第20話 取り扱い説明書はもういらない
「兄様が継いだんですね」
夕食を摂りながら、アグニス陛下から聞いた事を話した。
ダミアンの件は言えないでいた。このまま伏せておいてもいいかもしれない。
「僕はもうイシュタルグの人間ではないから……今後、どうなっていくのかは興味ないや」
そう言いながら、スープをぐるぐるスプーンで回している。
めっちゃ気になってるじゃん。嘘じゃん。やっぱ、どんな親でも子供は気になるよな。
「でも……ちょっとだけ気にはなるかも」
でしょうね。
ハイネはスープを口に含む。
こういう時ってなんて言えばいいのかわからんな。気の利いたことなんて言えない。
どうしよう。
「……また何か進展があったら、伝えるな」
「うん、ありがとう」
ハイネは俺の手の上に手を置いてきた。
不安なのかな。
わかんねぇな。
俺は上に置かれたハイネの手を握った。
その夜、何か呻き声が聞こえ目を覚ました。
「うう……いやだ……」
小さな灯りを付け、横を見るとハイネが夢を見ているようだった。俺はそっとハイネを抱きしめて、頭を撫でてやる。
「いやだ……痛い、いやだ」
なんとも言えない気持ちになった。ハイネはまだ心に傷を負ったままだ。
「失敗したな」
やっぱ伝えるんじゃなかった。ハイネが暗い過去を見ず、前を向き始めたから大丈夫だと思っていた。
もう少し後でも良かったかもしれない。
「……ギルバー、ト?」
ゆっくりと目が開き、俺を見上げてくる。
「大丈夫か?うなされてた」
「……また母様達が来て、僕を家に連れ戻される夢見たんだ」
溢れる涙を俺はそっと拭いて行く。
「だけど、頑張って……言ったんだ。いやだって、殴られても……いやだって」
「うん」
「そしたら……ギルバートが来てくれた」
ハイネは微笑んで俺の手を掴んで、擦り寄ってきた。
グッジョブ、俺。今回は助けに行くことが出来たんだな。良かった。
「好き……ギルバート、大好き」
破壊力が凄まじい。
俺は小さく悶え、擦り寄られている手が震えていないか心配になった。
「ギルバートは僕のこと、好き?」
揺れる瞳が不安そうな顔で俺を見上げる。
答えなんて分かってるくせに。でも、ハイネは答えが欲しいんだな。不安で押しつぶされそうだから、少しでも安心したいんだろ?
大丈夫、俺はちゃんと全部受け止めるから。
「ああ、好きだよ。愛してる」
「ほんと?嘘じゃない?」
「嘘じゃないよ」
「絶対?」
「ああ、絶対」
ハイネは俺の手を抱きしめる。それはとても力強かった。きっとハイネはこうやってこれからも愛を確かめていのだろう。
いつか、その不安が全てなくなればいいのに。
俺はそっと、ハイネの目元にキスを落とす。手から離れて、俺の首に腕が回される。ハイネからキスをしてきた。
可愛すぎる。守ってやりたい。いや、守ってみせる。
俺は、ハイネを上に乗せ️キスを繰り返す。深くなっていく口付けは少しずつ激しくなっていく。
「んっ……ギルバート」
蕩けた顔のハイネは体を上げる。お腹に手を当て、微笑んだ。
「ギルバートとの子、いつか……できるかな。僕、沢山愛したいんだ」
妹よ、兄ちゃんはこの元悪役令息が可愛くて可愛くてたまらないよ。ハイネがいないと生きていけないくらい好きだ。完全に溺れてる。
それに、もうこの猫には取り扱い説明書、意味無いかもしれん。だって、あっても意味ないんだ。
ハイネはその上を行くから。
俺はハイネをベッドに押し倒す。
「その前に俺がハイネを愛したいな」
ハイネが驚いた顔をしてから、笑う。
「……いっぱい愛して?」
恥ずかしそうに腕を広げられ、俺は吸い寄せられるように身を屈める。
「ああ、もういいって言われるくらい愛してやる」
「うん」
ハイネは俺をしっかり抱きしめ、その腕に閉じ込める。
俺はその腕の中でハイネがもういい、と言うまで愛し続けた。
これにて本編は完結となります。
ここまで読んで頂き、ありがとうございましまた!
番外編ではその後の二人を書いていきます。ギルバートの溺愛とハイネの成長を楽しんで頂けたら幸いです。
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