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『くっ、殺せ!』の感情エネルギーでオーク軍を無双させるマッドサイエンティスト〜学会を追放された俺、敵地で捕虜の姫騎士を最高級バッテリーにして快適なスローライフ(※帝都は灰になりました)〜  作者: ランダムアクセス
第1章:追放されたマッドサイエンティストとオーク軍の出逢い

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第8話:【女騎士狩り】「最高のプライドの持ち主を生け捕りにしてやるぜ!」

 翌朝、夜明け前の薄暗い霧の中。

 オーク第1打撃連隊の精鋭八百名が、整然と隊列を組んで広場に集結していた。


 かつてのオーク軍といえば、血に飢えた野獣のように怒声を上げ、武器を打ち鳴らして騒ぎ立てるのが常だった。

 だが、今の彼らは違う。


 全員が昨夜の温水風呂でピカピカに体を洗い清め、柑橘系の石鹸の香りを漂わせている。

 背筋はピンと伸び、手入れの行き届いた鎧と武器が朝露に鈍く光る。極めて規律正しく、静まり返った威容は、まるでどこかの大国の近衛軍団のようだった。


「野郎ども! 準備はいいか!」


 最前列に立ったバールック大佐が、低く太い声で号令をかける。

 その隣には、白衣姿の俺が立っていた。手には特注の巨大な捕獲網と、衝撃吸収ジェルを充填した特製の手枷。


「「「オウッ!!」」」

 八百名のオークたちが、地響きのような唸り声を返す。


「今日の作戦目標を復唱しろ!」

 バールックが叫ぶと、連隊の兵士たちが一斉に声を揃えた。


「「「傷つけるな! 泥をつけるな! 大切に捕獲せよ!!」」」


 戦場に向かう軍隊の掛け声とは到底思えない言葉が、朝の静寂を切り裂いた。

 遠くで見送るガルガドス師団長が、またもやこめかみを押さえて胃痛に耐えている。


「よろしい」

 俺は一歩前に出て、兵士たちに最終確認の訓示を行った。


「諸君、耳をかっぽじってよく聞きたまえ。敵の総大将である姫騎士シルフィアは、帝国の至宝と呼ばれる超一級の自尊心の持ち主だ。彼女の肌に切り傷一つでもつけば、屈辱エネルギーは痛覚のノイズによって著しく純度を落とす!」


 俺は持参した『女騎士捕獲用・安全ネットランチャー』を掲げて見せた。


「物理的な打撃は厳禁だ。包囲し、退路を断ち、この魔導拘束ネットでふんわりと包み込むように捕獲したまえ。護送用の馬車には最高級の羽毛クッションを敷き詰めてある。移動中の振動による車酔いも厳禁だ。気分が悪くなれば、吐き気によってPCE波形が乱れるからね」


「「「了解であります、ゼノ先生!!」」」


 オーク兵たちは真剣そのものの顔で敬礼を返した。

 彼らにとって、これは単なる命令ではない。愛する「大浴場」と「温水シャワー」を永遠に稼働させ続けるための、聖なるエネルギー源の確保作戦なのだ。士気の高さは通常の戦争の比ではない。


「野郎ども、出陣だ! 帝国の女騎士を、極上のVIPルームへご案内するぞ!!」

「「「うおおおおおおおおっ!!」」」


 バールックの号令とともに、八百名のオーク精鋭部隊が静かに、しかし大地を揺るがす確実な足取りで前線へと進撃を開始した。


 一方、その頃。

 国境を挟んだ帝国側の前線拠点『アイゼンベルク砦』。


 城壁の上に立つ一人の麗人が、朝霧の立ち込める平原を鋭い眼差しで見つめていた。


 白銀の甲冑に身を包んだその姿は、まるで神話の戦女神の如く神々しい。

 朝日に照らされて輝くプラチナブロンドの長髪、吸い込まれるような碧眼、そして凛と引き結ばれた気品ある唇。

 神聖グランベルス帝国が誇る最強の姫騎士――シルフィア・フォン・グランベルスその人である。


「シルフィア様、オーク軍の様子が妙です」


 副官の若き騎士が、緊張した面持ちで報告してきた。


「どう妙なのだ?」

「それが……斥候の報告によりますと、敵の陣地から黒煙ではなく白い湯気が立ち上っており、オークどもが泥まみれではなく、異常に綺麗な肌で整然と隊列を組んでいると……」


「馬鹿な」

 シルフィアは美しく整った眉をひそめた。


「オークとは知性なき獣の群れ。略奪と破壊しか知らぬ野蛮な魔族のはずです。綺麗な肌などと、戯言を口にするな」


 シルフィアは腰の聖剣の柄に手をかけた。

 刀身から淡い黄金の神聖オーラが立ち上り、彼女の高潔な闘志を証明するように揺らめく。


「我がグランベルス公爵家の名にかけて、帝国の民を脅かすオーク共を根絶やしにしてみせます。万が一にも、不覚を取って捕虜になるようなことがあれば……」


 シルフィアは凛とした声で、誓うように言い放った。


「その時は舌を噛み切って果てるか、『くっ、殺せ!』と叫んで名誉ある死を選ぶのみ。騎士道の誇りは、いかなる刃にも穢せません」


「おお……さすがはシルフィア様!」

 周囲の帝国騎士たちが感嘆の溜息を漏らす。


 だが、彼らはまだ知らなかった。

 向かってくるオーク軍が、彼女の命を奪う気など微塵もなく、むしろ「一世一代のおもてなし」をするために、ふかふかの羽毛布団を用意して待ち構えているという事実を――。


 地平線の彼方から、朝霧を切り裂いてオーク軍の巨躯が現れる。

 帝国最強の姫騎士と、世界最強のハイテクおもてなし軍団の激突が、今まさに始まろうとしていた。


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