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【第二部】勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました〜紅蓮の涙《クリムゾン・ティア》〜  作者: まりあんぬさま
妖精迷宮《フェアリー・ラビリンス》編

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迷宮侵食《ダンジョン・イロージョン》

 胴体を貫かれ、巨大な風穴を穿たれた――樹骸巨兵(トレント・レヴナント)

 その異形の姿が、ぐらりと揺らぐ。


「やった!!」


 イリヤが思わず歓声を上げた。

 確かな手応え。  あれほどの一撃を受けて、無事でいられるはずがない。

 

 ギ……ギギギ……。


 嫌な音が、耳に届く。


「……っ!」


 バニッシュの顔が強張る。

 巨兵は、まだ“終わっていなかった”。

 空洞となった胴体から、黒い瘴気のようなものを滲ませながら――それでもなお、前へと動く。


 ズ……ズズ……!


 壊れかけた巨体を無理やり引きずり、最後の執念だけで進んでくる。


「まずい……! 逃げろ!!」


 バニッシュの声が低く響く。


 倒れてくるあの巨体が、このままでは巻き込まれると判断する。

 バニッシュはすぐさまリュシアの身体を背負い上げた。


「セレスティナ! 黒牙!」


「はい!」


「うん!」


 二人も反応は早い。

 イリヤも、はっと我に返ると慌てて飛び上がる。


「こっちだ!!」


 バニッシュが叫び、全員が一斉に駆け出す。

 足元が揺れる。

 地面が軋む。

 背後から迫るのは、崩れ落ちる巨体の気配。


 ズド……ズドド……!


 樹骸巨兵(トレント・レヴナント)が、限界を迎えつつあった。


 向かう先は――広間の中心にある紅く脈打つ、迷宮核(ダンジョン・コア)


 グガァシャァァァンッ!!


 凄まじい衝突音が、広間を引き裂いた。

 崩れ落ちる巨体が、そのままの勢いで――迷宮核(ダンジョン・コア)へと、激突した。


迷宮核(ダンジョン・コア)が……」


 黒牙の呟きが、震える。

 紅い結晶は、確かに砕けていた。

 中心からひび割れ、欠片が崩れ落ちている。


「これで……終わったの?」


 イリヤが、恐る恐る問いかける。

 だが――ボコッ……と、嫌な音が核の奥から響いた。


「……っ!?」


 バニッシュの目が見開かれる。

 砕けたはずの迷宮核(ダンジョン・コア)が、異様な脈動を始めていた。

 鼓動のように、膨らみ――歪む。


「……逃げるぞ!!」


 バニッシュが叫ぶ。


「え……!?」


 一瞬、三人が戸惑う。

 その迷いを断ち切るように、バニッシュは続けた。


「暴走する……!」


 歯を食いしばり、声を張り上げる。


迷宮侵食ダンジョン・イロージョンだ!!」


「――っ!!」


 その言葉の意味を、セレスティナはすぐに理解した。

 黒牙とイリヤも、ただならぬ事態だと悟る。


 ボコボコボコッ!!


 砕けた核が、大きく膨れ上がる。

 その中心へ――崩れ落ちた樹骸巨兵(トレント・レヴナント)の残骸が、ずるりと飲み込まれていく。


「まさか……! 最初から……!」


 セレスティナの顔が強張る。


「ああ……!」


 バニッシュが頷く。

 樹骸巨兵(トレント・レヴナント)は、ただ襲ってきたわけではない。

 最期の最期で――自身を核に“喰わせる”ことで、迷宮を暴走させたのだった。


 ギギギ……ボゴッ!!


 核がさらに歪み、脈動する。

 その周囲から、赤黒い肉塊のような何かが溢れ出す。

 それは、液体のようであり、煙のようでもあり――触れたものすべてを侵食していく。

 床が、壁が、音を立てて崩れ、飲み込まれていく。


「くそっ……!」


 バニッシュは舌打ちし、踵を返す。


「脱出するぞ!」


 全員が一斉に駆け出した。


「ダメだよ!! 道が塞がってる!!」


 黒牙の叫び声を上げる。


「なにっ!?」


 振り返ったバニッシュの視界に映るのは――先ほど通ってきた道が、樹骸巨兵(トレント・レヴナント)の落下によって完全に塞がれていた。


「……っ!」


 別の道を探すが、どこもかしこも瓦礫と崩壊で遮られている。


 そして、その間にも――ズズ……ボコボコ……!


