第63話 ゴブリンの巣穴
挿絵あり
高級キノコの採取を行い、パラライザさんに再び確認してもらった。
大きめのキノコを集めたし、傘の裏のひだに紫色の筋がないものを厳選して選んだ。
生えているキノコは、もうほとんどない。
採りつくしてしまった。
いえ、正確には高級キノコがないと言っていい。
生えているのは小さい物だったり、毒キノコと判断されたものばかりだ。
何とか必要数量に達してと願いながら見守っていた。
「はい、数はこれで足ります」
パラライザさんの言葉に、安堵の溜め息が漏れた。
「やったわね、ニット君」
手を差し出すと、ニット君は私の手に小さな手を重ねてハイタッチして来てくれた。
「では、この高級キノコは私が受け取っておきますね。これにて納品完了です。お疲れさまでした」
大型の背負い鞄の中に丁寧に高級キノコ二籠分を仕舞いながら、パラライザさんは言った。
「これで、お仕事終わりなの?」
「いいえ、まだよ」
やり切ったと言わんばかりの様子のニット君に、私は釘を刺す。
「そうです。この森の中に先ほどの小鬼の残党がいるかもしれません。残党の掃討と安全確認をお願いします」
たくさんの荷物が詰め込まれている大型の背負い鞄をパラライザさんは軽々と背負った。
私達の採取した高級キノコを入れたことで荷物がパンパンに膨れていた。
「こっちも処理が終わったから、見回りに行くかねぇ~」
私とニット君が退治した小鬼の処理を終えたようで、セレスさんが歩み寄ってきていた。
小鬼の死体は、セレスさんの炎の魔法で焼却処分され、マックスさんが土をかけて後処理を行っていた。
「小鬼がいないか確認すれば、いいんですね?」
「はい、そうです。もしも小鬼がいた場合には討伐をお願いします」
「もしも……ですけれど、単眼の巨人なんかがいた場合はどうするんですか?」
もしもの場合のことを私は尋ねてみた。
「単眼の巨人がいた場合には、あなた方二人は逃げてもらって構いません」
その二人とは、私とニット君のことだ。
パラライザさんの視線が私とニット君に向けられていた。
「それ以外の場合は、その時に私が判断します。倒せる見込みがあればお願いしますし、明らかに無理と判断したら、みんなで逃げ出すだけです」
みんなで逃げ出すってことは、セレスさんとマックスさんではどうにもできないような魔物が出た場合ってことよね。
どんな魔物なのか気にはなったけれど、単眼の巨人よりも恐ろしい魔物なんかとは遭遇したくはないので、聞くのはやめた。
「まあ、いたとしても、もともとこの森を住処としていたっていう小鬼か、それに付随する魔物だろうからねぇ~」
「俺らの相手には、ならんだろうな」
セレスさんもマックスさんも自分の実力に自信があるようだった。
私もそんな風になりたいとは思うけれど、今の実力ではいつになるのかはわからない。
地道に努力するしかない。
「では、あまり時間もありませんので、確認作業に移りましょう」
パラライザさんは先頭を切って歩き出す。
「そうだねぇ~」
後に続いてセレスさんとマックスさんも歩き出す。
「ニット君。注意深く周りを確認してね」
私は、きょろきょろと周囲を注意深く見渡す。
「うん」
緊張した面持ちでニット君は頷いた。
森の中は小鳥のさえずりが響き渡り、魔物が跳梁跋扈しているような気配も感じられない。
パラライザさんもセレスさんもマックスさんも警戒した様子はない。
ずんずんと森の中を突き進んでいく。
私は、いつでも魔物が出てきても対応できるようにと緊張しっぱなしだった。
周囲をきょろきょろして、視線を目まぐるしく巡らせていた。
魔物がいるのなら早く出てきてという思うと、やっぱり出てきてほしくないという思いが心の中でせめぎ合いをしていた。
魔物がいないに越したことはない。
いなければ危険はない。
早々にこの探索は終了となり、街への帰路へと繋がる。
「もともと、この森に小鬼どもが生息していたってことは、どこかに巣穴があるはずだよな?」
「そうだねぇ~。その巣穴の当てはあるのかい?」
「残念ながら、巣穴は見つけられていません。なので、他にも潜んでいると思った方が良いと思います」
足を止めずにパラライザさんは進んでいく。
まだ小鬼がいるのであれば、どこから襲ってくるかわからない。
私は、さらに緊張してきてしまった。
「あれ?ニット君?」
周囲に気を配っていた私は、ニット君がそばにいないことに気が付いた。
声を上げると少し遅れた場所で立ち止まって何かをしていた。
「ニット君、何しているの?」
声を掛けると「アテナ様、大きいキノコ見つけたよ」とキノコを木の根元からむしり取っていた。
先ほど私たちが採取した高級キノコの傘は、大きなものでも私の掌よりも少し小さめなものだったけれど、ニット君が手にしていたキノコはその倍くらいの大きさがあった。
とんでもない特大のキノコだった。
それを見つけて、ニット君は気になってしまい、採取をしていたようだった。
はぐれてしまう可能性もあるのに、この子は何をしているのかしら?
