私のため
美華、覚醒
テーブルに置いてあるラーメンは、もう冷めきっている。
「無理だ…」
そう父の口から放たれた言葉は、二人の間の空気を冷たくさせる。
「なんで………?」
冷たい空気を吸い、そう呟く。
「いや、何でもない。」
父はそう取り繕うように、言う。
「何でもない…?」
「それより、美華に話したいことがあるんだ」
(はぐらかされた…。きっと父に帰ってくる意は無いだろう…)
(それより、話とはなんだろう?)
改まって父から話を持ちかけられるのは初めてだ。
恐怖で、体が凍っていく。
「何?」
そう聞くと、父は少し、ほんの少しだけ、テーブルに乗り出し、私の目を見た。
「美華、ごめんな。」
(???)
「何?」
「離婚したいんだ。」
父は、確かにそう言った。
離婚?お父さんとお母さんが?
「帰る」
席から立ち上がり、気付けば逃げるように走っていた。
「おいっ!美華!」
父の呼び止める声が聞こえたが、よく理解出来なかった。
ーーーー
私たちは確かに家族としては壊れていた。
でも、まだ、全壊というわけではなかった。
でも、でも。
今の父の一言で、全壊しそうになっている。
あの一言。あの一瞬で、自分の中でピースが何か外れたような気がした。
立ち直せると本気で思った。
例え、病気がすぐに治らなくても。すぐに家に帰ってきてくれなくても。
私は説得するつもりだった。
『出来るのだろうか』
私は罪に向き合うと決めた。
償うと決めた。
だから、この病院に来たんじゃないか。
『離婚』してしまっては、元に戻すことは不可能になってしまう。
(でも…)
父がいなくなることで、母が安心するならば。
私は母と二人で暮らしていけるのだとしたら。
それもそれで、家族の在り方ではないか。
いや、違う。
(私の声を聞け)
今日子さんが教えてくれたように。
(私は両親に離婚してほしいか?)
『嫌だ。私は、離婚してほしくない。』
………。
(償い?罪に向き合う?)
(私は、私自身が、家族を直したいんじゃないのか。もう一回、昔のように過ごしたいんじゃないのか。)
『そうだ。私は、家族と向き合いたいんだ。』
ハッとなり、私は来た道を引き返した。
まだ、父はいるだろうか。
ーーーー
私は、気付けなかった。
隣ですれ違った、今日子さんに。
すごいわかりやすい伏線ですね笑




