表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/10

第10話 村の男性



 俺はしがない村人だ。


 辺境の、小さな村の住人。


 俺のいる村では、あまり変わったところも、面白いところもない。けれど、最近新しい住人が増えた。


 やけに所作の綺麗な女性だ。


 彼女がつづる文字も綺麗なので、村人たちの間ではどこかの家のお嬢様なんじゃないかと噂されている。


 けれど、彼女にはお金持ち特有の、気取ったところも高慢そうなところもない。


 以前、この辺境の村を通り過ぎていった貴族は、俺達の事馬鹿にしていたのに、彼女は全然そんな事を言わなかった。


 だからなのか、俺はすぐに彼女の事が好きになった。


 しかし、彼女には好意を寄せている男性がいた。


「ザックス、また来てくれたのね」

「ああ、君の事が心配でね」


 どこからともなくやってくる、ザックスという男性だ。


 体力もあって、気骨もあって、顔も良くて、信念もある。


 俺は、一目でこいつには敵わないと思ったよ。


 だから、影から彼女の幸福をお祈りしておこうと思ったんだけど、ある日突然彼女が村から消えてしまった。


 当然皆心配して、毎日探し回ったさ。


 けれど彼女は姿を現さなくて、どこか遠くで始まった戦が終結して、王都の混乱が収まっていく間も、まったくの音沙汰なし。

 

 次第に皆、「彼女はお金持ちのご令嬢のようだったから、きっと家に戻ったんじゃないだろうか」と、そんな風に思うようになった。


 それが間違いだったと分かったのは、あいつらが村にやってきたときだ。


 国をほっぽってこの辺境まで逃げてきた王族たち。


 ふんじばって捕まえた後、あいつらが彼女の名前をたまに口走っていたから、問い詰めたんだ。


 そしたら、彼女の悲惨な過去が明らかになった。


 俺達は自分達の浅はかな考えを後悔した。


 だから、やってきた騎士達に任せて、そいつらを王都に追いやった後、精いっぱい考えたんだ。


 もし、王都にいる彼女が俺達の所に帰ってきてくれるなら、その時のために居場所を残しておこうと。


 もしかしたら、彼女は新しい居場所を見つけてしまうかもしれないけれど。


 俺達はいつまでも待っていようと思った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