仕方のない子ね、と思いながらも、大きなキノコを嬉しそうに抱えているニット君は可愛らしかった。
「ニット君、そんなことしている場合じゃないでしょう?」
「でも、高級なキノコを食べてみたかったんだもん」
口を尖らせてニット君は言った。
確かにキノコは美味しそうだったけれど、採取したものは全て納品に回ってしまった。
残っているのは毒があるキノコばかりで味見もできなかったので、ニット君は見つけたこの大きなキノコが気になってしまったみたい。
「でも、ニット君。そのキノコ、毒キノコだと思うわよ」
ニット君が両手で抱えているキノコをまじまじと観察して私は指さした。
傘の裏側のひだに紫色の筋がいくつもあった。
毒キノコと判別する特徴がクッキリと見て取れた。
「あう!?毒キノコ?」
ニット君は手にしていたキノコを見詰め、ガッカリとしたように肩を落とした。
「食べられないんだね?」
「そうね、食べたらお腹壊しちゃうわよ」
「じゃあ、いらない」
ニット君は、ポイっと茂みの中へと大きなキノコを投げ捨てていた。
よほどガッカリしたようだった。
力いっぱいに投げていた。
「ギャフゥ」
キノコが消えていった茂みの中から、変な声が聞こえた。
「えっ?」
私とニット君は顔を見合わせてしまった。
嫌な予感がする。
私はとっさに腰に帯びていた『聖剣エクスカリバー』の柄に手をかけた。
一気に引き抜く。
いつでも行動できるように構えた。
ニット君も私につられて、鞘から『エアブレード』を引き抜いていた。
転瞬。
茂みの奥から、何かが飛び出してきた。
小さな子供だ。
いや、違う。
「小鬼」
私は声を上げた。
小さな子供と同じくらいの体格の魔物。
性悪そうな顔をした小鬼が、不愉快そうな顔をしながら私たちの方を睨んでいた。
もしかして、ニット君が投げ捨てた大きなキノコが当たったのかしら?
