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05. 荷物持ちVS強スキル持ちの大剣使い

――数日後。


洞窟の中の薄暗さは消え、地上に近づくのを感じる。

数日間動きっぱなしで疲れていたので、俺とミオの間には会話はなかった。


入り口が遠くに見えたところに5人の人影が見えた。

逆光でよく見えなかったが冒険者だろう。

ミオと出会って以来の冒険者だ。

ああここは安全なのかと安堵(あんど)したときだった。


「よぉ、俺はジェラルド。成果はどうだった?」


メンバーの一人が話しかけてきた。

そのリーダーと思わしき男はまるで熊のように大きく、大剣を背負っていた。

他にもメンバーを4人連れていて、これからダンジョンに挑むのだろう、準備万端といったところだった。


「いやぁ……ぼちぼちってとこですね……」


「そうか、じゃあそのバッグをよこせ」


「……?」


言ってることが理解できなかった。


「聞こえなかったかァ?

 まぁいい、ウィリアム調べろ」


傍にいたローブを着たチョビ髭の男が俺たちに向かって手をかざした




【スキル鑑定】

 ・

 ・

 ・

<<鑑定完了…男【荷物持(にもつも)ち】女【御守(おまも)(づく)り】>>



屈強な男は急に()け反ったと思うと高笑いをした。

他のメンバーもつられて笑っている。


状況が理解できなかった。なにがおかしいんだ!

ミオはただでさえ御守り作りとダンジョン探索で疲弊しているのに、精神的な追い打ちをかけられている。



「ガハハ!右も左も ゴ ミ ス キ ル!!


 【荷物持ち】なんて雑用になるために生まれてきたみたいな能力じゃねーか!!


 それに【御守り作り】なんて産廃スキル俺が持ってたら死を選ぶね!!


 しかも御守りをありがたく所持する初心者ときた!!


 ガハハ!!傑作傑作!!」



「……」


ミオは言い返さない。目に涙を浮かべていた。肩も震えてる。


「でよォ、金目の物を忘れちまったんだよなァ

 貸してくれねぇかなって思ってんだよ

 そのバッグを置いてけ」


男は背負った大剣に手をかける。


「逆らわない方がいいぜ!!リーダーは強いからな!!

 この洞窟のモンスターくらいなら大抵一撃で倒せると思うぜ!!」


取り巻きが担ぎ上げる。言ってることが事実なら確かに相当強い。

冒険者ギルドでも名を馳せることができるだろう。


なるほど。

見た目は冒険者だが、こいつらは冒険者の帰り際を狙った賊だ。

帰路ではダンジョンで見つけた財宝やレア素材などを持っている事がある。

弱そうな冒険者を狙って、スキルを確認し、強奪をするつもりなんだ。

ここは穏便に従ったほうがいいだろう。

しかし。



「どいてくれ」



俺は口調を柔らかくすることすら面倒になっていた。

疲れているんだ。ミオも嫌がっている。早くどいてくれ。



「はぁ?お前力量の差もわかんねぇのか?

 お前らは2人でこっちは5人

 そして戦闘スキルなしと、こっちは戦闘員が4人

 しかもお前らはロクな武器を持っちゃいねぇ……


 それに御守りを持ち歩くという情弱っぷり!!

 御守りって旅立ちの日にお母さんがくれるやつだろ!?」

 大抵の冒険者が途中で邪魔になって売っちまうがよォ!!

 こんなの自分からカモだって教えてるようなモンだぜ!!アーヒャッヒャヒャッ!」



男はひとしきり大笑いした後に、急に静かになる。空気が変わった。

大男は大剣を振りかぶっている。脅しじゃないぞということか。

だが俺は完全に面倒になっていた。




「どけよ」




「は?やる気か?

 お前が勝てるわけネェーーだろうがぁ!!」



男の右手が光る。


―――【剛剣一閃(ごうけんいっせん)】発動!!


