第二十二話 現地の妖怪との出会いです
三度目の原作キャラ登場です。読者様にとっては予想外の場所で予想通りのキャラが出ますよ。
「この調子だと洛陽まではあとどのくらいですか?」
「一日と半日程度ですぞ」
「そうですか。では、今日はここで野宿ですね。ノッポ、準備」
「うっす!」
呂布一行と行動を共にする事になってから、私達は中々良い調子で洛陽へ向かっていました。まあ、例によって二日に一回の頻度で賊に出くわしましたが、その時は呂布が文字通り薙ぎ払っていましたね。うん? 私ですか? 適当に私の方に来た賊は受け流しの要領で投げ飛ばしてました。いや、妖力を使わずに戦うとなると、技がより大事になってくるんですよね。とは言っても、鬼としての怪力が使えない訳じゃないのでやはり力押しが主ですが。
「陳宮、お腹空いた」
「ねねも空きましたぞ! 鬼無殿、役割分担して食料を集めましょう」
「じゃあ、私が肉を調達してきますね。三人組は薪でも拾ってきて下さい」
「「「了解っす(だな!)」」」
「あの、ねね達は……」
「適当に食べれそうなものを採ってきて下さい。ある程度のものなら調理できますので」
今日はどういう肉に巡り合えるでしょうね? この前は熊でしたし、今日は猪が良いですね。臭味がありますが、味は良いんですよね。
というわけで、早速肉を探しに来たのですが、これが中々見つからないんですよね。以前なら能力を使ってサクッと見つけていたのですが、能力を封じ、妖力を使わない様にしている現状、見つけるのは非常に困難です。昨日は一時間掛かりました。
「にしても、本当にいませんね。これは兎で我慢しなければならないのでしょうか?」
兎も美味しいんですけどね……呂布があの大きさでは満足しないんですよね。困ったことに。いや、よく食べる事は良い事なんですけどね? ですが、流石にこの辺りの動物を全て喰らい尽くさんばかりの食欲はどうかと思う訳ですよ。私とて、動物が食いつくされるのを是としている訳ではないのですから。いや、むしろ私は食に関しては程々ですよ? 何事も共存が大切ですからね。人間然り、動物然りですよ。
「む、こっちに気配が……」
動物とも人間とも違う気配なんですけどね。どちらかというと私達っぽい気配なんですが……うん、覗いてみましょう。好奇心には勝てませんよ。
「さて、何が出るかなっと」
ガサガサと藪を漁ってみると、何やら柔らかいものを掴みました。質感は……人肌?
「まあいいです。それっ」
引っ張ってみると、人の足が出てきました。
……いや、何で?
「行き倒れですかね?」
とりあえず、更に引っ張ってその人物の全貌を明らかにしてみました。何やら緑っぽい謎な服装をした紅髪の女性ですね。帽子に付いた『龍』の文字が印象的です。
「み、水……」
「……うーん。ここで見捨てるのも何かあれなんですけど、私達にも食糧問題がありますからね」
私にとっては食料の方が大切ですし。
「そ、そんな殺生な~」
「私に見つけられたのが運の尽きというやつです。まあ、お酒ぐらいならありますが、飲みます?」
「それをください!」
さっきまでぐったりしていたのがウソみたいに跳ねあがり、私の瓢箪を奪うやすぐにゴクゴク飲み始めました。そんなに一気に飲むと死にますよ? そのお酒、結構度数高いんですから。というか、何気に瓢箪を持ち上げてお酒を飲んでますね。地味に初めての事ですよ。まあ、この瓢箪を持ち上げられて人にはお酒を飲まさせても良いと決めているので問題はないんですけど。
「ぷは~! いやー、助かりました! ありがとうございます」
「お酒で良いのならいくらでも提供しますよ。まあ、作っているのは私ではなく酒虫ちゃんですがね」
「酒虫? 鬼のお供と言われているアレですか?」
怪訝な表情でそう聞いてきました。
「いや、私こう見えても鬼ですよ。今は訳あって角を圧し折ってますけどね」
「へ、へしおっ……また何でそんな事を?」
「ちょっと訳ありです。あまり妖力を使いたくなくて……。そういえば、あなたには能力ってあります?」