 侵食は止まらない。

 赤黒い波が、床を這い、壁を喰い、空間そのものを侵し始めていた。


「くっ……!」


 バニッシュは唇を強く噛み締める。

 このままでは、逃げ場がない。

 

「セレスティナ!!」


「はい!」


「転移、できるか!?」


「できます!」


 セレスティナはすぐさま膝をつき、手をかざす。

 魔力が広がり、床に魔法陣が描かれていく。

 複雑に絡み合う古代術式。

 光が重なり、空間が歪む。

 転移陣が、形成されていく。


 転移の光が弾けた次の瞬間――バニッシュたちの視界は、一変していた。


 足元に広がるのは、苔むした大地。

 頬を撫でるのは、湿り気を帯びた柔らかな風。

 そして――目の前には、妖精族の聖域たる泉。

 ダンジョンの最深部から、一気に地上へと引き戻されたのだ。


「はぁ……はぁ……」


 バニッシュは膝をつき、荒い息を吐く。

 背に負ったリュシアの体温を確かめるように、ぐっと腕に力を込める。

 セレスティナも、その場に膝をつきながら、魔法陣の残光を見つめていた。

 転移は成功した――だが、猶予はほとんどない。


「……な、何じゃ……?」

 

 泉のほとりで待っていたオルムが、目を見開いていた。


「お主ら……一体どうやって……!?」


 突然現れたバニッシュたちに、理解が追いついていない。

 

「それよりも! 他の妖精たち、全員を集めてくれ!」

 バニッシュが、即座に声を張り上げる。


「な、なぬ!? 一体どういう事じゃ……!?」


 オルムはさらに困惑する。


「お願い! ダンジョンが暴走して……!」


 イリヤが、涙を滲ませながら叫んだ。


「この辺一帯が――侵食されるぞ!」


 バニッシュの言葉が、重く落ちた。


「な……!?」


 オルムの表情が、一瞬で強張る。


「し、しかし……」


 オルムは、震える声で言葉を絞り出す。


「ワシらは……この地を離れるなぞ……」


 妖精族にとって、この場所はすべてだ。

 生まれ、守り、受け継いできた聖域。


「おじいちゃん!!」


 イリヤが、涙をこぼしながら叫び、小さな拳をぎゅっと握りしめる。


「今はそんなこと言ってられないでしょ!! このままじゃ……みんなが……!」


 その言葉に、オルムの身体がびくりと震える。

 ぐ……ぐむむ……と白い眉の下で、葛藤が渦巻く。

 守り続けてきた誇りと―― 失ってはならぬ命。

 その狭間で、老いた妖精は歯を食いしばる。

 

「……わかった。ちょっと待っとれ!」


 そう言い残し、オルムは飛び立った。

 小さな身体で、必死に羽ばたきながら―― 仲間たちを集めるために。

 その背中を見送りながら、バニッシュは拳を握る。


 オルムの怒号と、イリヤの必死な呼びかけによって――妖精たちは次々と泉のほとりへと集められていった。

 小さな身体を寄せ合い、不安げにざわめく群れ。


「な、何が起きてるの……?」


「本当に、ここを離れるのか……?」


 困惑と恐怖が、空気に満ちる。

 だが、その中心で――セレスティナが静かに両手を広げていた。

 

「……転移の準備ができました! 何処に飛びますか!?」


 その問いに、バニッシュは即座に答えた。


「俺たちが通ってきた街道近くまで頼む!」


「……わかりました!」


 セレスティナは頷き、魔法陣へとさらに魔力を注ぎ込む。

 複雑な紋様が輝きを増し、光が幾重にも重なっていく。

 

 ――その時、ボコッと、不気味な音が泉の中心から響いた。


「……っ!」


 全員の視線が、一斉にそちらへ向く。

 ダンジョンの入り口として歪められていた――女神ルミナ像。

 その表面が、ぐにゃりと膨れ上がる。

 赤黒い肉塊のようなものが、内部から押し出されるように変形していく。


 ドクン……ドクン……!


 脈打つそれは、明らかに異質。

 神聖だったはずの泉が、穢され、侵されていく。


「チッ……!」


 バニッシュが舌打ちをした。


(もう来たか……!)


 迷宮侵食ダンジョン・イロージョン

 その波が、地上にまで及び始めている。


「――鏡律封陣アーク・リフレクション・カージ!!」


 残り僅かな魔力を、無理やり引き絞る。

 瞬間、淡い光の膜が展開された。

 泉の入り口を覆うように、反射の結界が張り巡らされる。

 バニッシュの身体が、わずかに揺らぐ。

 限界を越えた魔力の酷使。

 

「行け!! セレスティナ!!」


 振り絞るように叫ぶ。


「はいっ!!」


 セレスティナも、最後の魔力を解き放つ。

 転移魔法陣が、強烈な光を放った。

 光が――すべてを包み込む。


 その刹那――バゴォォォンッ!!


 膨れ上がった肉塊が、結界へと叩きつけられた。

 バニッシュの張った反射膜が、激しく軋む。


 パリンッ!!