多分、そうかもしれない。
何だか怒っているような感じにも見えた。
さらに二匹が茂みから飛び出してきた。
「エアブレード」
ニット君は叫んで、小剣を横に振るった。
刀身に発生した風の膜が鋭い刃となって、小鬼へ向かって飛び出していく。
後から飛び出してきた二体の小鬼の身体を切り刻む。
ズタズタに全身を引き裂かれ、何が起きたのかわからないといった様子で息絶えた。
そんな状況を目の当たりにし、キノコが当たったと思われる小鬼は慌てふためきながらも手に持っていたこん棒を振り回しながら、私に向かって突進してきた。
私は、さっと身を翻して躱す。
躱してすれ違いざまに背中へと『聖剣エクスカリバー』を振り下ろした。
小鬼の背中から、どす黒い液体が飛び散った。
「ギギャアアア」
耳を覆いたくなるような不快な声を上げて、小鬼は血走った瞳で私を睨みつけてきた。
すれ違いざまの攻撃は、傷が浅かったみたい。
痛みに顔を歪めながらも、憤慨していた。
飛び上がって、こん棒を振り上げてきた。
「え~い」
気合とともに下から掬い上げるように、力いっぱい『聖剣エクスカリバー』を振り上げた。
飛び上がった小鬼の股下へと白銀に煌めく刃が飛んでいく。
右足の付け根から腹部を通り、胸元を引き裂いて左肩から刃が抜けていく。
小鬼の身体は二つになって、近場の木の幹に激突していた。
『聖剣エクスカリバー』の切れ味がなければ、ここまで綺麗に斬り裂くことはできないと思う。
飛び出してきた小鬼は、三体だけ。
ニット君がいきなりの先制攻撃で切り裂いた二体と今私が倒した一体の合計三体。
一息吐こうと思っていたところに、ニット君の声が飛んだ。
「アテナ様、まだいるよ」
振り返れば、同じ茂みからさらに二体の小鬼が現れた。
「まだいるの?」
現れた二体の小鬼は、ナイフを手にしていた。
そのうちの一匹は、ニット君に向かって襲い掛かっていた。
咄嗟に『エアブレード』を真正面に構えて飛び掛かって来た小鬼のナイフを風の壁が受け止める。
そして、小鬼ともども、はじき返した。
小鬼の腕力は弱い。
そのため、二~三歩よろめかせる程度だった
その小鬼は、意外と冷静だった。
慌てることなく、体勢を整えると、様子を窺う様にニット君のことを見ていた。
他の小鬼よりも多少の知恵があるのかもしれない。
もしくは、ただ臆病で警戒心が強いのかもしれないけれど、どちらかは判別できない。
ニット君も守りの姿勢を崩さない。
両者は睨み合っていた。
けれど、それでは一向に決着はつかない。
「うおおおおお」
先に動いたのはニット君だった。
大きな唸り声を上げながら、剣を真正面に構えたまま小鬼に向かって突っ込んでいく。
小鬼は、飛び上がって後退した。
追いすがるようにニット君は走り込む。
距離を詰め、真正面に構えていた剣を大きく振りかぶる。
そして、そのまま『エアブレード』を力任せに振り下ろした。
小鬼はナイフを頭上に掲げ上げて、『エアブレード』の刀身を受け止めていた。
「うりゃ、うりゃ、うりゃあああ」
受け止められたと見るや否や、ニット君は連続で剣を撃ち込んでいく。
小鬼はナイフで受け止め、防戦一方だった。
刃のない『エアブレード』は、小鬼の身体に当たっても致命傷になる傷を与えることはない。
切り裂くことが、できないからだ。
けれど、ニット君が切りたいと思った時、『エアブレード』の刀身は風の膜によって覆われる。
その膜は、『エアブレード』の刀身を鋭い刃へと変貌させる。
「こんにゃろ~」
上段から思いっきり『エアブレード』の刀身を振り下ろす。
小鬼は、手にしていたナイフで、それを受け止めようとした。
しかし、それができなかった。
『エアブレード』の刀身を覆う風の膜は鋭利な刃と化し、小鬼のお粗末なナイフを何事もなかったかのようにあっさりと両断した。
そのまま振り下ろされる死の刃。
小鬼の脳天から真っ二つに切り裂いた。
驚愕の表情とともに、二つになった小鬼の身体は物言わぬ肉塊となって倒れ伏した。
ニット君は自分の愛用する『エアブレード』のことを理解し、使いこなしているようだった。
彼は思った以上に賢い子だと思う。
そして、私が思う以上に勇敢な子だとも思う。
