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ゾンビ待ち  作者: 伊藤両断
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強襲

この日の為に用意した隠れ家へ向かう僕らの前に、ゾンビが立ち塞がる。


2体…数え終わるより早く、更にもう1体が現れた。


3体か…僕1人なら無視して走り抜けられるかも知れないが、車にとりつかれたら厄介。


ここは速やかに始末するしか無さそうだ。


停まるようにジェスチャーをし、僕はバイクから降りて愛用のスレッジハンマーを構える。


男2体、女1体…男は2体とも僕より体格が良い。


喧嘩だったら強いヤツからとか、ゲームなら弱いヤツからとかセオリーがあると思うが相手はゾンビだ。


一見、女の方が弱そうに見えるが陸上経験者だったら動きが速くて厄介かも知れない。


男の方は僕より腕力があるなら、武器を掴まれ奪われたら一貫の終わりだ。


「まぁ、なるようになるか…来い、潰してやる」


ゾンビに挑発は無意味だろうが、舐めた態度をアピールしてみた。


「ゥウゥゥゥゥゥウ…ゥウゥゥゥゥゥウア!」


態度が気に入らなかったのか、ゾンビたちは唸り声をあげ始めた。


生前お友達同士という訳では無いらしく、男の方が1体だけ突進してきた。


連携をとって動かれる心配は無さそうだ。


レスリングのような低い姿勢…ありがたい。


野球のバッティングよろしく、ハンマーを顔面目掛けて振り抜いた。


帰り血が激しく飛び散るが、フルフェイスヘルメットのシールドには撥水スプレーをかけてあるので視界が遮られる心配は無い。


まずは1体…しかし、息つく暇も無く女のゾンビが飛びかかってくる。


いくら鍛えているとはいえ、すぐに二撃を放つような芸当はできない。


ここは回避に専念する。


攻撃を避けながら、ハンマーを再び構え直す。


女が着地し、こちらを向き直したところに一撃を叩き込む。


距離が近くなる間合いだったのでハンマーは少し短めに持ち、しっかりパワーが乗るようにした。


これで、あと1体。


最後の1体はさっきからほとんど動いていない。


自分から攻めるタイプでは無いのか?


ハンマーは連続攻撃には向いていない。


一撃をかわされると、隙ができてしまう。


とはいえ、相手は武器を持っていないのでリーチは圧倒的にこちらに部がある。


ハンマーを構えたまま、ゆっくりと近づいて行く。


真っ赤な目はしっかり僕を捉えているが…間合いを詰めようとはしてこない。


距離が近づくにつれ、ゾンビの腕がやや上がってきている。


構えている…と、いうより、これは…狙っているな。


ハンマーが届く間合いに入ったので、こちらから仕掛ける。


すると、攻撃に合わせてゾンビは頭をガードしハンマーを掴むように手を広げる。


だが、しかし…それはゾンビの浅知恵だ。


僕は頭を狙うと見せかけ、ハンマーで足払いを仕掛ける。


ゾンビを転倒させ、そのままの勢いで1回転。


起き上がろうとしているところにフルスイングの一撃を決め、頭部を破壊した。


ふ~・・・!?


突然、何かが後ろから覆い被さってきた!


うつ伏せに倒れ、ヘルメットが地面に激突する。


「ウガァアァァァァ!」


しまった…気づかないウチに背後から新手のゾンビが襲いかかってきていたのか!


とにかく脱出しなければと動こうとするが、上に乗ったゾンビは容赦無く僕の頭部を殴り続ける。


衝撃でシールドがひび割れ、体を動かそうにもゾンビの重さが想像以上で身動きがとれない!


「っこの!ワタルから離れろ!」


父さんの声と共に、スコップで殴りつける音が聞こえた。


鈍い金属音とびちゃびちゃと血が飛び散る音が鳴り続けた。


やがて、ゾンビは動かなくなり僕はどうにか一命をとりとめた。


父さんは動かなくなったゾンビを僕の上からどかし「大丈夫か!?」と、手を差しのべる。


返り血で汚れ、七三分けの髪も乱れてしまっている父さん…僕は父さんの手を掴み起きあがった。


見ると、父さんが倒したゾンビは豊満な中年女性。


体重差がそこまであるようには思えないが、背後から押し倒されてしまうとどうしようもない。


ヘルメットを素手で殴り続けたから、ゾンビの指は折れて変な方向を向いている。


隠れて襲ってきたり、武器を掴もうとしたり…このゾンビは気づかれないよう背後から強襲してきた。


生前の記憶や経験等からゾンビの行動も変化するのかも知れない。映画等のゾンビよりも、かなり厄介だ。


「ありがとう、助かったよ。さぁ、速く車に戻って」


礼を言いながら辺りを見渡し、他にゾンビがいない事を確認し速やかに移動を再開。


父さんがいなかったら、多分…死んでいたな。


恐ろしい目にあったが、1つ分かった事がある。


僕がどうにかできるのは3体まで…それ以上の場合は戦うという選択肢はNGだ。


それからはゾンビに遭遇することは無く、ようやく街外れにある隠れ家にたどり着いた。

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