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東方心操録  作者: ハヤテ
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第十五話 禍転じて災いと為す

そろそろタイトルに限界が来たと感じ始めた今日この頃。




「おーい、巫女さーん。お客さんだからお茶と茶請け持ってきてー」

「ただいま……も、物の怪!?」


 糞神……この言い方はもう止めましょうか。神様の案内のもと、遂に私達はこの神様の神社へと到着しました。道中は、流石神様の案内と言うべきか、ミジャクジどころか動物すらも出てきませんでした。今日の晩御飯の不安が煽られます。


 さて、着いて早速茶の間へと通された私達は、座って何やら巫女さんとワイワイガヤガヤと騒いでいる神様を座って待っています。ってか、まさか神社にてこんな家庭的な会話を聞けるとは思ってもみなかったです。


「お待たせ。ちょっと巫女さんが怖がっちゃってね」

「……それが普通の反応」


 人間にどれだけでかい期待をしているのでしょう。普通の人間は私達の姿を見ただけで逃げだすなり失禁するなりしますよ。

 因みに、異常な人間とは卑弥呼の様な存在です。妖怪を見て特に怖がるそぶりを見せないどころか、逆に頼み事とは中々に肝が据わっているとは思いませんか?


「で、話とはなんですか?」

「ああうん、単刀直入に聞くけどさ、あなた達って【旧世代の物の怪】でしょ?」


 ……また出たよ。「【旧世代の物の怪】でしょ?」なんて言われても私達からしてみれば意味が分からないんですよね。私達は単純に長い間旅をしていただけであって、そんなある日【旧世代】とか言われても具体的にいつ頃が【旧世代】に当てはまるのかチンプンカンプンなんですよ。まあ、その疑問は卑弥呼のところで既に解消しているから良いんですけどね。


「本当はさ、あなた達は分霊で潰すつもりだったんだ」

「わお」

「……でんじゃらーす」


 でんじゃらす? 偶に白亜は訳の分からない事を言いますね。本人もどういう意味かよく分かっていないようですけど。

 てか、分霊で私達は潰される予定だったのですか。危なかった、お酒を犠牲にした甲斐はありましたね。


「でも、私の予想とは大きく変わって、一撃で分霊が消されちゃったじゃん? 確かに耐久力は低いけど、それでも並みの妖怪では歯が立たないんだよ」

「あー……つまり?」

「いくらなんでも強過ぎるでしょう? ってこと。で、気になった私は分霊をもう一つあなた達に当てた。結果はさっきの通り、前の分霊を倒した時の比ではなかったよ。文字通り、消滅させられちゃった。この結果から私は『普通の物の怪じゃない』って思ったの。そして、辿り着いた答えが」

「……【旧世代の物の怪】」

「うん」


 今の話から鑑みるに、どうやら【旧世代の】というのは今の時代からしてみるとかなりの力を持った存在らしいですね。まあ、あの時代の人間とこの時代の人間を比べれば自ずと分かりますけどね。妖怪も然り、ということですか。


「実際、今の物の怪はあなた達みたいに品が無いというか、見境ないんだよね。あ、これは分霊が言ってたっけ?」

「言ってましたね。やれ馬鹿だ間抜けだ大うつけだと、それはそれはこの世のあらゆる罵倒で今の妖怪―――時代に合わせるなら物の怪ですか―――を語ってましたね」

「私の分霊そんなことしてたの!?」


 半分は嘘ですけどね。まあ、馬鹿にしていた事は確かですけど。


「私達は基本的に見敵必殺を地で行っているので最近の物の怪がどういう感じか人間の知識からしか知らないのですが、そんなに頭が弱いのですか?」

「まあね。人を見たらとりあえず襲ってくるよ。それも実力差を考えずに」

「へえ、昔も知性が無い妖怪はいましたが、流石に実力差ぐらいは測れてましたよね」

「……だから、ココロの山には妖怪が一匹もいなかった」


 そこ、五月蠅い。過去の過ちをほじくり返すな。今では反省しているんです。流石に食べ過ぎたな、と。ですが、仕方なかったんです。食欲には勝てなかったのです。あと、予想以上に熊が美味し過ぎたのです。