そんなニット君に負けないように私も残る一匹と戦っていた。
ナイフを振り回して斬りつけてくる小鬼の動きは単調だった。
身を翻して躱し、『聖剣エクスカリバー』の刀身で受け止め、猛攻を捌いた。
防戦一方では、いつか押し負けてしまう。
反撃しなくては。
大きく振りかぶって斬りつけてきたので、私は右へと大きく身体を投げ出していく。
それなりに距離を取り、態勢を整える。
小鬼は、振り返って再び襲い掛かろうとしていた。
その前に私は前へと足を踏み込む。
右手に握った『聖剣エクスカリバー』を最速で突き出す。
小鬼は慌てて身体を大きく傾けて、これを躱していた。
そのため、次に私が仕掛ける攻撃を視認するのが遅れたようだ。
もう一歩前に私は足を踏み込み、『聖剣エクスカリバー』の柄を両手で握った。
右から左へと横薙ぎに振るう。
小鬼はナイフで受け止めようとしたようだったけれど、私の動きの方が一瞬早かった。
『聖剣エクスカリバー』の白銀の煌めきが、小鬼の喉元を強襲した。
スパンと分かたれた小鬼の頭が宙を舞った。
どす黒い液体を撒き散らしながら、醜い顔が地面を嘗めた。
決着はついた。
私は周囲を見渡す。
他に小鬼の姿はない。
退治できたのかもしれない。
私は、緊張の糸が切れたように大きく息を吐いた。
「お嬢ちゃん、ボーヤ」
セレスさんたちが、私たちの方へと歩み寄ってくる。
「怪我はないかい?」
私たちの足元に転がる小鬼の死体を一瞥していた。
「はい、大丈夫です」
「僕も大丈夫」
私の足元でニット君が声を上げた。
「どこから、こいつらは現れたんだ?」
物言わぬ肉塊と化した小鬼の一体を足先で突きながらマックスさんが尋ねてきた。
「こっちだよ」とニット君は、小鬼たちが現れた茂みの方を指さしていた。
「んっ?おい、セレス。これって小鬼どもの巣穴の入り口だよな?」
茂みの先を覗き込んだマックスさんがセレスさんに向かって確認を求めていた。
「巣穴があるのかい?」
セレスさんもマックスさんが覗いている茂みを覗き込む。
「間違いなく、小鬼の巣穴の入り口だねぇ~」
「ありましたか?」
パラライザさんも茂みの中を覗き込んでいた。
私も気になって歩み寄ると、茂みの中を覗き込む。
木の根のそばに隠れるように大きな穴が空いていた。
地面を掘り返し、その出入り口部分が崩れないように石で囲って補強してあった。
これが小鬼の巣穴の入り口と知らなければ、ぱっと見ではわからない。
しかもうまい具合に穴の周りが茂みに覆われていて、これではなかなか発見できないと思う。
見つかりにくい場所に出入り口を作っているみたいだった。
その巣穴の入り口のそばにニット君が先ほど投げ捨てた大きなキノコが転がっていた。
「んっ?何でこんなでかいキノコが転がっているんだい?」
セレスさんは、不思議に思ったことだろう。
「それは……ニット君が採取したんですけれど、毒キノコだったので投げ捨てたんです。そしたら、その辺にいた小鬼に当たったみたいで……戦う羽目になったんですけれど……」
頬を掻きながら、どう説明していいのやらと思いながらも、ありのままを話した。
「運が良いというか、何というかだねぇ~」
「まあ、そのおかげでこうして巣穴を見つけられたんだ。お手柄じゃねぇか?」
セレスさんはやや呆れたような表情をしていたし、マックスさんは結果オーライといった様子だった。
「まだ……小鬼は、いるんでしょうか?」
息を呑み込みつつ、襲る襲る尋ねてみる。
「確認してみるか」
そう言って、マックスさんは手近にあった石を拾い上げた。
何をするのかと思ったら、おもむろにその石を小鬼の巣穴の中目掛けて放り投げていた。
二つ、三つと立て続けに投げこんで行く。
「あの~……いったい何を?」
何の意味があって石を投げ入れたのか理解できずに私は困惑していた。
「自分の家に石を投げこまれたら、お嬢ちゃんはどうするんだい?」
唐突にそう問われ、頭の中に?がいっぱい生まれた。
けれど、すぐにその状況を思い浮かべる。
家の中に窓ガラスを割って石が飛んで来たらと想像する。
いくつも石を投げこまれたら。
「怒ると思います。それに、何をするんですか?と言って家の外に出ると思います」
