第42話 最強の悪魔
地獄の公爵。
大悪魔。
魔王軍幹部。
目の前の男、シャクスが、そう自己紹介をしてきた。
設定が少し多すぎるんじゃないだろうか。
「マジかよ、魔王軍幹部が2人かよ、聞いてねぇぞ」
「そうね、でもちょうどいいんじゃない? さっきの人には逃げられちゃったし、この悪魔倒せば報奨金はもらえるんでしょ?」
「確かにそうだな」
「おやおやおや、初対面で倒すとはずいぶんとあいさつがなってないのではないか?」
「知るかボケ、こちとら平民育ちなんでマナーとかわかんねぇんだよ!」
早速戦闘力はかるやつのスイッチを入れる。
レベル:不明
戦闘力:10000000
レベル不明っていうのが気になるけど、戦闘力は1000万か、さっきのオリハルコンゴーレムに比べれば大したことない。
それに、タレントも持っていない!
「瑠璃! アロマ! やれぇ!」
「「了解!」」
「ぬっ!?」
俺が叫ぶと、すぐにアロマと瑠璃が行動する。
「『パラライズ』!」
「ぬぐぅっ!」
即座にアロマがパラライズでシャクスを麻痺状態にさせる。
麻痺で体が鈍れば、避けることはできないだろう。
「ぐぁッ!」
そして、回避不可能なシャクスの体に、瑠璃の腕が突き刺さった。
瑠璃の腕は、シャクスの体を完全に貫通している。
「……ハハハ、さすがはオリハルコンゴーレムを瀕死に追い込んだだけのことはある。フェーズ1では瞬殺か」
――――にもかかわらず、シャクスは平気な顔をしていた。
「なんだと……?」
「ならば、フェーズ2はどうだ?」
シャクスがそう言った次の瞬間、
「うあッ!」
「きゃあッ!?」
俺の横を、アロマと瑠璃が吹き飛んで通り過ぎて行った。
「……何!?」
そして、俺は異変に気が付いた。
レベル:不明
戦闘力:30000000
表示されている数値が、急に変化するというありえない異変に。
「どういうことだ……!? こんなこと今までなかったぞ!」
「フハハハハハ! 貴様の世界で言う、ボスキャラの第何形態とかいうようなものである」
「は!? そんなのアリかよ!?」
俺がだらだらしゃべっていると、
「おっと危ない危ない」
アロマと瑠璃がシャクスに攻撃をしていた。
だが、シャクスはそれを受け止めていた。
「さっきはよくもやってくれたわね! 『クリスタルプリズン』!」
アロマが魔法を唱えると、シャクスの腕が凍りつき、胴体から分離した。
そして、瑠璃の乱打がシャクスの体にもろに入る。
骨や肉が砕け散るような音が聞こえ、シャクスの体は吹っ飛んで壁にぶつかる。
もうこれで終わったと思ってもいいはずだ。
「フフフフ、これで終わる吾輩ではないわ」
だがしかし、またもやシャクスは立ち上がった。
その体の傷が、なぜか全て癒えてしまっている。
レベル;不明
戦闘力:50000000
さらに、戦闘力も5000万に上昇するという異常事態。
「はッ、『プロテクト』! きゃああああああッ!!」
とっさにアロマが強化魔法を使うが、それも意味なく、アロマの体はシャクスの攻撃によってあっけなく壁にめり込んでしまう。
「うっ、ぐっ!」
「ほらほら、どうしたのだ!?」
さらに、瑠璃にも攻撃をするシャクス。
瑠璃はそれを避けることもできず、両腕でずっとガードし続けている。
「うあっ! ぐぅ…………」
しまいには、瑠璃もアロマと同じように壁にめり込んでダウンしてしまった。
「さあ、次は誰が吾輩の相手をしてくれるのだ?」
「……シアン頼めるか?」
「もちろんですよ! アレイスさん、任せてください!」
すると、俺が次のまばたきをしたとき、
「……は?」
目の前のシャクスの体の上半身が完全に無くなっていた。
いや、吹き飛んだの方が正しいだろうか。
