脈
「それで? エドの麗しの婚約者を連れて立て籠った男はどうなったの?」
立て籠った?
閉じ込められたんじゃなかった?
でも、ウィルがこういうなら、そういうことになったのだろう。
「金銭目的だったようなので、労働を与え、報酬を得る環境を用意しました。」
察した。
密室で一緒に過ごせば報酬、手を出せば報酬を増額って内容で引き受けた話だったのだろう。
それを知ったエドは、かなりキツーイ仕事で報酬が良いものを男にさせているってことかな。
反省と目的潰しだね。
「それと、これを。」
エドが机に広げた書類は、全てエトール伯爵家に関する物だった。
エトール伯爵の脱税、悪政、妻と娘への暴言並びに暴力、更には婚外子までいるらしい。
長男、次男まで真っ黒だ。
次男なんて、とある伯爵夫人の愛人だったんだよ?
伯爵に似て異性関係がだらしない。
そして、四男のアイザックは、妹のエトール嬢を閉じ込めるように報酬を出した本人だ。
真っ黒だな。
エトール伯爵家。
「エトール伯爵家の不正を明るみにして、エドは婚約解消でもするの?」
ウィル、直球だ。
優しいレオがウィルを睨んでるのに、ウィルは気付かないふりして無視。
侯爵家の婚約に、家格はそこまで重要視されていないが、それでも宰相職のファンブレイブでは拘りくらいあるだろうな。
宰相閣下、石頭かってくらい厳格なんだよね。
息子の嫁に対するハードルが高そう。
「私は、アンジェと結婚します。」
「宰相は許したのか?」
「当然です。我がファンブレイブの家門はこれくらいで汚れはしません。何よりアンジェはただの被害者なのですから。」
読めた。
そう言って宰相を口説いたのか。
宰相は家門を大事にしているけど、立場の弱い被害者に不利益を与えるなんてできない人だからね。
今の四大侯爵家は特別だ。
嫡男の年が近く、揃って優秀。
そう言われていることは知っている。
剣術と人柄のレオナルド。
魔力眼持ちのアルグランデ。
優秀な頭脳のエドワード。
冷静で冷淡なリンベルト。
リンのは褒め言葉なのか? って思ったりもしたけど、イグニドアは諜報の家門だから必要なことらしい。
そんな俺たちが、嫡男として迎える相手が多少家門に問題があったとしても、問題視されることはないだろう。
令息・令嬢からの悪口くらいあるかもしれないが、それは世間を知らない者であり所詮は戯れ言だ。
「そもそも婚約をする際に、アンジェから家門については尋ねられています。私は問題ないと判断し、その考えは今も変わりません。」
えっ、あれぇ?
もしかしてエドって、結構エトール嬢のこと好きっぽくない?
アリス! 脈は意外と太めかも!
「そう。それなら構わないよ。私も友人には、婚約者を大切にできる器であってほしいしね。」
「任せて下さい!」
「アルは黙ってて」
得意分野だと思ってつい返事したら、リンから笑顔で叱られた。
なんででしょう。
「エトール嬢は実家が潰れること了承してるのか?」
「手紙で話してある。それに潰しはしない。アンジェが慕う三男に継がせるつもりだ。」
エドが言うには、三男だけは妹を守り助けた人物らしく、平等に調べたけど本当に何もでてこなかったようだ。
三男、というか、エトール伯爵家の顔全く覚えてないんだよなぁ。
「アル。伯爵家の三男は今回連れてアイティヴェル領に行くから。アイティヴェル家には許可をもらっている。」
「あ、はい。」
初耳だ。
うちも母上と弟が行くからいいけどね。
側近としての
重要会議してると思ってるので
侍従たちは部屋の外。
読んで下さり有り難うございます!