「ありますよ。【気を使う程度の能力】というのが」
「気を使うですか? また何とも生きづらそうな能力ですね」
「いやいや! そっちの気じゃなくて、生命の神秘の方の『気』ですよ?」
生命の神秘? 何ですかそれ。
「分からないって顔していますね。んー、例えば、妖怪は妖力、もしくは妖気ともいいますね」
「妖気は知りませんが、妖力は知ってますよ」
日常的に使ってますしね。
「似たようなものですよ。それで、妖怪には妖力、人間には霊力、神様には神力というものがあります。そして、そんな生命の力を使うのが私の能力ですよ」
「あれ、それってかなり意味の無い能力ですよね? 妖怪なら普通に妖力を使えて当たり前なんですから」
「あ、その事について説明していませんでしたね。『気』というものは生命の神秘と言いましたが、アレは人間限定の力なんですよ。妖怪は妖力を持っていて当たり前ですよね? それと同じで、人間は大なり小なり、『気』を持っていて当たり前なんですよ」
「ふむ、確かに人間は誰しも霊力を持っている訳ではありませんからね」
「そういう事です。つまり私は妖力と気の両方を使うことが出来るんですよ」
ドヤァという擬音が付きそうな顔で何言ってるんですかこの人。いや、純粋にすごいですけどね。
「し・か・も! 私の能力はまだ使い方が」
「あ、そういえば私の能力の事をまだ言っていませんでしたね。私は【心を操る程度の能力】です。今は使えませんけど」
「む、無視ですか。単純そうで複雑な能力ですが、使えないとは一体何事ですか?」
「角を折ったと言ったじゃないですか。あれが無いと私は能力が使えないんですよ」
「え、そんな安定性の欠片もない能力があるんですね」
「まあ、私の連れの意見だと、本来はもっと別の能力があるんじゃないかと言っていますが、なんやかんやでズルズル引っ張ってきて早千年ぐらいです」
随分とあの日の決意からズルズル引き延ばしたものですね。まあ、分からなくても別段困らなかったというのもあるのですが。というか、それしかないのですがね。
「千年!? また随分と長生きなんですね……」
「そうですか? 確かに今の人間が生まれる前から生きていますけど……」
「ア、アハハ……(今の?)」
思えば、随分生きたものですね。まあ、その約千年もの間何やってたのかと言われれば、あっちに行ったりこっちに行ったりでフラフラしていただけなんですけどね。
「あ」
そういえば、私ってば今夜の食事を獲りに来たんでしたよね。すっかり忘れちゃってましたよ。えっと、太陽の傾きからして……あ、その肝心の太陽もありませんね。ははは、やべぇ。
「すみません。私、今日の晩御飯を獲ってくる最中でした」
「あ、そういえばそうでしたね。すみません、引きとめてしまって」
「いえいえ、お蔭で有意義な話しが聞けました。あ、よろしければ一緒に食べます? 一緒に食料を探してくれるならですけど」
「え、いいんですか? いやぁ、最近人と何か食べるという事をしてなかったので喜んで!」
「いや、基本的に妖怪は人と一緒の席に着かないでしょうに」
「いえいえ、私達は姿形は人間と変わらないのですから偶には触れ合うのも良いものですよ?」
ふむ、人間と共存するという考えですか。まあ、否定はしませんけど、私はどうでもいいですかね。私、人間とは不干渉を貫くので。関わっても碌なことが無いのは昔に学びましたからね。
「それよりも、早く食料を見つけに行きましょう。流石に待たせ過ぎました」
「遅い」
「いやぁ、すみませんでした。この人と……あ、そういえば自己紹介がまだでしたね。私は鬼無心と申します。鬼無とも心ともどちらで呼んでもらっても構いません」
「あ、私は紅美鈴です。気軽に美鈴と呼んで下さい」
私って何故か初対面の人との自己紹介が遅れますよね。よくないですけど、それよりも相手の能力とかに興味がいってしまうのだから仕方ないですね。
「遅い」
「いたっ、ちょ、石突きで殴らないでくださいよ。ほら、遅れてしまった分頑張って猪捕まえてきたんですから」