よく見ると、部屋の壁の至る所に肉片や血しぶきの跡がある。
「完全に木端微塵にしました。再生は不可能――――――」
「――――――とでも思っているのか?」
再び、シャクスの声が聞こえる。
そして、まばたきをしたそのとき、
「やぁ、待った?」
目の前には、無傷のシャクスが立っていた。
「……もう何が何だかわからねぇよ」
まばたきをしたときには、人が木端微塵になったかと思えば、一瞬でそれが元に戻ったり。
俺には出来事が、話の流れが速すぎて脳がついていけていない。
「そんな、確かに粉々にしたのに……!」
「あんなもの、粉々とは言わん」
「なんですって!?」
シアンとシャクスが取っ組み合いになる。
さきほどから考えると、おそらく今のシャクスの戦闘力は7000万ぐらいだろう。
ならば、シアンとシャクスの力は互角、いや単純な腕力であればシアンの方が高いかもしれない。
「……え?」
だが、現実は違った。
「な、なによこれ……!? 力が……!」
「ハハハハハ、さっきまでの威勢はどうしたのだ? ほら、もっと力を出すがいい」
シャクスの圧勝。現在、シアンはシャクスに地面の上に押し倒されようとしている。
一体どうしてこんな……!?
「ぐううぅぅ……!」
「……はぁ、つまらぬな」
すると、シャクスはシアンの体を蹴り上げた。
「ガッ……!」
シアンの体は、天井を突き破り、さらに上の階の天井を突き破り、さらにさらに……。
――――シアンが地面に落ちてきたのは、10秒後だった。
やばい。
このシャクスってやつ、たぶん生かしておいたらダメなやつだ!!
「……アトラス!! 手加減抜きで殺れ!」
「わかってます! 『秘儀・消失剣』!」
アトラスが剣を握ると、次のときにはシャクスの体はサイコロステーキのようになり、さらに、さらに、さらに細かくなっていった。
そして……。
「ふぅ……」
アトラスが斬り終えたときには、シャクスは完全に消滅していた。
「原子レベルにまで粉々に切り刻みました。いくらなんでも、これで蘇るなんてことは――――――」
「それがあるのだよ」
「「なッ!?」」
気が付いたときには、背後にシャクスが立っていた。
「う、嘘、だ……、寸分の狂いもなく、原子レベルでバラバラにしたはずだ……! ミスはなかったはずだ!」
「吾輩を本気で殺したいのなら、陽子や中性子、いや電子、いやそれ以下のレベルまで粉々にする必要がある。たしかに貴様にミスはなかった。だが、吾輩を殺すのにはそれでは足りなかった、ただそれだけのことだ」
「そんな……、あぐっ!?」
「貴様の負けだ」
シャクスがアトラスの腹部に拳を入れると、アトラスの鎧がいびつに歪んだ。
そして、アトラスは頭から地面に倒れ込んだ。
「な、なんだよ……これ……」
「おや? 貴様で最後か?」
「ひぃっ!?」
「いやぁ、まさかフェーズ5までいくとは思わなんだ」
「な、なんなんだよお前……! 何者なんだよ!?」
「何者といわれても……、ただの魔王軍幹部であるが?」
「ただの魔王軍幹部じゃねぇだろ! お前一体何なんだよ!?」
「……そんなに知りたければ、その奇怪なメガネで吾輩のことを見るといい」
「は……?」
言われた通りに、俺は戦闘力はかるやつのスイッチを入れてみて、
そして、俺は絶句した。
レベル:測定不能(999+x)
戦闘力;測定不能(99999999+x)
タレント:絶対命令
自分の手で触れたものに対して、命令をすることができる。命令を受けたものは命令に逆らうことができず、また、世界はその命令が確実に実行されるように動く。自分自身に命令することも可能。制限時間はなく、死ぬことによって命令の効果が消えることもない。





