7 検査入院です
華奢で細やかな装飾のシャンデリア、レースがふんだんに使われた天蓋付きのベッド、淡いピンクの絨毯の上に並ぶ家具は、全て白いロココ調のもので統一されている。
甘い、甘過ぎる、激甘だ。
お姫様が住まうようなガーリーテイストなお部屋。
ここが、病院の一室だなんて信じられるか。
前世庶民の私には、理解できない病室だ。
当然のように、ここで出される食事も豪華であった。
私の胃袋にすっかり納まった昼食など、高級レストランのコース並みでしたからね。
キャロットライス、仔牛のスカロッピーネ 、ホタテとスモークサーモンのカルパッチョ風サラダ 、キノコのワイン蒸し、オニオンコンソメスープ 、キャラメルムースのフルーツ添え…
うん、文句無しに美味しかった。
前世のOL時代には味わうことがなかった繊細なお食事が、舌の上で絶妙なハーモニーを奏でていたよ。
幸せな満腹感で眠気に襲われていると、病室の扉がノックされ可愛らしい訪問者が現れた。
「失礼しますぅ。
私たち、華澄さまのお見舞いに来ましたぁ。」
「突然の訪問で、驚かせてしまい申し訳ありません。
私、宇都宮 綺麗と申します。
こちらは、友人の船堂 るり子です。
華澄様はご存知ないかもしれませんが、私たちは同じ学級の生徒ですの。」
皇蘭学園の制服を着ていることから、学校帰りにお見舞いに来てくれたようだ。
二人の女子生徒はとても対照的だった。
るり子は、語尾の伸びた甘い喋り方がよく似合っている。
柔らかな癖毛と血色の良い頬っぺたが可愛らしい。
綺麗は、クールビューティーという言葉がぴったりだ。
直線的な黒髪に切れ長の瞳、細いフレームの眼鏡が知的さを醸し出している。
二人の魅力は異なるが、どちらも年相応に愛らしい。
武光がこの場にいれば、身悶えそうな可愛らしさである。
「華澄さまぁ、お見舞いの品を持ってきたんですが、お気に召すでしょうか??」
こてんと首を傾げて、るり子が華澄の方に品物を差し出すと、綺麗も同じ様に手渡してきた。
るり子が持参したプチブーケは、ピンクと白を基調として上品に纏められており、柔らかな花の香りが心を安らげてくれる。
綺麗の方は、ペニンシュラのマンゴープリン。これって確か一日300個限定の品じゃなかったかしら。
どちらも小学生らしからぬ気の利いた見舞い品だ。
生粋のお嬢様は恐るべし、将来安泰に間違いないね。
綺麗は私の体調を気遣う言葉を掛けてきてくれるが、るり子の視線は私が受け取った紙袋に絡みついて離れない。
物欲しそうなるり子に気付いた綺麗が、諫めるように素早く肘鉄を食らわす。
あれ、私の中のお嬢様像が崩れちゃうよ。
「えっと、せっかく来て下さったのだから、一緒にプリンを召し上がっていきませんか?」
遠慮がちに切り出した私に対し、るり子は溢れんばかりの笑顔を向けた。
キッラキラの瞳に血色の良い頬をさらに紅潮させたるり子は、病室中に溢れんばかりの魅力を撒き散らしている。
あら、やだん、ちょっとキュンときたかも。
今なら、私、武光の気持ちが分かるかもしれない。
るり子を冷めた目で見つめる綺麗も、大人びた表情が凄く良いわぁ。
このコンビ、アイドルユニット組んだら最強じゃね。
はわーーん、めちゃくちゃ癒されるわぁ。
この日、華澄はショタコンに加えロリコンという病を併発させたのであった。