表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/53

四章 “エージェント”4

 チェチェが来る前に、夕食が届けられた。今夜だけは、住人が食事の面倒を見てくれた。

 夕食は、魚とキャッサバと鳥の肉をまとめて鍋で煮込んだものだった。我々にすれば、久々に口にするまともな料理だ。スパイスの香りのついた白い湯気に鼻孔をくすぐられ、食欲が獣のように変貌した。

 薄茶のスープに、白身の魚が丸ごと放り込まれていた。私は鍋からそれをすくい、食べてみた。湖の魚なのか、我々が川で食べていた魚より淡白な風味だった。キャッサバは初めてだが、甘味があって馴染めやすい。鳥のスープとよく合う。食生活に関しては、みんなと仲良くやっていけそうだった。

 夕食を運んで来てくれたのは、イタリの子供のグジだった。彼は十歳くらいで、私やマイケルと談笑のひとつでもしたかったらしいが、我々は食べることに熱中しすぎていた。鍋はどうだ、森で暮らしたことはあるか、釣りはできるか。グジの質問に、我々は最小限の言葉で答えた。すごく美味い、故郷は山林だった、釣りで生き延びた。やがて彼は、犬のように鍋をかきこむ我々に呆れて、家に帰ってしまった。

 鍋は瞬く間に空になった。底には魚の小骨が数本張り付いているだけで、スープの一滴も残されていなかった。

「コミューンの人たちが、満足したかって聞いているよ」

 マイケルは床に肩肘を突いて、お腹をさすった。私も満腹で息をするのも苦しい。

 夕食は、私とマイケルの二人だけで摂った。特別な歓待はないが、彼らも自分たちの家で同じ料理を食べているのだろう。気配があれば、席を共にしようがしまいが関係ない。

「おれは満足だ。おまえは、どうだ? ずいぶん多くのコミューンに立ち寄ったけど、いまの料理は三本指に入る」

「私も生き返ったよ」

 マイケルは、珍しく声を出して笑った。

 私は蓋の欠けた陶器からお茶を注ぎ、一口飲むと床に寝転んだ。

〈いまからお邪魔するよ〉

 チェチェの声がした。

 私はマイケルと顔を見合わせた。一体どんな答えが待っているのか。寛いでいた神経に、緊張が走った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