四章 “エージェント”4
チェチェが来る前に、夕食が届けられた。今夜だけは、住人が食事の面倒を見てくれた。
夕食は、魚とキャッサバと鳥の肉をまとめて鍋で煮込んだものだった。我々にすれば、久々に口にするまともな料理だ。スパイスの香りのついた白い湯気に鼻孔をくすぐられ、食欲が獣のように変貌した。
薄茶のスープに、白身の魚が丸ごと放り込まれていた。私は鍋からそれをすくい、食べてみた。湖の魚なのか、我々が川で食べていた魚より淡白な風味だった。キャッサバは初めてだが、甘味があって馴染めやすい。鳥のスープとよく合う。食生活に関しては、みんなと仲良くやっていけそうだった。
夕食を運んで来てくれたのは、イタリの子供のグジだった。彼は十歳くらいで、私やマイケルと談笑のひとつでもしたかったらしいが、我々は食べることに熱中しすぎていた。鍋はどうだ、森で暮らしたことはあるか、釣りはできるか。グジの質問に、我々は最小限の言葉で答えた。すごく美味い、故郷は山林だった、釣りで生き延びた。やがて彼は、犬のように鍋をかきこむ我々に呆れて、家に帰ってしまった。
鍋は瞬く間に空になった。底には魚の小骨が数本張り付いているだけで、スープの一滴も残されていなかった。
「コミューンの人たちが、満足したかって聞いているよ」
マイケルは床に肩肘を突いて、お腹をさすった。私も満腹で息をするのも苦しい。
夕食は、私とマイケルの二人だけで摂った。特別な歓待はないが、彼らも自分たちの家で同じ料理を食べているのだろう。気配があれば、席を共にしようがしまいが関係ない。
「おれは満足だ。おまえは、どうだ? ずいぶん多くのコミューンに立ち寄ったけど、いまの料理は三本指に入る」
「私も生き返ったよ」
マイケルは、珍しく声を出して笑った。
私は蓋の欠けた陶器からお茶を注ぎ、一口飲むと床に寝転んだ。
〈いまからお邪魔するよ〉
チェチェの声がした。
私はマイケルと顔を見合わせた。一体どんな答えが待っているのか。寛いでいた神経に、緊張が走った。




