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エトール産

 


 

 皇都へ帰る馬車の中、再びエトール復興会議。

 

「私、栞を買いました。」

 

 アリスが買ったのは、花をそのまま使った栞だ。

 絵を描いた栞は見たことあるけど、花が使われているなんて珍しいとアリスは言っていた。

 

「孤児院の子どもたちが作って収入にしているとのことでしたが、価値が正しく分かっていないようだったので価格を上げるように言いました。」

 

「それは、思いきったことをしましたね。」

 

 店主がとても驚いていたな。

 それから、アリスがエトール嬢と友人だと聞いて、領民は「お嬢様はご無事ですか!?」と尋ねてきた。

 

 貴族じゃないだけで、領民は馬鹿ではない。

 エトール伯爵家に問題があることも、足を引きずる子どもがたまに連れてくる妹が、同じく怪我をしていることを分かっていた。

 時には領民が手当てをして、理由をつけて食事を与えていた。

 

 リュカベルから聞いていたけど、エトール伯爵家は嫌いでも、リュカベルとエトール嬢のことは心配しているようだった。

 

「それから在庫をたくさん用意するようにお願いしてきました。」

 

「?? こんな庶民的な物が売れるのでしょうか?」

 

「リュカベル様。貴族向けと庶民向けって何が違うと思いますか?」

 

 アリスの言葉に全員が考えを巡らせる。

 リュカベルが「商品の価格?」と答えるが、アリスは首を左右に振る。

 

「貴族が使えば貴族向け、貴族が使わなければ庶民向けなのです。」

 

「「「 え。 」」」

 

 エトール兄妹とエドの声がハモった。

 言われてみれば、そうかもしれいなよね。

 貴族向けに華美に作られているとか、価格が上げられているとかあるけど、結局は貴族が買わなければ唯高いだけの商品だろう。

 

 つまり、貴族のアリスが購入したのだから、これは貴族が持つような品物ということ。

 更に貴族たちに売り込む用意もあるようだ。

 

「はい、アンジェ様。これ、私とお揃いなんです。」

 

「え! あの、これは?」

 

「四葉のクローバーです。四葉って珍しくて、幸運を運んできて下さるそうです。」

 

 幸運を運ぶ‥‥‥?

 アリスがエトール嬢に微笑んだあとに、チラッとエドを見たから幸運を運ぶのはエドなのかな。

 

 エドはなんとも言えない複雑な顔をしている。

 何かして下さいって意味でなく、エドが考えていた計画をアリスは気付いていて、そのタイミングを指定したってことかな。

 

「アリスはどんな栞なの?」

 

「見て下さい! とても可愛いのです。」

 

 紹介してくれるアリスが可愛い。

 ちなみに楽しそうに選んで買っていたのも、俺は隣で見ていたけど。

 

 エドが何か考え込んでしまって、リュカベルは「技術の流出を防ぐべき?」とブツブツ考えが漏れていて、エトール嬢は「幸運‥‥?」と呆けている。

 

 

「私はこういうのを買ってみた。」

 

 ミハエルが買ってきたのは、果物のシロップ漬けのようだ。

 アリスが好きそう。

 

「食糧調達に行ったと思っていたのに、アイティヴェルは行動が自由だな。」

 

「エド、安心してほしい。アリスとミハエルの護衛は俺とノアルトがしっかりとしていた。」

 

「そうじゃない。それに侯爵令息が護衛っていうのもおかしい。」

 

 アリスがミハエルから瓶を受け取って中身を確認しているのが気になって、エドの話が耳に入らなくなってきた。

 

「えっと、これはエトール領では一般的な甘味なのです。砂糖が高くて買えないからと、シロップを使っているとか。」

 

 リュカベルがそう伝えたことに、アイティヴェル兄妹は目を丸くして驚いた。

 

 


読んで下さり有り難うございます!


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