到着
やっと来れました、アイティヴェル領。
最北部の領地であり、避暑地として有名な土地だけあって涼しい。
ノアルトが母上にストールをかけて、それから母に張り付いて寝ている弟たちを起こしている。
アイティヴェル邸に着いて、馬車から降りるとアイティヴェル一家が待っていてくれた。
「ユアランス侯爵夫人、ユアランス次期侯爵様、ファンブレイブ次期侯爵様、エトール伯爵令息様。この度は避暑地に、我がアイティヴェル領を選んで下さり、有り難うございます。」
形式的とも言える挨拶を交わし、俺はその間も久しぶりに会えたアリスのことで頭がいっぱいだった。
目が合ったアリスが微笑んでくれたときなんて、心 臓が爆発するかと思った。
そして、辺境伯がエドと話始めた。
「アリス。」
エドから、間違っても辺境伯の前で抱きついたりしないように、と厳命されている。
親からの信頼がなければ、今後の夫婦生活に関わると言われたので仕方ない。
アリスの手を取り、そっと顔を寄せる。
あぁ、アリスだ。
アリスの表情、アリスの手、アリスの優しい香り。
全てを正確に思い出すには、抱きしめられないならこうするしかないと決めていた。
「会いたかった。」
「ア、アディっ」
そっと唇をアリスの額に寄せてしまった。
うぅ、いけないいけない。
アリスの引力に負けてしまっては、辺境伯夫妻との間に確執ができてしまうかもしれない。
全ては今後の円満な夫婦生活のために。
アリスが頬を赤らめて照れている。
可愛すぎて心臓が、いや、それより魔力眼が。
「アル。その辺にしとかないと、今すぐ魔物討伐に行かせますよ。」
エドから声がかかる。
ウィルがもしものときは、ってエドに許可してたんだよね。
「アディ、深呼吸しましょう!」
え、深呼吸で治まるの?
って顔になってるよ、エド。
アリスが言うのだから俺は深呼吸します。
すーっ。
はーっ。
「もっと深く!」
すーーっ。
はーーっ。
『にゃーん』
「にゃーん?」
「え、アディ可愛い」
「可愛くはないでしょう。」
エド、黙ってて。
俺の足元に白い猫がすり寄っている。
驚いたせいで、無意識に魔力眼が治まっていく。
「スノウ」
アリスが猫を抱き上げた。
白くて、フワフワで、アリスの腕の中で大人しくしている。
アイティヴェルで飼ってる猫ってことかな。
真っ白な雪玉みたいな猫を抱くアリス、美しすぎるのですが、どうしよう。
画家とか呼んでおけば良かったか?
「アリス義姉上。」
俺の後ろからノアルトの声が響いた。
ノアにしては飛ばしてきたな。
アリスは目を丸くして驚いている。
「お初にお目にかかります。ユアランス侯爵家次男、ノアルト・ユアランスと申します。義姉上に会えてとても嬉しいです。」
「はじめまして。アイティヴェル家長女、アリス・アイティヴェルと申します。こちらこそ光栄でございます。」
ノアが貴族らしく挨拶をしたから、アリスは反射的に淑女の礼を返す。
「えっと、あの、アディの弟君‥‥?」
「そうだよ。アリスのこと姉と呼ぶのだから、間違いなく俺の弟だ。」
ノアルトは、瞳の色は氷色で異なるが、同じ黒髪だし俺と似ている方だと思う。
ウィルは「アルを少し小さくしたらノアだよね」なんて言ってたくらいだ。
「まぁ! とても似てらっしゃるのですね。ノアルト様、お会いできて嬉しいです。」
「僕のことはノアとお呼びください。兄上のことを呼び捨てなのですから、僕のことなど呼び捨てるべきです。」
「よ、呼び捨てる!?」
ちなみに、ノアルトだけでなく、四男と五男もついてきている。
まだ幼いから母上から離れてくれなくて、母上は諦めるのではなく二人を連れてきた。
アリスはその話に喜んでいた。
アリスからすると、会えなかった間の俺を連想される姿がとても嬉しいらしい。
いつかユリウスにも挨拶したいと言ってくれた。
「ユアランス兄弟は、何処にいても変わらないのだな。」
エド、どういう意味。
やっと来ました!!
アイティヴェル領。
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