 結界が砕け散ったと同時に、赤黒い侵食が、一気に広がる。

 泉を、地を、木々を――すべてを飲み込む勢いで、這い上がってくる。

 かつて神聖だった妖精族の聖域は、黒き災厄に、呑み込まれていった。




 転移の光が消えた先――バニッシュたちが足を踏みしめたのは、街道から少し外れた森の中だった。

 だが、そこに広がっていた光景は――“森”と呼べるものでは、もはやなかった。


「……な……」


 誰かが、言葉にならない声を漏らす。

 かつて、迷いの霧に守られていた妖精族の住処――リーヴェラ。

 その一帯は、街道近くの森にまで侵食し、完全に別のものへと変質していた。


 木々はねじ曲がり、幹は膨れ上がり、赤黒い肉塊のように脈打っている。

 葉は腐り落ち、地面は粘つくように沈み込み、ところどころから泡のようなものがボコボコと噴き出していた。

 鼻を刺すような異臭が漂い、生命の気配は一切感じられない。


 侵食は、すでに止まっているようだったが――そこにあったはずの景色は、完全に消え去っていた。


「お……おぉ……」


 オルムが膝をつき、小さな身体が震える。


「こんなことが……」


 その声は、かすれていた。

 周囲の妖精たちも、言葉を失い、ただその光景を見つめている。

 泣き出す者、呆然と立ち尽くす者、羽を震わせることすらできず、地面に座り込む者。

 誰もが、理解できずにいた。

 自分たちの住処が――消えたという現実を。


「……すまない」


 バニッシュが、ぽつりと呟く。

 その顔には、苦悩が浮かんでいた。


「止めることが……できなかった」


 拳を握りしめる。


「ワシらは……ワシらは……どうしたら……」


 オルムが、震える声で言う。

 その問いは、誰に向けたものでもなかった。

 ただ、失われたものの大きさに、立ち尽くすしかない老妖精の嘆きだった。

 バニッシュは、その姿を見つめる。


 そして――ぐっと表情を引き締めた。

 オルムの前まで歩み寄り、片膝をついた。


「オルム、俺たちの街に来ないか?」


「……何じゃと?」


 オルムが、ゆっくりと顔を上げる。


「お主らの……街に、じゃと……?」


「ああ」


 バニッシュは、はっきりと頷いた。

 

「じゃが……ワシらは……他種族(よそ者)と一緒になぞ……」


 オルムは、視線を逸らす。

 長い年月の中で築かれた価値観。

 それは、簡単には覆せない。


 だが――バニッシュは、ふっと笑った。


「確かに、俺たちは……ずっとそう思ってた。他の種族とは分かり合えない。疑って、争って、共存なんてできないってな。だが――今は違う。こうして一緒に暮らして、戦って……分かったんだ」


 仲間たちへと、一瞬視線を向ける。

 リュシア、セレスティナ、黒牙、種族も、生き方も違う者たち。

 だが今は、同じ場所に立っている。


「俺たちは……協力して生きていける。だから――お前たち妖精族とも、きっとやっていける」


 まっすぐに、オルムを見つめる。


「一緒に来てくれ」


 差し出された手は、救いではなく――共に生きるための手だった。


「そんなこと……」


 オルムが、言葉を詰まらせる。

 

「そうしましょう!」


 イリヤの声が、響いた。


「おじいちゃん! どうせ、ここにはもう住めないし、それに――この人たちなら、信頼できるわ!」


 まっすぐな瞳で、オルムを見つめる。


「……イリヤ」


 オルムが、孫を見つめる。

 その顔は、いつものような生意気で騒がしい少女のものではなかった。

 どこか――強くなった、顔。

 バニッシュたちと過ごした時間が、確かに彼女を変えていた。

 オルムは、ゆっくりとバニッシュへと視線を移す。

 

 この男は――妖精族のためにここまで来た。

 命を懸けて、ダンジョンに潜り、そして今、すべてを失った自分たちに、手を差し伸べている。


 その瞳は――遥か昔、リーヴェラを訪れた英雄たちのそれと、よく似ていた。


 やがて――オルムは、覚悟を決めたように、小さく息を吐いた。

 

「……よろしく頼む」


 そう言って――差し出されたバニッシュの手を、ぎゅっと握った。

 その瞬間、失われたものの代わりに、新たな繋がりが生まれたのだった。




 小高い丘の上、そこからは――赤黒く変質した森が、一望できた。

 かつて妖精族が住まい、迷いの霧に守られていた神秘の地。

 今やその面影はなく、ただ異形の塊となって大地を覆い尽くしている。

 その光景を、四つの影が静かに見下ろしていた。


「あ~らら、本当にこれで良かったのかにゃ?」


 軽い口調でそう言ったのは、リー=フェイロン。

 中華風の衣を纏い、鼻にちょこんと乗せた小さな丸眼鏡。  糸のように細められた目と、どこか底の見えない笑みを浮かべている。


「仕方がないよ」


 隣に立つ青年が、穏やかに応じた。

 アーク=ライオット――漆紅の鎧に身を包みその胸には誇りと象徴であるクローヴァの印、背には深紅のマント、その佇まいは、静かでありながらも圧倒的な存在感を放っている。