大剣にオーラが(まと)う。なるほど。

きっとこれは一太刀にパワーを込めるスキル。

厄介だ。

火力を高めるスキルはシンプルだからこそ強い。

なぜなら本人の技量が上がれば上がるほど恐ろしさが浮き彫りになるからだ。


王都騎士団(おうときしだん)にいても重宝されそうな強スキル。

俺と違って体格にも恵まれているし、賊なんかしなくても真っ当に生きていけそうなのに。


ブォン


巨大な刀身は加速し、強力な一撃が振り降ろされ、俺の身体は真っ二つに裂かれる。


それが相手の目論見だったのだろう。

でも。




「どけって言ってるだろ!!!」



ガキィン!


俺は振りかぶった大剣を素手で受け止め、膝を曲げ、威力を地面に逃がす。

踏ん張る右足が地面を砕き、10cmほど身体が沈む。


しかし。

それだけだ。後は何も起きない。


「何ィ!?」


周りの取り巻きはざわめいていた。

俺は流血を一切していない。


「ありえない!!

 なんだ!?何が起きているんだ!!」


ミオの瞳は潤んでいる。その瞳には僅かな光が灯されている。


俺の右手は大剣の刃をぐぐ……と下から持ち上げている。

肝心の目の前のコイツの顎は……外れていた。


「あ…ああ…

 な…なぜだァアア!!!

