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【第二部】勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました〜紅蓮の涙《クリムゾン・ティア》〜  作者: まりあんぬさま
妖精迷宮《フェアリー・ラビリンス》編

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19/19

運命は祝福か、それとも悲劇か

 嵐の夜、幽霊船(ゴーストシップ)をやり過ごし、ようやく一息ついた、その時、バタバタと慌ただしい足音が甲板に響く。


「ちょっと!!」


 扉を開け、リュシアが勢いよく飛び出してきた。


「一体どうなったのよ!?」


 腰に手を当て、不満と心配が入り混じった声でバニッシュへと詰め寄る。


「起きたらアンタはまだ戻ってないし、朝になってるし!」

 

「あ、ああ……」


 バニッシュは苦笑しながら、手でなだめるように動かす。


「嵐は何とか切り抜けたよ」


 その言葉に、リュシアは一瞬だけほっとした表情を見せた。


「……ん?」


 バニッシュはふと違和感を覚える。


「起きたらって……」


 怪訝そうに眉をひそめた。


「お前たち、寝てたのか?」


 その問いに、リュシアはぴたりと動きを止める。


「そ、それは……」


 言い淀み、ふいっと視線を逸らす。

 その様子に、バニッシュは少しだけ驚いたように目を瞬かせる。


「あの状態で……よく眠れたな」


 半ば感心したような口調でリュシア達をみる。

 すると、セレスティナが頬に手を当てながら、困ったように微笑む。


「いえ……その……なぜか、急に強い眠気が襲ってきて……気づいたら寝てしまっていたんです」


「僕も同じで……」


 黒牙もこくりと頷く。

 その言葉に、バニッシュは首を傾げる。


「急激に……眠気……?」


 嵐の最中に、そんなことが起こるものだろうか。

 疑問が浮かびかけた、その時。


「まあまあ~」


 リーが軽やかに割って入る。


「慣れない船旅で疲れてたってことにゃ~」


 いつもの調子で、ひらひらと手を振る。


「そ、そうか?」


 バニッシュは少し納得しきれない様子ながらも、頷く。


「……だけど、みんな無事で良かった」


 そう言ってバニッシュは、ふっと表情を緩めた。

 その時、リーがすっとバニッシュの隣に並ぶ。

 ぽん、と軽く肩に手を置き――周囲には聞こえないほどの小さな声で、囁いた。


「君の活躍は見せてもらった」


「……え?」


 バニッシュが反応する。

 だが、その意味を問い返す前に、大きな声が甲板に響いた。


「あー!! あれがミラリナの街ね!!」


 リュシアが船縁から身を乗り出すようにして、前方を指差している。

 その視線の先には――朝日に照らされて輝く港町。

 セレスティナと黒牙も、その隣で同じように目を輝かせていた。


「綺麗……!」


「すごい……!」


「いや~とっても素敵な所だにゃ~」


 リーもその輪に加わるように歩み出す。

 バニッシュは一瞬だけ、その背中を見つめた。


(今のは……)


 リーの言葉――見せてもらったというその意味に疑問が胸に残る。

 だが、バニッシュは軽く首を振った。


(……今はいいか)


 考えるのは後でもいいとそう思い直し、仲間たちの元へと歩き出す。

 嵐を越えた先にある、新たな地――ミラリナを、その目で確かめるために。




 ミラリナの港に船が接岸し、ようやく陸へと足を踏み出した瞬間――リュシアは大きく息を吸い込み、そのまま思いきり背伸びをした。


「んぅ~~~!」


 ぐっと両腕を上に伸ばし、体を反らす。


「やっと自由に動けるわね!」


「と言っても、二日間だけだろ」


 バニッシュが苦笑混じりに言う。


「何よ! 退屈だったんだから!」


 リュシアはぴしっとバニッシュを指差す。

 その勢いに、セレスティナと黒牙は顔を見合わせ、くすりと小さく笑った。


「ガハハハッ!」


 豪快な笑い声が背後から響く。

 振り返ると、ガバルがこちらへ歩いてきていた。


「まあ、俺たちの役目もここまでだ! 交易品を下ろしたら、すぐに次の航海に出る」


 そう言って、親指で後ろの船を指す。

 すでに船員たちは、忙しなく荷降ろしの作業を始めていた。


「ああ、ここまでありがとう」


 バニッシュは一歩前に出て、手を差し出す。

 ガバルはその手を――ガシッと、力強く握り返した。


「最初は冴えないおっさんかと思ったが、中々に肝が座ってやがる。お前さんは――俺たちの命の恩人だ」


「いや、そんな大したことは……」


 バニッシュは少し照れたように頭をかく。


「また何かあったら、俺たちを頼りな! いつでも力を貸すぜ!」


 そう言い残し、くるりと背を向ける。


「おい!そっちの箱もっと丁寧に扱え!!」


 すぐに船員たちへと怒鳴りながら、仕事へと戻っていった。

 その背中を、バニッシュはしばし見送る。

 嵐の夜を共に越えた者同士の、不思議な連帯感がそこにはあった。

 

