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嫌に

 

 

 今回の旅には、エトール伯爵家の三男をエドが連れてきた。

 

 エトール嬢から、濃紺の瞳と濃い灰色の髪色がお揃い、皇城で下級文官をしている、怪我の後遺症で片足を引きずっている、と聞いていただけでエドは探してきたらしい。

 

 下級文官の仕事場に、宰相子息が突然現れたなんて、騒ぎになったのではないだろうか。

 しかも、エドって上級文官に最年少合格したから、文官の間では有名のはず。

 

 父親に突き飛ばされた妹を庇って階段から落下し、その後遺症で今も片膝がおかしいのだと本人が話してくれた。

 エトール伯爵、本当にグズだな。

 

 名前は、リュカベル。

 見た目に派手さはないが、誠実そうな印象だ。

 

 アリスが案内してくれて、リュカベルはエトール嬢と再会することになった。

 

「リュカお兄様!」

 

「アンジェ!!」

 

 エトール嬢はエドではなく、リュカベルに抱きついた。

 

 仕方ないかなって思ったりもする。

 エトール伯爵家は、貴族会議にかけられて査問審査中だ。

 貴族会議にかけられた以上、家門として無事ではいられないだろう。

 そんななかエドは、エトール嬢がリュカベルを本当に心配していると話していた。

 

「あぁっ、アンジェ。心配したよ。それにしても、なんだか、えっと、綺麗になった気がするのだが。」

 

「アイティヴェルで鍛えて頂いたのです!」

 

 鍛える?

 アイティヴェルで特訓でも受けてたの?

 

「エドワード様、この度は大変ご迷惑をおかけしました。それから、リュカベルお兄様を連れてきて下さり有り難うございます。」

 

「アンジェは、被害者なのだから何も悪くない。これからのことも心配しなくて良い。」

 

 ずっと気になってたんだけど、リュカベルって単身で来たんだよね。

 貴族なのに使用人皆無。

 本当にエトール伯爵家、どうなってんの。

 

「エドワード様、本当に有り難うございます。」

 

 俺はアリスにそっとハンカチを渡した。

 エトール嬢が涙を落としながら頭を下げる様子に、アリスまで桃色の瞳を濡らしている。

 

 アリスのこの様子を見る限り、エトール嬢の今までのことを、俺の何倍も詳しく知っているのだろう。

 

 

 

 旅で疲れた母上と弟たちは、案内された部屋で休憩をとることになった。

 ノアはチビを寝かしつける役だ。

 

 エドとエトール兄妹、俺とアイティヴェル兄妹に別れて事後報告を行うことになった。

 後でゆっくり話そうかと思っていたが、エトール兄妹がソワソワしていたので、先に話すことになった。

 

 エトールの内情が出てくるので、家門の情報保持のために一応別れての報告だ。

 

 

 

「リュカベルが妹君を学園で守ってくれていたと聞いて、ミハエルとアリスに感謝していたよ。」

 

「別に感謝されるようなことではない。」

 

 ミハエルはそう言うけど、ウィルだってアイティヴェル兄妹を褒めていたくらいだ。

 聖女を味方につけているアイザックをやり込めるのは、身分だけではどうにもならないのに、二人は完璧に牽制したと聞いている。

 まぁ、アイツらに身分を正しく理解できているかは、ちょっと怪しいけどな。

 

「アディ。こんなことをして、私のこと嫌にならなかったですか?」

 

 アリスがそう言うけど‥‥

 嫌になるってアリスのことをだよね?

 

「なるわけないよ。俺はアリスが我慢するくらいなら、やり返して良いと思っているよ。」

 

 本心だ。

 アイティヴェルは有力貴族だけど、辺境から出てこないことが多いので嫌味も妬みも少ない方だと聞いている。

 対して、侯爵夫人になれば殆んど皇都で過ごすことになり、妬みも恨みも勝手に増えていく。

 アリスがそれを一方的に受け入れる必要はない。

 

「それでもどうにもならないなら、俺が相手を黙らせても構わない。」

 

 どんな手を使ってもアリスを護るよ。

 それが実現できるだけの積み重ねは、ずっとしてきたつもりだ。

 

「大きく出たな。相手がもし皇太子殿下だったら?」

 

「二度と魔道具の設計図を売らないと脅迫する。」

 

 容赦ないな、とミハエルはため息つくけど、これくらいは普通でしょ。

 

 

 

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