第41話 初めて見る表情
「ハイジョシマス」
片言でしゃべり続けるオリハルコンゴーレム。
「一回確認したほうが良いな……!」
俺はすぐに戦闘力はかるやつを装着した。
レベル:650
戦闘力:40000000
戦闘力4000万……!
アロマと瑠璃にはキツイか……。
「よし、アトラス、お前に決めた! オリハルコンゴーレムを打ち倒せ!」
「いや、無理です」
………………え?
「今、なんて……?」
「オリハルコンゴーレムは、固有スキルで強度が常に上昇しているので、私の剣では斬ることができません」
「じ、じゃあ、普通に殴って攻撃するのは」
「無理でしょうね。私、昔にオリハルコンゴーレムと戦ったことがあるんですが、傷一つ付けられませんでしたよ」
「ん? 昔戦ったって?」
「ああ、昔かなり古い遺跡に入ったことがありまして、そこの門番のような役割をしていたんですよ。まぁ、遺跡の中自体が風化や崩壊がひどかったので、恐らく数千年以上前のものだったと思います。たぶん、中にはもう何も残ってないですよ」
「そうだったのか」
……嘘だろ。
アトラスですら傷一つ付けられないのかよ?
「えーと、シアンは?」
「私も無理かなー。アトラスさん?が倒せないんだったら私にも無理な気がするなー」
……シアンも無理。
やっぱり、物理で攻めるのはキツいってことか。
「物理が無理なら魔法と相場は決まってる! アロマ、出番だ!」
「無理よ。魔王さま、オリハルコン系統のモンスターに魔法が効かないの知らないの?」
「……えっ?」
そういえば、昔そんな話を聞いたような……。
……ちょっと待てよ?
物理は効かない。
魔法も効かない。
……えっ、どうやってあのオリハルコンゴーレム倒すの?
「私が行く……」
すると、瑠璃が突然そう呟いた。
「えっ、いや待て。あいつはお前には……!」
さっきの会話で物理攻撃はほぼ無意味だと分かった。
アロマの情報によると、魔法攻撃はそもそも無効になるらしい。
さらに、瑠璃とオリハルコンゴーレムの間には、圧倒的な戦闘力の差というものがある。
瑠璃にあのオリハルコンゴーレムを倒せるのは不可能なはずだ。
「大丈夫。私に任せて」
だけど、瑠璃の声はそう言っていない。
自分は倒して見せるという、そんな自信にあふれた声。
「た、倒せるんだな……?」
疑心暗鬼に、しかし期待を込めて瑠璃に問いかける。
「うん。だから……」
瑠璃はその問いに肯定し、振り返ると、
「倒せたら、ほめてくれる?」
「えっ」
俺に、そんなことを言ってきた。
今まで見たこともないような、いつもの、のほほんとした、子どものような瑠璃からは想像もできない、大人びた微笑みをしながら。
「……ああ、もちろん」
「本当? うれしい……」
俺の答えを聞くと、瑠璃はオリハルコンゴーレムの方を向いた。
「じゃあ、さっさと倒しちゃうね……。『鋼腕』」
瑠璃がスキル『鋼腕』によって両腕を鋼鉄のように硬くさせる。
次の瞬間、
『ガキィンッ!』
そんな金属音が聞こえてくる。
気が付くと、瑠璃がオリハルコンゴーレムの腹部に拳を入れていた。
そして、
『ガガガガガガガガガガガガッッ!!』
突如始まる、目にもとまらぬほどの乱打。
そのあまりの速さに、聞こえてくるはずの『ガキィン』という金属音の『キィン』の部分が聞こえてこない。
一発にいったい何秒かかっているのだろうか?
きっとそれはコンマの世界だろう。
あまりの衝撃に、オリハルコンゴーレムがどんどん後ろに移動を始めた。
が、そのとき、瑠璃に異変が現れた。
「――――――ッ!」
わずかだが瑠璃の表情が歪んだ。
それでも瑠璃はラッシュを続ける。
だが、オリハルコンゴーレムが傷ついている様子はない。
「やっぱりだめか……」
と、そのとき、俺はオリハルコンゴーレムの体から血が滴っていることに気が付いた。
「え!? おい瑠璃!?」
オリハルコンゴーレムは全身金属でできたただの人形だ。
血など通っているはずがない。
つまり、あの滴っている血は……。
「ハァ……ハァ……」
瑠璃が俺の呼びかけに気付き、乱打をやめる。
その拳は、まるで割れたガラスのようにヒビが入っていた。
「どうしてそこまで……! オリハルコンゴーレムは傷一つつかずにお前だけ傷ついてどうすんだよ!?」
「大丈夫だから、見てて魔王さま……!」
俺の悲痛の声も空しく、再びラッシュを始める。
すると、今度はオリハルコンゴーレムの方に変化が現れた。
「ゴ、ゴゴ。コレ、ハ……?」
それに最初に気が付いたのはゴーレム自身だった。
「ソ、ソンナ、ハズガ! マ、マスターノ、サイコウケッサクノ、コノワタシガ!?」
気が付くと、先ほどから瑠璃が殴打し続けているところ、そこにわずかだが亀裂が走っている。
アトラスですら、傷一つ付けられないはずの、オリハルコンゴーレムにだ。
「な、なんで……? どうしてだ?」
「魔王さま、もしやお忘れですか?」
「え? な、何がだ?」
「瑠璃のタレントですよ」
「え? えっと確か……」
………………。
……そうか! だから瑠璃はあんなに自信ありげに!
瑠璃のギフトは、1か月ほど前に、一度見たことがある。
そのときのギフトがこれだ。
ギフト:血の代償
血を失ったとき、攻撃力と瞬発力が上昇する。10㏄につき1.2倍になる。
そう、瑠璃のギフトは、血を失えば失うほど強くなれるというものだった。
だから、瑠璃は拳にヒビが入ろうとも、攻撃をやめなかった。
自分が血を流せば流すほど、強くなれるから。
そして、見事それが実り、オリハルコンゴーレムに傷をつけることができた。
一つでも亀裂が入れば、あとは簡単だ。
ただひたすら、重点的にそこを砕け散るまで攻撃すればいい。
「やれ! 瑠璃ッ!」
「やああぁあああああああああああッッ!!」
「ガアア! コノ、コノワタシガアアァアアアアア!!」
そして、
「ガアアァアアアアアアアアアッッ!!」
瑠璃の最後の一撃で、オリハルコンゴーレムは吹っ飛ばされ、壁に激突した。
オリハルコンゴーレムの体には、大きく亀裂が入り、金属がはがれてしまっている。
「よし、瑠璃とどめを……!」
「残念だが、それはさせられぬな」
突然、どこからか男の声が聞こえてきた。
「だ、誰だ!?」
「ん? 吾輩か?」
すると、一人の男がオリハルコンゴーレムの前に現れた。
「初めましてであるな。冒険者たちよ」
その男は、この異世界では珍しい、黒いスーツに、サングラスを着けている。
「吾輩の名前は、シャクス。魔王軍幹部にして、このダンジョンの主でもある者だ」
その男は、
「そして、吾輩は地獄の大侯爵でもある! そう、吾輩こそが、大悪魔シャクスである!」
いや、その悪魔は、
自らのことを、魔王軍幹部だと名乗ってきた。
今日の13時にもう1話投稿します。





