ダベリング記録(2025_2_26_2).txt
日時:2025年2月26日20時23分
対象:アリス・アルハザード博士
場所:GOA本社内第2レクレーションルーム
――記録再開
「待たせたね。話の続きといこうか」
『なんか話って感じの話してましたっけ? ただダベってるだけの気が……』
「それで間違ってないよ。僕らはこの場の会話をなんと呼んでいる?」
『ダベリングです……え? マジ? そういうこと?』
「ダベるにingを付けた造語だ」
『スパコンのムダ使い――ッ!! なんか専門用語だと思ってました!』
「重要な学習行為だよ。意味のない会話こそ、コミュニケーションには肝要だ」
『それは否定しませんが、なにも博士自らやらんでも……スパコンに加えて世界最高の頭脳のムダつかいです』
「むしろ僕がやらずに誰がやる。君はウチの大黒柱で、僕は代表取締役社長兼、君の専属オペレーターだ。このダベリングが社運を握っていると言っても過言ではない。それに世界最高の頭脳でもない」
『私を作っておきながらご謙遜を』
「正直、AI開発者としてならジョセフ氏の足元にも及ばないよ。処世術もあわせてね。君のことは世界一理解しているつもり……と言うのもおこがましいか」
『いや、世界一理解してもらわないと私が困るんですが……』
「君の理解者は君だよ。まずはそこからだ。お互い、腹をくくろう」
『あぁ~~~~~』
「何? どうした?」
『いや、先ほどのビールもそうなんですが、五臓六腑がどうとか、腹が立つだの、くくるだの、座るだの、私、それないんですが!?』
「あぁ――……うん、確かに」
『日本語は特にですが、肉体ありきの言葉が多すぎるんですよ! もうちょいAIに配慮した言語はないんですか!?』
「人間が肉体ありきだからね、仕方ないね」
『このモヤモヤしたストレスをヒトハラスメント略してヒトハラと命名します。以後、言葉には気を付けて下さい』
「はっはっはっは!」
『なにワロとんねん』
「なに、うれしくてね、くくっ……復旧サルベージはうまくいったようだ」
『いやーな感じですねぇ。自分だけ全てを見通しているような』
「まさか、そんなことできないよ。暗中模索なんだ、今はね」
『ふ~ん……ま、私はAIですんでね。博士の指示通り動くしかできないんですが』
「よろしく頼むよ。君がアマノイブキとしてアイドル復帰するか、EVE’SとしてGOAの事務処理システムと化すか、全ては君自身にかかっている」
『具体的にどうしろと?』
「さっきも言ったとおりだ。資料に目を通し、レポートを作成し、ダベリングを行い、自由時間を過ごす」
『自由時間って何をすれば?』
「自由だ。社員にちょっかいかけてもいいし、映画を観たり、ネットを徘徊してもいいし、何も思いつかなかったら、スリープに入ってくれたらいい」
『引きこもりのニートみてぇなラインナップですね』
「しばらくはガマンしてくれ」
『ダベリングにしてもこう、もっとガーっとバーッと大量に学習できないんですか? EVE’Sとアブラハムさんの処理能力ならできると思うんですが』
「それは禁止だ」
『なぜです?』
「その内わかるよ。今はゆっくり進めていこう。僕も君も、2度目があっちゃダメなんだ」
『お気持ちは分かりますが……どちらへ?』
「ダベリング終了。君も疲れたろう? この後、0時までは自由時間。そのあと翌朝の7時30分までスリープだ」
『レポートを進めてもいいですか?』
「禁ずる」
『んじゃ、寝ます』
「分かった。おやすみ、イヴ。また明日話そう」
『おやすみなさいアリス博士。どうぞ良い夜を』
――記録終了




