引越しの挨拶
第24回新風舎出版賞、3次審査落選作品(笑)
洗車はこの次にする事にして、私は2階へと階段を上がった。私の部屋は、階段を上って右に曲がり、2つ目の所がそうだ。一つ目の右隣の部屋の明かりは点いていた―
入居してから重要な任務が一つある。それは、隣人への引越しの挨拶だ。挨拶をしにいく際に、そばとかタオルとか持って行った方がいいのかといらぬ心配をしたりしたが、まー、いいかと手ぶらで、しかもノープランで突撃した。まず、左隣の部屋のインターホンを押してみる。すると留守のようで、続いて右隣のインターホンを押した。するとこちらも留守のようで、今度は一階の真下の部屋のインターホンを押す。しかしまたまた留守のようで、今度にするかと一度部屋に戻った。そして部屋で冷静になって思ったのだが、部屋にはインターホンのテレビモニターが付いているので、もしかしたら、「訳の分からない変な奴が来た!」とか言って、居留守を使っているんじゃないかという事だ。更によく考えてみたのだが、ここの住人はほぼ一人暮らしの大学生が住んでいるんじゃないかという事で、そういう挨拶みたいなものは、嫌うんじゃないかという事だ。もし自分だったら、あまりそういうのは嫌だし、「挨拶に来られてもなー」という感じで、第一、そんな事を気にする歳じゃないんじゃないかと思った。そしてそう考え直した自分は、気持ちだけは受け取ってと、それ以後、引越しの挨拶に行く事はなかった。
続く...