それも二匹も。といっても、私と美鈴で一匹ずつですけど。
「なら早く食べましょうぜ。俺達もう腹が減って―――」
「何を言っているのですか。それなら早く火を起こしなさい」
「へ、へい!」
食べたいのなら働く、コレ常識。うん? 呂布と陳宮? 彼女等は食べるのが仕事です。
「随分とこき使ってますね?」
「洛陽までの関係ですが、まあ、私の下僕の様なものですね」
「そういえば、何故あのように付き従っているのですか? まあ、大体は想像できますが……」
ノッポ達が火を焚くのを見ていたら、美鈴と陳宮が話しかけてきました。
「荒野で考え事していましたら、身ぐるみを剥がれそうになったので少し『お願い』をしたら勝手にああなっていました」
「お願い……意味深な言葉ですね」
「嗚呼、ねねの予想道理だったのです」
「ご飯まだ?」
呂布よ、そんなにあわてなくてもご飯は逃げません。今日は私の分もあげますからもう少し我慢して下さい。
「旦那! 火が焚けました!」
「ん、分かりました」
猪の皮を剥ぎ取る作業は帰り道に歩きながらやっていたのでもう終わっています。やってくれたのは美鈴です。「食事を一緒させて貰うのですから、このくらいは」と自分から率先してやってくれました。良い人です。今後とも良い付き合いでいたいですね。
解体は私がやります。ノッポが都合よく持っていた小刀でスパスパと手際よく食べられる部分の肉を剥いで、途中で見つけた大きい葉の上に乗せていきます。昔は石で、もしくは手の爪で切っていましたが、この小刀で切るのは結構楽です。切れ味は私の爪の方が良いのですが、アレは手が汚れてしまいますしね。
「はい、出来ました。早速焼きますね」
今日の比率は呂布が五で、陳宮が一、ノッポ達が合計三で美鈴が一ですね。私はお酒です。
「そういえば、美鈴は【真名】とかあるのですか?」
「ありませんよ。アレは人間だけの文化ですから」
横で私と一緒に肉を焼くのを手伝ってくれている美鈴に聞いてみましたが、どうやらアレは人間だけの文化だそうです。まあ、妖怪にまで浸透していたら色々めんどくさかったので都合が良いと言えば良いですね。ほら、万が一にも間違えて呼んでしまった場合、人間なら対処できますが、妖怪相手だとどうしようもありません。対処が殺し合いになってしまいます。そんな面倒な事はお断りです。
「あれって色々ややこしいですよね。間違えて呼んでしまう人とか絶対にいますよ」
「文化の違いというもので、そこは感覚で分かるらしいですよ? 私はちょっと分かりづらいんですけどね」
そう言うものなんですかね。まあ、確かに人間同士でしか分からない暗黙の了解の様なものがあるのかもしれませんね。……あ、そういえば
「話変わりますけど、美鈴は私達の事遠くから見てました? 以前ですが、妖怪の気配を感じたのですが」
「ああー、そんな気がします。いや、私も意識して見た訳じゃないんですが、あっちに妖怪がいるなぁ、と気になって見に行ったら予想以上に早く気付かれちゃったので身を引いたんですよ」
「そう言う事でしたか。ですが、もし私と呂布が好戦的な性格だったら色々面倒な事になってましたよ?」
「あはは……気を付けます」
幸いな事に呂布も私も好戦的ではないのでそのまま無視していきましたけどね。私の場合は一度火が付くと鬼の性なのか、好戦的というか戦闘狂が入ってしまったりするんですけどね。滅多にはいらないというか、約千年生きている中でそうなってしまったのは一回だけなんですけどね。しかも、それが白亜とお酒を取り合ったのが原因という今思えば至極どうでもいい内容になっています。
「お、そうこうしているうちに焼けましたね。美鈴、ちょっと皆を呼んできてもらえます? 私はここで肉の管理をしているので」
「わかりました!」
……ふむ、ああいう人が旅の道連れになってくれると色々と便利ですね。ま、白亜だけで私は一向に構わないんですけど。
~呂布~
「へえ、鬼無さんはそこで旅をしていたんですか?」