「ねぇ」


 気づけば、リュシアがすぐ隣に立っていた。

 じとっとした半眼で、バニッシュを見上げている。


「アンタ、また無茶なことしたんじゃないでしょうね?」


 そのまま、肘でぐいっと脇腹をつつく。


「ぐっ……いや、そんなことは……」


 誤魔化すように頭をかく。


「ホントにぃ~?」


 リュシアはさらに顔を近づけ、じっと覗き込む。

 バニッシュは視線を逸らしながら――乾いた苦笑を浮かべるしかなかった。


「ははは……」

 

「まぁまぁ、それより――」


 空気を切り替えるように、リーが間に入る。


「まずは朝飯を食べるとするにゃ~」


 ――ぐぅぅぅ……


 リーの一言で、まるで合図でもあったかのように、バニッシュたちの腹が一斉に鳴る。

 互いに顔を見合わせる。


「……はは」


 バニッシュは思わず苦笑する。

 二日間、交易船での食事は、腹を満たすためのものに過ぎず、固く乾いたパン、塩気の強いスープ、決して不満を言える立場ではないが――お世辞にも美味いとは言えない。

 だからこそ今、身体がはっきりと訴えていた。

 

「それもそうだな」


 バニッシュは頷く。

 するとリーは、得意げに胸を張った。


「ここは港街なだけあって、魚料理が美味しいって評判だにゃ!」


「ほんと!?」


 リュシアの目が一気に輝く。

 

「それじゃ、早速行きましょう!」


 勢いよく歩き出す。


「おー!」


 それに応えるように、セレスティナと黒牙も腕を上げる。

 まるで遠足前の子供のようなはしゃぎっぷりだった。

 三人はそのまま、意気揚々と街の方へ歩き出す。


 朝の光に照らされたミラリナの街は、活気に満ちていた。

 人々の賑やかな声。

 行き交う商人たちの呼び込み。


 その背中を見ながら、バニッシュはふっと笑う。


(さっきまで嵐の中だったとは思えないな……)


 あまりにも対照的な光景に、どこか現実感が薄れる。

 

「ほら、行くにゃ~」


 リーが軽く手を振りながら、先に進む。


「ああ」


 バニッシュは頷き、ゆっくりと歩き出した。




 港から少し離れた大衆食堂に足を踏み入れると、焼けたパンの香ばしい匂いと、魚の出汁が混ざり合った優しい香りが鼻をくすぐる。


 席に着いてほどなくして運ばれてきたのは――近海で獲れたばかりの魚を、ほろほろに煮込んだ煮付け。

 外はサクッと、中はふんわりと焼き上げられた香ばしいパン。

 そして、魚の出汁と根菜がじっくり溶け合った温かなスープ。

 どれも素朴ながら、丁寧に作られているのが一目で分かる料理だった。


 ――そして、二日間の船旅で味わった食事との落差もあり、バニッシュ達はその料理に舌鼓を打つ。


「ん~~~!! 美味しい~!!」


 リュシアが頬を緩ませ、幸せそうに目を細める。


「本当ですね!」


 セレスティナも微笑みながら頷く。


「とても優しい味で……体に染み渡ります」


 丁寧にスプーンを運びながら、その一口一口を味わっている。

 黒牙に至っては、言葉すら発することなく、夢中で料理を口に運んでいた。

 

