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Iの冒険記  作者: 一発KO
第一章 異世界漂流変
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13話 再開

 

<ゼラス視点>


「調査しましたが、これ以上の情報は見つかりませんでした」


「そうか、引き続き調査を頼むよ。ティグさん」


「かしこまりました」


ティグが頭を下げるのを確認したゼラスは執事のクロノに視線を向ける。


「クロノ、捕らえている山賊の方は」


「残念ながら現在、捕らえている山賊はカイト様による怪我でまともに話せる状態ではありません。とりあえず応急処置をして物置小屋の倉庫で幽閉しています。見張りはムドが引き受けています」


「話せる状態だったらその時、頼むよクロノ」


「かしこまりました」


ゼラスはクロノに指示を出した後、窓の外、村の景色を見て溜息をつく。


「今のところ、手がかりは無しか」


ゼラス達はカイト達が館に戻った後、村で山賊について調査を行っていた。


「今回の一件でこの山賊騒動の解決のきっかけになればと思っていたけど現実はうまくいかないか……」


「申し訳ありません。我々が力不足ゆえに」


執事のクロノとティグがゼラスに頭を深く下げる。


「気にしなくていいよ。二人ともしっかりやっている。寧ろ力不足なら……僕の方だよ……何せ山賊騒動は半年前から騒がれているのに掃討どころか手がかりすら掴めてないからね……”無能”と言われても無理はない……か」


ゼラスは暗い顔で自嘲気味に笑う。

その姿はカイトに見せていた領主としての威厳はなくカイトと同じ年齢のよくいる青年が見せる暗い感情をもった姿だった。


「せめて、査定結果の報告が来る前に解決できたらと思っていたけどね……」


「ゼラス様……」


その姿にティグとクロノは心配そうに見つめる。


「ごめん。弱いところを見せたね。僕が……私が情けないところを見せるわけにはいかないね」


ゼラスはそう言い弱い自分から普段の威厳のある姿勢をクロノたちに見せる。


「気にしないでください。我々としてはもっと頼ってくれると嬉しいです」


「ありがとう、ティグさん、クロノ」


ティグとクロノの励ましに、ゼラスは持ち直し、改めてティグ達に視線を向ける。


「それよりもここのところの山賊騒動をどう見る?」


ゼラスの言葉にティグとクロノはお互い目をやりあった後、代表としてティグが応えた。


「正直に申しますと山賊の動きが不自然です。ここまで立て続けに起きているのに手がかりが掴めていません」


ティグがそう言って山賊騒動の現状を話した。

自警団など見回りをしているが必ず、警戒していないところの襲撃。

山賊の拠点を見つけても、向かったときにはもぬけの殻になっている。

これらはすでに起こっていた。


「そしてつい最近に起きた、まるで待ち伏せでもされていたかのようにセレナお嬢様への襲撃、あのルートは念に念をいれて一部の人間しか知らないルートでした。そして……」


ティグはそのまま手元に持っていた銃をゼラスの前に置く。


「”エールディール”。異世界でいう”ガバメント”と呼ばれている代物をこの世界で開発したものです。先ほど捕らえている山賊が所持していました」


「……!!」


ティグの言葉にゼラスは目を見開く。


「……それは国の許可……それも貴族か機関、軍部でないと流通が許可されていないものじゃないか。何故、山賊が!?……まさか」


「はい。この騒動、他の貴族が絡んでいる可能性……そしてわが家に”内通者”がいる可能性です」


ティグの報告にゼラスは驚愕する。

この山賊騒動は貴族が関わっているかもしれないと予想できていたが内通者もいることにゼラスは衝撃を隠せなかった。

ティグの隣にいる執事のクロノは内通者がいることを知り怒りの表情を出している。


「……内通者か」


(父上……父さんだったらこの時、どうしただろうな)


ゼラスの脳裏に、亡き父の顔が浮かんだ。

父は名君と呼ばれていて領内の多くの民から信頼されていた。

そんな父ならこういった事態にどう対処したのだろうか。いや、まずそんな事態には絶対にならなかっただろう。


「ゼラス様、あくまでそう言った可能性がある話です。何らかの手段で我々の動きを察知しているのかもしれません。ですが、最悪の事態を想定すべきです」


「分かってるよティグさん。……しかし、そう考えるとムドがカイトのことを警戒するのも無理はない」


ゼラスはムドの言動を思い出す。

彼はカイトに嫌悪感を示していた。

最初は今の自分の状況から余所者を館に招き入れるのを良く思っていなかったと考えていたが、ムドはカイトが内通者だと思っていたかもしれない。


(自分が仕事で手を焼いているのに対しセレナのことを心配していたのも彼だったからな……)


ゼラスはムドが父、クリス・アルカードに拾われて以来、父の死後もアルカード家に仕えてくれている。ゼラスはそれをよく知っていた。

特にセレナを実の家族のように気に掛けていた。


「ティグさん、一応、聞くけどカイト君が内通者の可能性は」


「はっきり言いますと、0に限りなく近いと考えています。時系列が合いませんしカイト様の様子からこの世界について何も知らないのは演技ではないでしょう」


「そうか。自分から言ってなんだが私もそう思う」


ゼラスは窓の外を見つめた。


(この世界の常識どころか地理も知らない人間を内通者として使うなんてデメリットしかない……いや、それだけじゃない)


ゼラスはカイトのことを思い出す。

ティグからの報告では、カイトは館の案内の後もこの世界を知ろうと必死に書庫室に籠りながらも周りに迷惑を掛けないように気を掛けていた。

カイトが暴走した時も、カイトはまず怪我をさせたメアリや自分のせいで周りに迷惑を掛けた罪悪感があると感じられた。

そんな人物が内通者などできるだろうか。


(それにセレナの笑顔が増えたのも事実だしな……)


