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「よし・・・、ヨシュアお願い!」


イランの実を煎って潰した物を布に包み、ヨシュアへ手渡す。

ようやく油を作る段階にきた。これで綺麗な油が取れなかったら失敗ってことだ。思わず手に汗を握る。

ヨシュアの骨ばった大きな手が雑巾を絞る要領で布を絞ると、受け皿にポタポタと油が零れた。


「見せて!」


受け皿を受け取ると、油の匂いを嗅ぎ、太陽の光を当てて透明度を見る。


「すごい!綺麗!いい匂い!成功だよ!あとは小瓶いっぱいに絞ったら出来上がりだよ!」


嬉しくてヨシュアの服を引っ張る。頭二つ分ぐらい背の高いヨシュアを見上げたら、すごく嬉しそうに笑うヨシュアの顔があった。


ドキッ


いやいや、ドキッじゃない!!今の無し!


慌てて手を放したら、ヨシュアの眉がちょっと下がる。ちょっと困ったような笑顔も、それなりに様になるのが美形の強みなのね。


手分けして作業を進めたら、予定より早く終わることが出来た。

これもヨシュアのお蔭だね。もう二人からのプレゼントで良いよ。ってか、なんだかんだ言って力作業はほとんどヨシュアだったね。

もうガリ僧なんて呼ばないよ!

いや、私がガリ僧を卒業させてあげるよ!めざせ細マッチョ!

ヨシュアのマッチョ化計画に向け、インナーマッスルの女王と呼ばれた前世の私よ、いざ降臨せよ!


でも、マッチョ前に一緒に馬に乗るのは、やっぱり拷問でした。

疲れ果てて歩いて帰るのは無理だけど・・・。骨、辛い・・・。



お屋敷に戻り、小瓶にリボンを結ぶ時にも、ケーキを作る時にも、なぜかヨシュアは着いてきた。

なんか骨犬に懐かれた気分。そういう映画あったよね?キム・バートンだっけ?

懐かれて悪い気はしないので、心置きなく助手として使ってあげた。


「これケーキ?」


ヨシュアが私の作ったものを指さして言った。

指の先には、今丸めたばかりのロールケーキ。こっちの世界のケーキは四角いのがメインで、ロールケーキは見たことが無いらしい。

私も四角いケーキが作りたかったんだけど、こっちの世界は砂糖が高い。生クリームを全体に塗ろうと思ったら、とんでもない金額になっちゃって、お小遣いでは到底賄えない。

そこで砂糖を使わなくても十分甘い木苺のジャムと、心ばかりの生クリームとを挟んだロールケーキにしたのだ。


「ケーキだよ。まぁ、見ててよ!こっからが良いとこだから」


私がロールケーキの端を切り落としたら、ヨシュアの口が開いた。


「へぇ、可愛いね」

「でしょ!?」


実はちょっと一工夫して、丸める際に真中にジャムを多めに入れ、スポンジを少し曲げ、ハート形を作っていたのだ。

ぱっと見は筒状のケーキにしか見えなかっただろうけど、中は可愛いハート型ケーキ。

どうだ!巻き寿司の国の技をとくと見よ!


ケーキの周りをフルーツや余ったクリームで飾り付けて出来上がり。

マリーナに食後に出してもらうようにお願いする。

スポンジの作り方を教えてくれたのはマリーナだけど、こんな形のケーキは初めてだって驚いてた。


その日は王都に住んでいる義兄のアルもお祝いに駆けつけて、家族団欒の中、夕食を楽しんだ。

夕食後、髪油の小瓶をヨシュアが、ケーキを私が、アンナ様の席に運びプレゼントした。

アンナ様は涙ぐんで喜んでくれて、私とヨシュアを抱いて頬にキスしてくれた。ヨシュアは擽ったそうにしてた。私も胸がいっぱいになった。

そう言えば、生前に両親から抱擁された覚えがない。お金は余るほどくれたけど、両親ともに仕事だ社交だと忙しく、顔を合わすことも少なかったように思う。

もう少し積極的に自分から係るべきだったのかもしれない。そう思うが時すでに遅い。前世で出来なかった親孝行は、この世界で果たせばいい。


ついでにヨシュアの世話もしてやろう。


そんなことをつらつらと考え、アンナ様の喜ぶ顔を思い出しながら、眠りについた。



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