「今回はあくまで“調査”が目的だしね」


 彼の視線は、ただ真っ直ぐに侵食された森へと向けられていた。

 だが、その奥底には何かを見極めようとする鋭さが宿っている。


「そもそも!」


 苛立ちを隠さず声を上げたのは、鍔広の魔女帽を被ったダークエルフの女性。


「ラギウスが一人でどっかに行かなければ、こんな事にはならなかったのよ!」


 腕を組み、怒気を露わにする。

 

「同感」


 その横で、淡々と頷いたのは、ショートヘアの海人族の女性だった。

 表情の起伏は乏しいが、その一言には確かな同意が込められている。


「あの筋肉(バカ)は、反省すべき」


 バッサリと言い切る。


「誰が筋肉(バカ)だよ」


 背後から、低い声が割って入る。

 四人が振り返ると――そこに立っていたのは、ラギウス=ドラグニスだった。

 肩を鳴らしながら、気だるげに歩み寄ってくる。


「戻ったようだね、ラギウス」


 アーク=ライオットが、爽やかな笑顔で言った。

「かっ! 邪魔が入らなきゃ、迷宮核(ダンジョン・コア)をぶっ壊してやれたんだがな」


 ラギウスは不満をぶつけるように言う。

 

「だいたい貴方が勝手なことをしなければ、こんな――……ん?」


 ダークエルフの女性が、途中で言葉を止めた。

 視線が、ラギウスの右腕に釘付けになる。


「ちょっと! 何よその怪我!?」


 信じられないものを見たように思わず叫ぶ。

 ラギウスの肩には、深々と刻まれた斬撃の跡、そして右腕は――焼け焦げ、鱗の隙間から痛々しくダメージが残っている。


「おお、ちょっとな。治してくれや」


 本人はあっけらかんとして、何でもないことのように、右腕を差し出す。


「はぁ~~~!?!?!?」


 絶叫が丘に響いた。

 

 ダークエルフはぶちぶちと文句を言いながら、ラギウスの治療を始める。

 治療を受けているラギウスにアークは近づいて、静かに口を開いた。

 

「それで? 君がそこまでの傷を負わされるなんて……何があったんだい?」


 穏やかな口調だが、その瞳は鋭く、すべてを見逃さない。

 ラギウスは、治療されながらにやりと笑う。


「なかなかに歯ごたえのある奴らだったぜ」


「ほ~……そいつは興味深いにゃ~」


 リー=フェイロンが、喉の奥で笑った。


「一人は……あちこちで噂になってる女だ」


 ラギウスが続ける。

 アークは顎に手を当てる。


「なるほど……魔族の娘か……他にもいるのかい?」


「もう一人」


 ラギウスの口角が、ぐっと吊り上がる。


「コイツは……お前と同じ目をしてた男だ」


 アークの瞳が、わずかに細まる。


「たぶん――天選者(ギフテッド)だ」


 その一言で、場の空気が、ぴたりと止まった。

 ダークエルフも、海人族も、リーも――一斉に反応する。


「……ほぅ?」


 リーが、丸眼鏡をくいっと持ち上げる。


「その男の名前は――まさか……バニッシュかにゃ?」


「なんだ、知ってんのか?」


 ラギウスが片眉を上げる。


「そうだにゃ~」


 リーはにやりと笑う。


「ここに来る前に、ちょっと世話になったにゃ~」


 だが、その糸目が――ほんのわずかに開いた。


「でも、彼ならあるいは……」


 含みのある言葉。

 その意味を、誰もが完全には読み取れない。

 アークは、ふっと息を漏らした。


「あはは……君たち二人が認めるなら、相当なものだね」


 ラギウスとリー、この二人が認めるほどの存在。


「俺も……一度会ってみたいよ」


 その言葉には、純粋な興味が込められていた。


「かっ! 次会ったときは――全力でぶち倒す!」


 ラギウスは笑いながらそう言って、治療途中の右腕にぐっと力を込めた。


 ――バンッ!!


 巻きかけの包帯が、弾け飛ぶ。

 しん、と一瞬の沈黙。


「あ……」


 誰かが、ぽつりと漏らした。

 ラギウスは、まるで気にしていない様子で腕を差し出す。


「もう一回やってくれ」


 悪びれる様子のないラギウスに、ダークエルフの肩が――ぶるぶると震える。


「……貴方って人は……!! もう知らないわよ!!」


 堪忍袋の緖が切れたダークエルフの怒号が、丘の上に響き渡った。

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