 そんな三人の様子を見ながら、バニッシュはゆっくりと口に運ぶ。

 柔らかく煮込まれた魚は、舌の上でほろりと崩れ、旨味がじんわりと広がる。


「いや~本当に美味いにゃ~!」


 リーも満足げに声を上げる。

 パンを頬張りながら、にこにこと笑っている。


「アンタは何食べても一緒でしょうが」


 リュシアが頬にパンくずをつけながらツッコむ。


「そんなことないにゃ~」


 リーは軽く手を振って否定する。

 そのやり取りに、セレスティナと黒牙がくすりと笑う。


 温かな食事を堪能し、満たされた空気がテーブルを包んでいた。

 それぞれが一息つき、余韻に浸っていた時。


「さて、それじゃあ」


 リーが椅子から立ち上がる。


「そろそろ俺は失礼するにゃ」


「ん?」


 バニッシュが顔を上げる。


「何だ?もう行くのか?」


「そうだにゃ~」


 軽く肩をすくめるリー。


「遅れるとまずいからにゃ」


「そういえば……誰かと待ち合わせしてたんだっけ?」


 リュシアが思い出したように言う。


「そういうことにゃ~」


 リーはにこにこと笑う。


「ここまでみんなと旅出来て楽しかったにゃ~」


 そう言って荷物に手を伸ばした――その時、あ! と何かを思い出したように、ぴたりと動きを止める。


「そうだにゃ!」


 くるりと振り返り、にやりと笑う。


「最後に色々お世話になったお礼に、みんなのことを占ってあげるにゃ~!」


「占い……ですか?」


 セレスティナが小首を傾げる。


「そうだにゃ~!」


 リーは両手を広げる。


「特に俺は――恋占いは得意だにゃ~!」


 その一言で空気が、ぴたりと止まった。


「……!」


 リュシアとセレスティナの肩が、わずかに揺れる。

 二人の視線が、同時に――バニッシュへと向けられた。


「……?」


 当の本人は、何が起きたのか分からないといった顔で首を傾げる。

 その様子を見て、リーはくくっと喉の奥で笑った。


「そうそう、女の子はやっぱり、意中の相手との相性は気になることだにゃ~」


 ちらりと二人を見る。


「占ってみる価値はあるにゃ~!」


「う、意中の相手なんて別に……!」


 リュシアが慌ててそっぽを向く。

 だが、その頬はほんのりと赤く染まっていた。


「私はお願いします」


 その隣でセレスティナが、静かに、しかしはっきりと言う。


「ちょ、ちょっと!セレス!」


 リュシアが思わず声を上げる。


「私は気になりますから」


 セレスティナは真剣な表情のまま答えた。

 その潔さに、リュシアは言葉を失う。


「な、なら……! 私もやるわ!」


 負けじと、ぎゅっと拳を握り勢いで言い切る。


「ぼ、僕もお願いします!」


 黒牙も手を上げる。

 その様子に、リーは満足げに頷いた。

 そして、バニッシュへと視線を向ける。


「君はどうするかにゃ?」


 その問いに、バニッシュは困ったように頭をかいた。


「いや……俺はそういうのは苦手だから……」


 苦笑いしながら、やんわりと遠慮する。

 だが、その言葉を聞いたリュシアとセレスティナの視線が、じわりと強まったことに。

 バニッシュは気づいていない。


「さあさあ~! それじゃ~俺の得意の天命占(てんめいせん)のお披露目をするにゃ~!!」


 リーが軽やかに声を張り上げ、どこか芝居がかった動きで、ひらりと袖を払う。


「使う道具はコレにゃ~」


 リーは袂をまさぐるように手を入れ、取り出したその指の間には――三つの牌が挟まれていた。

 

 それぞれの牌には、天、地、人とくっきりと文字が刻まれている。


「それだけでいいの?」


 リュシアが半信半疑で眉をひそめる。


「そうだにゃ~」


 リーはにこりと笑う。


「この天牌は"運命"を、地牌は“環境”を、人牌は“選択”を意味してるにゃ」


 そう説明しながら、器用に三枚の牌をコップの中へと落とす。

 カラカラ、と軽快な音が鳴る。


「そして――これをこうするにゃ!」


 手首をくるりと回し、そのまま――トン、とテーブルに伏せた。

 ゆっくりとコップを持ち上げると、その向きや状態を見て、結果を導き出す仕組みだった。


「それじゃ~」


 リーは三人に視線を向ける。


「意中の人を思い浮かべて、やってみるにゃ~」


 三つの牌とコップが、それぞれに手渡される。

 黒牙、リュシア、セレスティナ、三人は少し緊張した面持ちで、それを受け取った。

 コップに牌を入れ、カラカラと振る。

 そして、テーブルへ。


 トン――


 小さな音が重なった。


「じゃあ、まずは君からいこうかにゃ~」


 リーは黒牙の前のコップをゆっくりと持ち上げた。


 現れた牌は――

 天牌は、表。

 地牌は、横。

 人牌は、逆さに立っている。


「ん~~……」


 リーは顎に手を当て、じっと牌を見つめる。

 その様子に、黒牙の喉がごくりと鳴った。


「……ど、どうですか?」


 不安げな声で尋ねる。

 

「これは――君の意中との相性は、最高だにゃ~!」


「ほ、ホント!?」


 黒牙の顔が一気に明るくなる。

 

