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03. 巫女少女との信頼

土竜蜘蛛(もぐらぐも)の洞窟の最下層。魔物の気配はまだない。

俺の隣には東洋の少女が一人。ミオは顔を両手で覆っている。


「死にたいぃ

距離感間違えたぁ……」


先程の「運命の人」発言が早速黒歴史化しているらしい。

彼女は自分の発言を思い返して一人で後悔するタイプなのだろう。


「ミオって不思議だね」


「名前で呼ばないで……恋仲みたいで意識しちゃうから……」


名前を呼ぶだけで!?

俺はますますミオに興味を持った。


「一見クールなんだけど、話しやすいし親近感が湧く

あとさっき、運命の人って言われたの、嬉しかったな」

ありがとう。ミオ」


頬を膨らませてキッとして睨みつけられた。

まだ追い打ちをかけるつもりなのかと視線だけで訴えかけてくる。

しかしイマイチ決まらないその眼光に可愛らしさを感じてしまった。


恋仲か…。

意識して見るとミオは異性としてとても魅力的だ。

年齢は近そうだ。少し年下で18歳くらいだろうか。


大人っぽい印象を受けるメイクだが、童顔で目が大きく、キリっとしたツリ目が美しさとあどけなさを兼ね備え、すごく可愛い。


さらにミオはスタイルも良い。

正直……胸に目がいく。大きい。


白の装束の脇から大きな横乳が見え隠れしており、帯によってその大きさが強調されている。

それに太ももがすらっと伸びていて綺麗だった。

加えて彼女の袴の丈はあと一歩で痴女の域に達するほど短く、余計に目のやり場に困った。


「……えっち」


ハッと我に返った。両手で袴を押さえる仕草をする


「ずっと身体見て、エロいなぁ」


ミオはため息をつく。


「…… 男の人のそういう視線、全部気づいてるから」


ジト目でこちらを見つめている。明らかに呆れている。先程の目と違い、大ダメージだった。


「ま、年頃の男女が二人きりになれば無理もないけど…

とりあえず気をつけてね…あと」


ミオは口をもごもごさせている。何か言いたげだ。


「が…頑張ろうね…一緒に帰ろうね」

りゅ…りゅっくくん…」


たどたどしくも名前を呼んでくれた。

彼女の顔は着用している袴のように赤くなっていた。


クールな子が慣れない口調で名前を「くん」付けして来たのは

貴方を仲間として認めますというミオなりの歩み寄りだろう。


不器用ながらも誠実な子なのだろうか。

だからこそ俺は仲間に裏切られたばかりなのに、ミオのことは信じてみようと思った。


「うん!必ず帰ろう!ミオ!」


俺が学ばない性格なのか。

それともミオがそれほどの魅力を兼ね備えているのか。

彼女の言葉と同じ温度で返事をした。



ここは土竜蜘蛛の洞窟の下層部。


土竜蜘蛛は危険だ。

冒険者ギルドの情報によると土竜蜘蛛は馬車ほどの大きさの巨大蜘蛛である。


見た目自体には特に土竜要素はなく、洞窟を掘り進め、奥へ奥へと巣を広げていく姿から土竜蜘蛛と呼ばれるらしい。

自在に洞窟の地形を操って、蜘蛛の巣を張りやすくしたり、卵を安全な場所に生むことにより、狡猾かつ大量に押し寄せる生態が冒険者を苦しめてきた。


膝丈より低い大蜘蛛1匹で苦戦していた俺にとって絶望的な情報だ。

俺はかつてここで敗れたであろう冒険者の欠けたナイフを拾い、孤立した大蜘蛛を探しては倒し、そして素材を集めた。


 ・

 ・

 ・


「……リュックくん、【攻撃祈願(こうげききがん)】今度は6枚できたよ」


ミオは鞄に御守りを複数詰め込む姿を不思議そうに見ている。どうも。慣れないらしい。


「……あれ、なんで外に付けるの?」


バッグの中には計8枚の【攻撃祈願】の御守りを、そして残り1枚は外側のヒモに結んだ。


「ほら、御守りはぶら下げた方が効果がある気がしてさ!」


「それにミオが作ってくれたものだし…嬉しいから」


「バッグの外だと【荷物持ち】は適応されないから、外に付けられるのは一個までなんだけど」



「…………やめた方がいい」


ミオはぼそっと呟いた。


「大丈夫、外側についてても効果はあるから」



「……そうじゃない!そんなのぶら下げたら皆に馬鹿にされる!!」


ミオの口から悲しい言葉が出た。


御守りは初心者の証。不要な持ち物。最弱。そんな風潮が彼女のその言葉を引き出させた。

俺はもどかしい気持ちになった。

だってミオの作った御守りの出来は上等だ。


だけど誰も強さを見いだせなかった。

いや、強さを見出そうとしなかっただけなんだ。



その矢先。俺は異変に気づいた。


カサ

カサカサ

カサカサカサ


しまった。

囲まれた。


最初は大蜘蛛が3匹ほどだったが、他の魔物が洞窟の岩場の隙間や奥からやってきて、あれよあれよという間に50匹を超える魔物が俺たちを囲っていた。

そこには蜘蛛以外にも、キノコの魔物やコウモリの魔物がいた。

大蜘蛛の死骸に釣られてきたのだろうか。


「どうしよう…こんなにいたら…御守りを持ったリュックくんでも!」


「落ち着いて、大丈夫だミオ」


「君の御守りは最強だって俺が証明する」


ミオの頭に手を置いて2回撫でた。

ミオの身体の震えは止まった。信じていいのと俺を見つめている。

しかしすぐに目を逸らされた。彼女の顔は赤い。


「……いきなり頭を撫でるなんて、気持ちわるいって思われるから、他の人には遠慮するように」


「はは

安心してミオ、俺が絶対にこいつらを倒す」


その言葉を聞いて、ミオが落ち着きを取り戻したことを確認すると




俺は右手に持っていたナイフを投げ捨てた。

__________________



ステータス


名前:リュック=ストレイジ


称号:なし


技能:【荷物持ち】


耐性:なし


所持品:【布鞄】【魔除け】【薬草】【薬草】【薬草】【攻撃祈願】×9


合計積載量:221/1000


第一行動方針:少女と協力してダンジョンを抜ける。


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