「ま、私としてもあなた達は敵に回したくないってこと」

「お互い無傷ではすまなさそうですからね。ところで、白亜の能力が正常に作用しないのですが、どういうことでしょう?」

「……返答次第では乱闘も辞さない」


 ヤル気満々の白亜さんでした。


「単純に私の能力はあなたの上位互換ってだけだよ。今ならちゃんと使えると思うけど、どう?」

「……できた」


 言った傍から白亜は直ぐに自らの能力を行使していた。能力は白亜の思い通りに作動したようで、ふよふよと石の蛙の置物を浮かせていました。


「あ、そうだ。今更だけど、まだお互い自己紹介してないよね。しとく?」

「まあ、神様と関係が持てる機会なんて滅多にありませんからね。鬼無心です。種族は鬼。鬼無とも、心とも好きな方で呼んで下さい」

「……白木白亜。……右に同じ」

「鬼無に白亜ね。私は洩矢もりや諏訪子すわこ。土着神の頂点、ここら一帯の神だよ」

「お互い長寿ですから、末長くよろしくお願いします」

「……よろしく」

「よろしくね。ま、困った事があったら頼ってきて良いよ。その時の気分次第で助けてあげない事もないから」

「あ、じゃあ早速一つあるのですが」

「早っ!」


 頼れと言ったのが悪いのです。言った『時』も悪いのです。ちょっと厄介事を現在進行形で抱えている私達にそれを言うとはいい度胸ですね。

 という訳で、卑弥呼の願い事を諏訪子様に話してみます。ん? 大和? 別にあそこで調達しなくても良いんですよ? 要は手に入れば良いのです。


「かくかくしかじか」

「……四角いキューブ」

「きゅーぶ? 何それ」

「白亜の言うことは一々気にしちゃだめですよ。本人もどういう意味か分かっていないのですから」

「……失礼な、私はただ思い浮かんだ事を言っているだけ」

「意味分かってないじゃないですか」

「……むぅ」


 むぅ、じゃないし。なに論破された感を出しているのですか。何一つ論破してませんよ。てか、論じてすらいませんよ。


「なんか……変わってるね、君達」

「私達にとってはこれが『普通』です。なにせ、長い付き合いですから」


 変わった関係も長い事続ければそれは普通になる。まあ、妖怪だからこそですね。人間でそれをするには、決して短くない歴史を紡がねばなりません。


「まあいいや。で、その卑弥呼って確かあの【鬼道の】だよね?」

「ええ、そうですよ」


 神様……諏訪子様にまで知り渡っているとは、卑弥呼って何気に有名人ですね。確かに、この時代においては稀有な存在ですけど。まあ、昔に会った人間はあれ以上のがいましたけどね。


「人間の確保だっけ?」

「はい、乞食で、そこそこ才能がある人っています?」

「ミジャクジの統治する範囲内でなら探せるけどさ……都合が良過ぎだとは思わない? そういう能力が高い人って大抵良い豪族の子供だよ?」

「ですよねー。ですが、それでも用意しないと困るんですよ」


 私達が、ではなく、卑弥呼が、ですけど。


「うーん、探せない事もないよ? 一週間掛かるけど、たぶん」

「……どっちのたぶん?」

「両方だよ。……というか、今初めて白亜とは会話が成立したよね?」

「……謀ったな」

「何が!?」


 しかし、うーん、一週間ですか。ここに来るまでに既に一週間消費しているので出来れば少し早めにしてほしいのですが……ま、贅沢はいけませんね。卑弥呼には申し訳ありませんが、しばらく待ってもらいましょう。何、不老になったのです。たかが一二週間ぐらい待つのは容易いでしょう。……たぶん。


「……だが、時間が掛かり過ぎる。……もう少し短くならないか?」

「無茶言っちゃいけないよ。ただでさえそんな都合のいい人間を探そうっていうんだ。これ以上都合のいい話は重ねられないよ。それとも何? 探し出せるかもっていう話だけじゃ満足できない?」

「……人を待たせている」

「まあ、待たせているのは確かですが、それでも私達が探すよりマシってモンでしょう? 私達の場合、見つけ出せるかどうかも分からないんですよ?」

「そうそう。君達が探すよりも私が探した方が確実だよ?」

「……分かった」


 白亜は生粋の鬼ですからね。なんやかんやで卑弥呼との約束を大切にしたいのでしょう。できるだけ早くとのことでしたしね。確実に二週間は使うので、早いとは……ん? 良く考えたらこの大陸を飛び回って人探しするんですから、むしろ二週間って早くね? 普通は一カ月ぐらい掛かる事ね?


「うん、そう考えるとたかが一週間ぐらい良い気がしてきた」

「……どういうこと?」

「私達が被る労力を考えると、一週間ぐらいどうってことないってことですよ」

「……確かに」

「結局どうするのさ。待つの?」

「ええ、待たせていただきます。その間、私達はどうしましょう?」

「ここに入れば良いよ。変なことしなければね。あ、だけど本殿には入らないでね。流石に妖怪に入られるのは不味いから」


 入るなと言われれば入りたくなるのが鬼、もとい私の性。まあ、流石に空気ぐらい読みますけどね。入ってボコボコニされるとかマジ勘弁。白亜もその辺分かってますよね? うん? 何? 興味が尽きない? 一回真面目にお話ししようか?


「ここにいる間は大人しくしててよ? まあ、あなた達が暴れるとは思わないけど」

「暴れたら痛い目見るのは分かってますから。ね?」

「……興味が尽きない。……あ」

「……」

「……」

「……ま、間違えた。痛いのは嫌だが、本殿に興味が尽きない。……ね?」

「……私、人の趣味趣向にはとやかくいうつもりないんだけどさ、鬼無、あなた旅の仲間間違えたんじゃない?」

「い、いやいや。大丈夫です。これでも数百年一緒にいた仲ですから。白亜がどんな趣味を持っていても私は受け入れられます……よ?」


 何事も受け入れる心。それが大切なことだと思うんです。特に、精神的に弱い妖怪にとって、受け入れられない事は即ち死に繋がります。

 で、ですから、私は例え白亜が、その……ひ、被虐願望があったとしても、私は受け入れたいと思うんです。例えそれが毒だとしても。うん。


「待って! ホント、ホントに私、そんな趣味ない!」

「「分かってる分かってる(慈愛の笑み)」」

「~~~~っ!!」


 おお、白亜が珍しく取り乱してらっしゃる。慌てた顔が可愛いですね。どこかに形として残しておきたいものですが、できないので私の脳に焼き付けておきましょう。それはもう、鮮明に鮮烈に。


「じゃあ、私は早速探しに行くよ。ここ最近暇だったから良い暇つぶしができた」

「では、私も諏訪子さまの巫女さんに料理でも教わってきましょうかね。最近の料理とやらにも興味があります」

「旧世代の方が何かと優れてるんだけど……ま、興味があるならいっか。白亜は……そうだね、うちの巫女さん達、貸す?」

「いらないっ!」







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