そう答えると「まさに今がそれだよねぇ~?」と言われた。
ああ、なるほど。
巣穴に石を投げこまれた小鬼は、怒って出てくるかもしれないってことが言いたいのかと理解した。
けれども、待てど暮らせど何も出てくる気配はない。
「何も起きませんね……」
「……っということは、ここに倒れている五匹の小鬼で全てということになりますね」
私とニット君が斬り倒した小鬼を確認しながらパラライザさんは呟いた。
「この巣穴は、どうするんですか?」
「ぶち壊した方がいいだろうねぇ~」
「そのままにしておくと、別の小鬼や他の魔物が住み着くことになる可能性があるからな」
確かに、そのままにしておくと別の小鬼がやってきて住み着きそうだ。
でも、こんなに狭い穴から小鬼が這い出てくるとは思わなかった。
身体の大きなマックスさんでは、この巣穴には入れない。
セレスさんと私でも胸やお尻が引っかかって多分入れないと思う。
無理矢理、匍匐前進すれば行けないことはないと思うけれど、途中で引っかかってしまったら、前にも進めないし、戻るに戻れなくなりそう。
さすがにそんな危険を冒してまで、小鬼の巣穴の中に入っていくことはない。
小さな子供と同じくらいの体格のゴブリンが這い出してこれるくらいの穴だから、ニット君なら入っていけそうだけれど、途中で小鬼と遭遇してしまったら戦うことはできない。
巣穴の中がどうなっているのかはわからないけれど、この入り口を見た限りではニット君が四つん這いで入って行くことはできても剣を抜いて戦うなんてことはできないくらいの穴だ。
さすがに、その穴に入っていくのは自殺行為だろう。
「どうやって壊すの?」
ニット君は疑問に思ったみたい。
私もどうやって壊すのか気になった。
「土や石を入れて埋めちまうか、魔法で吹っ飛ばすだけだねぇ~」
セレスさんは、太腿に括り付けられていた鞘から一本の短剣……『白銀の刃』を引き抜いた。
炎の魔法を発動させたようで、刀身が炎に包まれる。
「マックス、面倒だから巣穴の中に小鬼の死体をぶち込んじまいな。一緒に吹っ飛ばしちまうよ」
「そうだな。その方が手っ取り早いな」
マックスさんは、手際よく小鬼の死骸を巣穴の中にねじ込んでいった。
それが終わると私たちは巣穴から少し離れる。
セレスさんが魔法で吹き飛ばすという。
「吹き飛べ、大爆発」
炎が渦を巻きながら切っ先へと集まっていく。
その炎は次第に火球へと姿を変えていった。
大きな鬼灯のような火球が出来上がる。
その火球を小鬼の巣穴の中へと押し込むように叩きこんだ。
数秒後。
ドン!という突き上げる衝撃とともに、地面が激しく揺れた。
巣穴の入り口が崩れて穴が埋まっていく。
火球を巣穴の中に打ち込んで爆発させて破壊した。
少し離れた場所の木が少しだけ傾いていくのが見えた。
巣穴が崩れたために土が土中に引き込まれ、そこに立っていた木が傾いたようだった。
思った以上にセレスさんの魔法が強力だったためか、高級キノコが採取できる場所に影響がなくて良かったといった表情をパラライザさんはしていた。
巣穴が採取場所の真下だったら、下手をすればキノコの採取ができなくなっていたかもしれない。
そう思ったらパラライザさんの心境はいかほどだろうか。
「一丁上がりだねぇ~」
セレスさんは楽し気だった。
ちょっと過激すぎると思ったのは私だけかしら?
もしも火事になんかなったら、逃げきれずに煙に巻かれることにもなりそうなんだけれど。
そうはならないと確信があってやったのかしら?
それを確かめるのは怖かったので、聞くのはやめた。
「これで終わりですか?」
小鬼の巣穴は破壊したので、追加の依頼は達成ということになるはずなんだけれど。
「もう少しだけ、回ってみましょう。巣穴が一つとは限らないので」
パラライザさんは、他にも小鬼の巣穴があるかもしれないとして、さらなる探索を申し出てきた。
「確かにそうだな」
マックスさんは頷いていた。
小鬼の巣穴って沢山あるものなのかしら?
今回はたまたま見つけられたけれど、見つけるのは難しそうだと私は思った。
けれど、やらなければならない。
「ニット君、もう少し頑張りましょう」
「うん」
ニット君は、元気に頷いた。