「良かったわね~黒牙」


 リュシアがからかうように笑う。


「ふふ」


 セレスティナも、優しく微笑む。

 だがリーは、そこで言葉を続けた。


「ただ――今以上に仲良くなりたいなら……」


 指で牌を軽く叩く。


「君の中に眠る大事なものを呼び起こすにゃ~」


「……!」


 その言葉に、黒牙の表情が変わる。

 ふと――脳裏に浮かぶミュレアの、あの言葉――『……覚えてない?』


 自分が忘れてしまったもの。

 彼女との、何か大切な記憶、それが何なのかは、まだ分からない。

 だが――思い出さなきゃいけないと胸の奥に、強い決意が灯る。

 黒牙は、静かに拳を握りしめた。


「それじゃ~~」


 リーは、にんまりと口角を上げる。

 その視線が、ゆっくりとリュシアとセレスティナへと向けられた。


「次は君たちのを視てみようかにゃ。どうせなら――二人同時に占うにゃ!」


 そう言って、両手でそれぞれのコップを同時に持ち上げた。


 ――コトン。


 テーブルの上に現れた牌。

 それを見た瞬間、場の空気が一瞬止まる。

 縦に、まるで揃えられたかのように――綺麗に並び立っていた。


 一番下に、天牌が逆さに。

 その上に、地牌が逆さに。

 そして一番上に、人牌が正常な向きで。


 そして――それは、リュシアとセレスティナ、二人ともまったく同じ並びだった。


「……すごい……!」


 黒牙が思わず声を漏らす。


「へー……」


 バニッシュも感心したように眺める。

 偶然にしては出来すぎている。

 まるで、何か意味があるかのような整然さだった。


 リーだけが、わずかに眉を動かした。

 ほんの一瞬、誰にも気づかれないほどの微細な反応。


「そ、それでどうなのよ!」


 リュシアが待ちきれない様子で身を乗り出す。


「結果は!?」


「ん……?」


 リーはすぐにいつもの調子に戻り、にこりと笑う。


「大丈夫にゃ! 君たちも――最高の相性! 運命の相手だにゃ~!!」


「ホント!?」


 リュシアの顔がぱっと明るくなる。


「やったわね!セレス!」


「ええ!」


 セレスティナも嬉しそうに頷く。

 二人は顔を見合わせ、ぱん、と軽く手を合わせて喜び合った。

 

(……あれ?)


 ふと、リュシアの表情が曇る。

 胸の奥に、小さな違和感が生まれる。


(でもこれって……)


 二人の意中の相手は――バニッシュ。

 つまり、二人とも相性が最高で運命の相手ということは――その疑問が形になりかけた時。


「それじゃ、占いはこれでお終いにゃ!」


 リーがぱっと話を切り上げ、さっと荷物を持ち上げる。


「ちょ、ちょっと待っ――」


 リュシアが慌てて手を伸ばす。

 

「それじゃ~みんな、ありがとうにゃ~!」


 ひらひらと手を振りながら、リーはそのまま店の外へと歩き去っていく。


「もう!」


 リュシアは腕を組み、むすっと頬を膨らませる。

 胸の中に残った、言葉にならないもやもやが、それをどう表現すればいいのかも分からない。


「……」


 セレスティナもまた、静かに考え込むような表情をしていた。


「それじゃ、俺たちも行こうか」


 バニッシュが立ち上がる。

 

 リュシアは腕を組んだまま、ふっと息を吐いた。

 解けない違和感を抱えたまま――新たな街での一歩を、踏み出すことになるのだった。




 ミラリナの大通りは、人の流れで埋め尽くされていた。

 港から運ばれる荷、商人たちの呼び声、行き交う旅人たちのざわめき――そのすべてが重なり合い、街は生き物のように脈打っている。


 その雑踏の中を、リーは飄々とした足取りで歩いていた。

 肩に荷を担ぎ、周囲に溶け込むように。

 だが、その手には、三つの牌が握られていた。

 天、地、人、指先で軽く転がすように弄びながら、リーはふっと足を緩める。


 脳裏に浮かぶのは、先ほどの占いの光景。

 リュシアとセレスティナ――二人が出した、あの牌。

 縦に、寸分の狂いもなく、まったく同じ形で並び立つ三枚。


「……くく」


 小さく、喉の奥で笑う。

 その笑みには、どこか含みがあった。


 偶然では片付けられない。

 絡み合う運命の糸が、あまりにも鮮明に現れていた。


 そして、その中心にいるのは、あの男。

 バニッシュの顔が、脳裏に浮かぶ。


「そう――運命」


 ぽつりと呟く。

 牌を軽く弾き、カチリと乾いた音を鳴らす。


「それが悲劇になるか、どうかは……君次第にゃ――」

 

 リーは鼻眼鏡を中指でくいっと押し上げた。

 普段は閉じられている糸目が、ほんのわずかに開かれる。

 細く、鋭く、どこか底知れない光を宿した眼差し。


 だが、その言葉には確かな重みがあった。

 次の瞬間には、再びいつもの糸目へと戻る。

 何事もなかったかのように、軽やかな表情で、牌を懐へと仕舞い込み、歩き出す。

 人の流れに紛れ――その姿は次第に遠ざかっていく。

 やがて、雑踏の中へと完全に溶け込み、見えなくなった。

 まるで最初から、その場に存在していなかったかのように。

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