↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/50

第32話:【屈辱シフト】オーク運動会のチアガールとシリアス小説添削

「――本日のスケジュールを発表する。午前十時、中央グラウンドにて『秋の大オーク運動会』の開会式だ」


 研究所のブリーフィングルーム。

 白衣姿の俺が掲げたスケジュール表を見つめ、シルフィアは不審そうに眉をひそめた。


「運動会……? オークが徒競走や玉入れをするのか? 微笑ましいではないか。それが私と何の関係があるのだ?」


「君には――『特等応援席専属チアガール』を務めてもらう」


「………………は?」

 シルフィアの表情が凍りついた。


 パチン、と俺が指を鳴らすと、オークの仕立て屋が持参した衣装が掲げられた。

 赤と黄色を基調にした超ミニ丈のプリーツスカート、お腹が丸出しのノースリーブシャツ、そして両手にはキラキラ光る特大のポンポン。


「な……ななな……なっ!? な、何だこの破廉恥極まりない布の切れ端はぁぁぁっ!?」


「露出度は高いが、極めて通気性と伸縮性に優れた運動用ユニフォームだ。さあ着替えたまえ。君がポンポンを振って『フレフレ、オーク!』と応援しなければ、運動会のプログラムが進行しないのだ」


「だ、誰が着るかぁぁぁっ!! 私は帝国の近衛騎士団長だぞ!? なぜ私が筋骨隆々の豚面どもがパン食い競走をしている姿を、半裸で応援せねばならんのだぁぁぁっ!!」


「着ないと、明日の朝食のクロワッサンが全部フランスパン(激硬)になります」

「き、汚いぞ貴様ぁぁぁっ!!」


 一時間後。

 運動会の特設ステージには、顔面を耳まで真っ赤に染め、震える手でポンポンを握りしめ、ぎこちないステップを踏むシルフィアの姿があった。


「フ、フレ……フレ……オ、オーク……が、頑張れ……っ……!」

 下を走るオークたちが「お姉ちゃん可愛い〜!」「一等賞取ったぞ〜!」と大歓声を上げる。


「な、なぜ私がこんなところで……豚のパン食い競走を……! 死にたい……消え去りたい……! 穴があったら入りたい……! くっ……殺せぇぇぇぇぇぇっ!!」


 ピピピピピッ!

【計測値:92,000クック(羞恥チア波形)を検知!】


「よし! 第一波形、V字回復だ! 続いて午後の部へ移るぞ!」


 午後二時、図書室。

 シャワーを浴びていつもの服に着替えたシルフィアの前に、一冊の分厚い原稿用紙の束がドサリと置かれた。

 表紙には、武骨なオーク文字でこう記されていた。


『純情オークと花摘みエルフ〜届かぬ想い、月夜の咆哮〜 著:ボグ』


「……これは?」

 シルフィアが恐る恐る尋ねる。


「兵長ボグが三ヶ月かけて執筆した、渾身の処女作・シリアス純愛小説だ。君には赤ペンを持って、ガチで添削・校正を行ってもらう」


「しょ、小説の校正……!?」


「そうだ。誤字脱字のチェックはもちろん、プロットの破綻、ヒロインの心理描写の甘さ、セリフのリアリティについて、詳細な批評レポートを作成したまえ。ボグは真剣だ。君の的確な指導を心待ちにしている」


 部屋の隅で、巨漢のボグが両手を前で揃え、モジモジと恥ずかしそうにシルフィアを見つめている。

「お、お嬢様……どうか遠慮なく、ビシバシ直してくだせぇ……!」


 シルフィアは震える手で原稿の一ページ目をめくった。


『その日、俺(体重百八十キロ)は、森でエルフの少女と出逢った。彼女の瞳は澄み渡り、俺の鼻息は荒くなった。「ブモォォ!」と叫ぶ俺に、彼女は優しく微笑みかけた……』


「………………」

 シルフィアのこめかみに青筋が浮かんだ。

 二ページ、三ページと読み進めるにつれ、あまりにも拙く、しかし異様なまでにピュアなオークの恋愛描写が、彼女の知性と騎士道を容赦なく削り取っていく。


「な……何なのだこの展開は……! ここでエルフが『あなたの豚骨スープ、美味しいわ』などと言うはずがなかろう! もっと精神的な葛藤を描写しろ! あと『ブモォ』に濁点を付けるな! 『ヴモォ』にするなと言っているのだ!」


 気がつけば、シルフィアは猛烈な勢いで赤ペンを走らせていた。

 真っ赤に染まっていく原稿用紙。


「な、なぜだ……!? なぜ帝国最強の聖女騎士である私が、敵の兵卒の書いた恋愛小説の文体添削に本気になっているのだ……!? 騎士道とは何だ!? 私の知性はこんなことのためにあるのかぁぁぁっ!?」


 シルフィアは赤ペンをへし折り、頭を抱えて机に突っ伏した。


「もう嫌だぁぁぁっ! 意味が分からん! 不条理すぎる! こんなシュールな精神攻撃を受けるくらいなら、首を刎ねろぉぉぉっ! くっ……殺せぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」


 ピピピピピピピピピッ!!

【計測値:145,000クック(超絶不条理ゲシュタルト崩壊波)を検知!】

【エネルギー出力:完全V字回復! 主砲・防壁ともにフル稼働可能!】


「完璧だ!」

 俺はガッツポーズを突き上げた。


 贅沢に慣れたなら、不条理を与えればいい。

 マッドサイエンティストによる完璧な屈辱シフトにより、研究所の火力は過去最高のピークを取り戻したのだった。


読んでくださりありがとうございます!


少しでも「面白かった」「続きが気になる!」と思っていただけたら、

ページ下部の


・【★★★★★】での評価

・ブックマーク登録


で応援していただけると、執筆の大きな励みになります!


次回更新も楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
RANKING
✨ ランキング挑戦中! ✨
ここまでお読みいただきありがとうございます!
「面白かった!」
「続きが気になる!」
と思ったら、
ページ下部の
ブックマーク追加 と ☆☆☆☆☆ ⇒ ★★★★★
で応援していただけると、
作品のランキングが上がって執筆速度が爆上がりします!
※★1個や2個からでも大歓喜します!
皆様の1票が何よりの励みになります!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。