「ええ。といっても、ちょっと今は問題があって旅はお預けですけどね」
美鈴に呼ばれて鬼無の下に戻った私達は夕食を迎えた。今回は美鈴がいるという普段とは違う所があるが特に問題もなく食は進んでいく。……いくのだが
「美鈴殿と鬼無殿、仲が良さそうですね」
「そりゃあ、同じ妖怪ですし、俺達にゃ言えない事とか話せるからじゃねぇですか?」
「確かに話しやすそうっす」
そう、普段は私達と一緒に雑談やこの三人組をからかったりしながら食べているのだが、今日は違う。鬼無は美鈴と対面で座り、楽しげに話していた。
「……」
「恋殿? 手が止まっておられますが、どうかしたのですか?」
「別に……」
焚火の向こうにいる鬼無と美鈴。焚火を挟んで座っている私達。妖怪と人間、その線引きがされている様な構図だ。
……面白くない。
「ん? どうかしましたか?」
「おかわり」
「あーはいはい。ちょっと待ってて下さいね」
私がジッと見ていた事に気付かれた。咄嗟に手元の肉が無くなっていた事に気付き、おかわりが欲しいと伝えたが、これでもし手元に肉があったらどうなっていたのか分からない。
話している途中にも関わらず、席を立ち生肉が積み重なれている場所へ移動し肉を焼き始める鬼無。美鈴は、それを特に気にした様子もなく、鬼無から貰った酒をチビチビ飲んでいる。傍から見なくても、お互いに自然体であることが良く分かった。
出会ってからの時間は私の方が長いのに、今の二人を見ているとまるで何十年も連れ添った仲に見えてしまう。
……面白くない。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
「いえいえ」
鬼無との出会い。なんてことはない、ただ私がお腹が空いて木にもたれていたらポカポカと陽気が気持ち良くて寝ていたところを見つられただけだ。
だけど、その時言われた言葉は今でも頭に残っている。
『とても、綺麗ですね』
今までにも『可愛い』とか『美人』とか言われた事はある。旅をしている時に寄った村とかでもよく言われた。主に食事処で。
でも、鬼無に言われたほど心に響く事はなかった。言われたら嬉しい。けど、それだけ。それはきっと、その人達は私の外面だけを見ていったから。それがいけない訳じゃない。むしろ、外面を褒められれば嬉しい。だけど、あの時。鬼無はきっと私の『内面』だけを見て綺麗だと言ったと思う。いや、『思う』じゃない。言ったんだ、鬼無は。
それが今でも頭に残っている理由。初対面なのに、私の内面、つまり『心』が綺麗だと言われた。飾り気の無い言葉だからこそ更に心に響いた。そして、今まで言われた『可愛い』よりも、何倍も、ずっと嬉しかった。
あの時から、自然と鬼無の事を見ていることが増えたと思う。単純に何故初対面なのにそんなことが言えたのか気になるのが半分。もう半分は……分からない。
「あれ? 呂布、今日はやけに食べる量が少ないですね? 具合でも悪いんですか?」
鬼無と出会った時の事を考えていたら、いつの間にか本人が目の前にいた。後ろを見れば、美鈴は酔いつぶれた様に真っ赤な顔をして寝息をたてていた。飲み比べでもしたのだろうか。
「呂布?」
……そういえば、私は鬼無に真名を教えていない。今まで気付かずに過ごしてきたが、今は何故か真名で呼ばれない胸が少しモヤモヤする。何なのだろう、これは。
「あれれ、これはまさか本当に食あたり? おかしいですねぇ、今までと違って割と衛生面には気を使っていたのですが……」
「……違う」
「お、やっと反応してくれましたね。で、呂布よ、元気が無いようですが、どうかしたのですか?」
「……恋」
「はい?」
「恋の真名」
「えっと、教えてくれるんですか?」
「うん」
「……ありがとうございます。これからもよろしくお願いしますね、恋」
初めて呼ばれた真名は、心地よく耳に響いた。
という訳で紅美鈴の登場と呂布の心情です。
フラグ建設早すぎィとは思いますが、純粋に内面だけを見ての言葉はそれだけ心に響くということでここは一つ。