自分はセレナの相手ができず彼女に寂しい思いをさせていたことを自覚していただけにカイトの存在は彼女を前から世話していたムドと同じくらい大切な存在だとゼラスは理解していた。


「ただ、彼の”真名”については少し……調べる必要があるかもしれません」


「転移した人間は転移した世界の法則に適応する……だったか。カイト君の方は”真名”の訓練という形で調べてほしい」


「分かりました」


ゼラスの頼みにティグが頭を下げる。


「良し、それじゃあ、まず今回、保護した身元不明の子供に一応、聞いてみるとするか。何かわかるかもしれない」


ゼラスは今回の騒動で保護された身元不明の茶髪の子供への聞き込みをするために席を立とうとした。



「……ん?」


するとゼラスと一緒に向かおうとしたティグが動きを止めた。


「ティグさん、どうかしたかい?」


「……ゼラス様、見張りをしていたムドから報告です。先ほど捕らえていた山賊が……自害しました」


「なっ!?」


唯一、山賊騒動の情報を持っている者が自殺したという報告にゼラスはしばらく言葉を失った。

更に保護していた茶髪の子供が姿を消したことが分かったのはそれから数分後のことだった。



*    *    *


<カイト視点>


日が沈んだ夜。

カイトは自分の部屋のベッドに仰向けで倒れていた。


(……あの時、セレナさん達の助けになりたいと思ったけど具体的にどうすればいいのだろう……)


セレナ達は自分が心から落ち込んでいた時、励ましてくれた。

迷惑を掛けている自分にもまだここにいていいと言ってくれた。

だから、せめてセレナ達の助けになりたいと思っていた。


(セレナさんたちはこんな俺を必死に受け入れてくれた。……だからそれに応えるべきだというのは分かっている)


カイトは両腕をベッドにもぐりこませるように頭を後ろに組んだ。


(……セレナさんって何か困っているところってあるのだろうか?)


カイトはセレナのことを思い出す。

彼女は昔は自分と同じで失敗とかあったらしいがそれでも前を向いてひたむきに頑張っている。そんな彼女に自分は何か力になれるのだろうか。

他の人もそうだ。クロノという執事は話したことがないから何ともいえないがここの領主、カイトと同じ年であるゼラスはしっかりしている。

とても自分が何かできるとは思えない。

ティグやメアリに至っては逆に世話になっている状態だ。


(みんな、……凄いな)


カイトは周りの凄さが自分とは比べ物にならないと感じ溜息を吐く。


『失敗したところがあってもそこから学んで成長していけばいい。だってカイトにとってここが”終わり”じゃないでしょ?カイトの物語は、まだこれからも”続く”んだから』


その時、カイトはセレナが裏庭で言った言葉を思い出した。


(そうだ。まだ終わりじゃない。今は無理でもいつかできればいいじゃないか……セレナさんはやっぱりすごいな)


気づけばカイトにあった負の感情が消えていた。


(よし、とりあえずその時が来るまで力を付けよう、そうしよう。……まずはここの世界の文字を読めるようにしてこの世界について知ることからだな)


一つの目標を決めたカイトはそろそろ寝ようと窓のカーテンを閉じようとしたその時……


コツン


(ん?)


一瞬、窓の外側を何か小石をぶつけるような音が聞こえた。


(なんだろう?)


カイトはそれが気になりカーテンを閉める前に窓を開けようとした。


「あっ」


「えっ?」


開けて窓の下を覗き込んだ瞬間、窓の縁を掴んでいた子供と目が合った。

一瞬の出来事にお互い沈黙する。


(あれ?この子って)


目と合った子供にカイトは見覚えがあった。

ボロのフードを着こみそして茶髪のショート髪。


「あっ!!」


「シー」


カイトが思い出して声を出そうとした瞬間、子供はそのまま窓に乗り上げカイトの口を塞ぐ。


「んん!?」


「落ち着け!一応、周りに気づかれないようにこっそり侵入しているんだ!……とりあえず、中に入れてくれ。子供の体だと色々と大変なんだよ」


子供の言葉にカイトは首だけコクコクと頷き、彼を部屋の中に入れた。


「ふぅ、さてやっと再会できたな」


部屋に入った茶髪の子供は安心してカイトの口を塞ぐのを止めて一息入った。


(確か昨夜に出会った子供!?何故、こんな所に)


カイトはその子供を覚えていた。

自分が昨夜、森に入るきっかけとなった茶髪の子供だった。

追いかけるときに逆に襲われることがあったが、山賊と相対したときに助けてくれた。

そして自分のせいで彼が危険な目に合わせたこともあったのでどこかでお礼を言いたいと思ったが自分から来るとは思っていなかった。


「えっと、安心しろよ。もうお前を何かしようと思っていないよ。寧ろ協力し合うと思っているんだ。俺と”同じ”者同士、仲良くやっていこうぜ」


カイトが警戒していると思われたのか茶髪の子供は安心させようとする。

その姿は昨日見せた刺々しい態度とはまるで違う親しみを込めたものだった。

急な態度の変化に驚いたが茶髪の子供が言った言葉にカイトは目を丸くした。


(あれ、”同じ”?……待って!!あの時、確か!!)


その言葉で、カイトは思い出した。


「……そういえば、名前は言ってなかった。……俺の名前は黒瀬祐樹。この世界ではアンクと呼ばれている……まぁ要するに俺と同じ”異世界人”だよ」


この世界に来てからまだ数日、カイトにとって、自身と同じ異世界人との思いがけない再会だった。


ここまで読んでくださりありがとうございます。

ここからは毎週日曜日の投稿となります。

たまに水曜日に投稿するかもしれません。その際は後書きで事前に報告をさせていただきます。

次回は5月9日(日)、18時に投稿予定です。

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