 俺のスキル【剛剣一閃】が…こんなやつに…

 このスキルがあれば…鋼鉄だって…斬れるのにィ!!」


俺は黙ったまま大男を睨みつける。

相手は…怯えていた。


俺は大剣を受け止めた右手を上に伸ばす。

男もプライドがあるのだろう。大剣から手を離そうとせずそのまま俺を押しつぶそうとする。

しかしその大剣の刀身は下がることはなく、時を戻したかのように逆行した。


ゆっくりと刀身が上がるにつれて、柄は下がる。

そうしてるうちに大男の膝は地面につき、ゆくゆくは俺の前に跪いてしまった。


「ゼーゼーゼー」


大剣はズシンと音を立て地面に転がる。

大男は息を切らしてしまいうずくまる。すぐに立ち上がる気配を感じなかった。


「本当に…すごい…

 あ…ありがとう…リュックくん……」


ミオは下を向いてお礼を言った。彼女の精一杯のお礼だ。

俺は残る元気を振り絞って、ミオにだけは笑顔を見せた。

そのとき


「ありえません!!」


チョビ髭の男が尻もちをついた。

先程俺たちのスキルを覗き見した男だ。

顔は青ざめている。他の取り巻きは状況を理解してない。


「あの男のバ……バッグの中を……私のスキルで覗いたのですが……」


「そうだ、お前には【所持品鑑定】もあった!!」


「きっとこの洞窟でSランクの強化アイテムを手に入れたのよ!!」


「そうじゃなきゃ説明がつかない!!!」


「情報を共有しろ!!!ウィリアム!!!」


取り巻きはその男の手に触れた。


「え……」





<<冒険者【リュック=ストレイジ】の所持品


【布鞄】ランクE

【薬草】ランクE

【薬草】ランクE

【攻撃祈願】ランクE

【攻撃祈願】ランクE

【攻撃祈願】ランクE

【攻撃祈願】ランクE

【攻撃祈願】ランクE

【攻撃祈願】ランクE

【攻撃祈願】ランクE

【攻撃祈願】ランクE

【攻撃祈願】ランクE

【攻撃祈願】ランクE

【攻撃祈願】ランクE

【攻撃祈願】ランクE

【攻撃祈願】ランクE

【攻撃祈願】ランクE

【攻撃祈願】ランクE

【攻撃祈願】ランクE

【攻撃祈願】ランクE

【攻撃祈願】ランクE

【攻撃祈願】ランクE

【攻撃祈願】ランクE

【攻撃祈願】ランクE

【攻撃祈願】ランクE

【攻撃祈願】ランクE

【攻撃祈願】ランクE

【攻撃祈願】ランクE

【俊敏祈願】ランクD

【俊敏祈願】ランクD

【俊敏祈願】ランクD

【防御祈願】ランクE

【防御祈願】ランクE

【防御祈願】ランクE

【防御祈願】ランクE

【防御祈願】ランクE

【防御祈願】ランクE

【防御祈願】ランクE

【防御祈願】ランクE

【防御祈願】ランクE

【防御祈願】ランクE

【防御祈願】ランクE

【防御祈願】ランクE

【防御祈願】ランクE

【防御祈願】ランクE

【防御祈願】ランクE

【必中祈願】ランクD

【必中祈願】ランクD

【必中祈願】ランクD

【開運祈願】ランクC

【開運祈願】ランクC


        合計載積量:991/1000>>




「なんだ!!これ!!御守りばっかじゃねぇか!!」


「え!?御守りの効果って重複するの!?」


「知らねえよ!!そんな雑魚アイテムのことなんて!!」


「というかレアアイテムはどこ!?」


何度も情報を確認している。お望みの情報はないみたいだ。

俺の興味はただ騒ぐ取り巻きから、目の前でうずくまる大男に移っていた。


「何か仕掛けてくるかもしれない……」


周りで騒ぐ取り巻きと違い、目の前でうずくまる大男はその体勢とは裏腹になかなか隙を見せない。

目が死んでない。まだ何かするつもりだ。

その矢先


【剛剣一閃!!】


大男は隠し持っていたナイフを地面に突き刺し、その反動でミオの近くまで吹っ飛んだ。

予想外のスキルの使い方に出遅れてしまった。


「きゃあ!!」


大男はミオの手首を掴んだ。


「助けて……リュックく……ん……」


「動くな!!動けばこの女を殺す!!」


男は振り向いて俺に向かって叫んだ。



しかし。

振り向いた先に俺はいなかった。



もう既に大男の背後に周り込んでいたのだ。

昨日からスピードが上がる御守り、【俊敏祈願(しゅんびんきがん)】は3枚積んでいたが、効果を実感したのは初めてだった。


……速ッ。御守りすご……。


大男は自分が置かれてる状況を理解し始めていた。


「ヒ…ヒィイイイ!

 す……すまねぇえ!!何でもするから……俺を許してくれい!!!」


大男は泣きだし、まるで自分が人質になったかのように懇願(こんがん)した。

謝罪を聞いて、申し訳ない気持ちになった。


「ごめんなさい、謝ってももう遅いです……」


ここでの「もう遅い」はお前を許さないという意味ではない。

本当にもう遅かった。


そう。

既に大男の両腕は逆側にへし折られていたのだ。


さっき回り込んだとき、とっさのことで焦ってしまい、とりあえず腕を折ることにしたことを後悔した。


「ぎゃぁぁぁぁあああああぁぁぁぁあああああああ!!!」


洞窟内が絶叫で染まる中、取り巻き達はまだ危機感が足りない様子だった。


「なんで…なんでそんなに強いんだ!!」


「強いのは俺じゃない…御守りを作ってくれたミオだ

 俺はただ御守りを持っていただけだ」


ミオは胸に手を置き、目をうるませ、俺を見つめていた。

取り巻き達は呆然と立ち尽くし、ただただ大男の咆哮(ほうこう)を聞くしかなかった。


ミオの手を引くと俺は彼らに一瞥(いちべつ)もくれずに洞窟を出た。

眩しい。


俺にとっては十日間ぶりの日差しだった。

__________________


ステータス

名前:リュック=ストレイジ

称号:なし

技能:【荷物持ち】

耐性:なし

所持品:【布鞄】【薬草】×2【攻撃祈願】×25

   【守備祈願】×15【俊敏祈願】×3【必中祈願】×2【開運祈願】×2

合計積載量:991/1000

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[一言] 必中祈願が上は3つあるのに下は2つになってる。
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