をかける、猛攻撃にあった。

「あー、うるせぇ」

近藤が二人から逃げるように足早に校舎に向かう。

 その後を追いかける形で、由紀たち田んぼ仲間ものんびりと歩いて行く。

「あ、そうだ! 課題終わった?」

「一応終わらせたけど」

「私、わかんないの飛ばしてる」

「後で見せ合いっこしない?」

四人でそんなことを話しながら、由紀はこっそりと眼鏡をずらして近藤を覗き見た。

 その纏う緑色の端が微かに虹色がかっていたことは、由紀だけしか知らない秘密である。


Fin

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