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配信切り忘れた俺、ダンジョン管理AI(たぶん美少女)の最推しになっていた  作者: 斎藤ゆうすけ
第三章 キャンプ場でのドキドキ潜伏生活

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第71話 なんかやっぱりエキシビションマッチに出ないとダメらしい

 実況リハーサルが終わると、体育館の空気が少しだけ緩んだ。


 マイクの電源が切られ、スタッフたちが機材の片付けを始める。


「お疲れさまである!」


 ユイ先輩が大きく伸びをした。


「本番もこれなら問題なし!」


「そうですね」


 俺もマイクを置き、小さく息をつく。


 思っていたより解説は難しくなかった。


 もちろん、本番になれば緊張するだろうけど。


「凪君」


 後ろから声を掛けられる。


 振り返ると、妻科カオリさんが資料を抱えて立っていた。


「お疲れさま」


「お疲れさまです」


「解説、すごく分かりやすかったわ」


「ありがとうございます」


「専門用語ばかりにならないのがいいわね。一般のお客さんにも伝わると思う」


 そう言ってもらえると素直に嬉しい。


「本番も期待してるわ」


「頑張ります」


 カオリさんは小さく頷くと、ユイ先輩の方へ向き直った。


「それじゃあ、最後にみんなへ説明をお願い」


「了解である!」


 ユイ先輩がマイクを持ち直す。


「それでは!」


 パン、と手を叩いた。


「最後に重要なお知らせである!」


 片付けをしていたスタッフたちも足を止めた。


「今年の武闘会は、探索者協会との共同開催!」


「そのため!」


 ユイ先輩が満面の笑みを浮かべる。


「本戦終了後に、特別エキシビションマッチを開催するのである!」


「おおっ!」


 スタッフから歓声が上がる。


「今年だけの特別企画ね」


 カオリさんが説明を引き継ぐ。


「学園祭へ来てくださる一般のお客様にも、探索者同士の本格的な試合を見ていただくための企画です」


「なるほど……」


 確かに、それなら盛り上がる。


「出場者は?」


 誰かが尋ねる。


「一人は、本戦優勝者です」


 カオリさんが答えた。


 それなら分かる。


 優勝者による記念試合というわけか。


「そして、もう一人ですが──」


 ユイ先輩がにやりと笑った。


 ……嫌な予感しかしない。


「実況・解説担当!」


「大豆島凪君!」


 わかっていたことだが、あらためて言われると頭を抱えてします。


「やっぱり、俺も出場しないとダメですか?」


「もちろんである!」


「いや、もちろんじゃないですよ!」


 思わずツッコミが出た。


「俺、解説ですよね?」


「解説である!」


「じゃあ、なんで試合まで?」


「盛り上がるから!」


「その理由で決めたんですか!?」


 体育館に笑いが広がる。


 ユイ先輩は悪びれた様子もない。


「大丈夫!」


「何がですか」


「凪君なら大丈夫である!」


「根拠が雑すぎます」


 思わず頭を抱えた。


 カオリさんが苦笑しながらフォローに入る。


「もちろん、ちゃんと理由はあるわ」


「理由?」


「武闘会の実況を担当する人が、実際に戦える探索者だということを最後に見てもらいたいの」


「それに」


「あなた自身を見たいという声も、協会には届いているのよ」


「俺を?」


「配信の影響ね」


 思っていた以上に話が大きくなっているらしい。


『マスター』


 ナナが俺の袖をそっと引いた。


「ん?」


『マスターなら問題ありません』


「ナナまで……」


『マスターは強いです』


 迷いのない声だった。


「でも実況もあるぞ?」


『エキシビションは本戦終了後です』


「……確かに」


『時間的な問題はありません』


 理詰めで返されると反論しづらい。


「ありがとう」


『三十二回目です』


「更新早いな」


『リアルタイム保存です』


 少しだけ胸を張るナナ。


 また笑ってしまう。


「笑いましたね」


「いや、安心した」


『それなら良かったです』


 ナナも小さく微笑んだ。


     ◇


 打ち合わせが終わり、体育館を出る。


 夕日が校舎を赤く照らしていた。


「結局、相手は誰なんだろうな」


 独り言のように呟く。


『現時点では非公開です』


 ナナが答える。


『協会側でも限られた関係者しか知りません』


「そこまで秘密なのか」


『はい』


 学園祭まで、あと四日。


 本戦の実況。


 そして、エキシビションマッチ。


 気付けば、解説だけのつもりだった俺まで、学園祭の主役の一人になろうとしていた。

お読みいただきありがとうございます。


本作はカクヨムでも連載中です。


続きが気になる、面白いと思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。

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