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最弱コウモリ幼体に転生したので、血を吸って進化する  作者: HATENA 
第4章 血牙と地上の夜

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第052話 残す痕跡

 夜狩り梟の血を吸い終え、集落の取引小屋へ戻る途中で火が見えた。


 風穴の近くに二つある。


 人間の匂いもした。


 俺は木の上で止まる。


 低く鳴くと、火の周りに四人いた。


 一人は起きている。


 三人は横になっているが、武器を手の届く場所へ置いていた。


 赤い杭が風穴の前に立っている。


 あの印の意味は分からない。


 ただ、見つけられたことだけは分かる。


 羽ばたく音を抑え、隣の木へ移る。


 飛行Lv3になってから、枝を離れる時の音が小さい。


 夜狩り梟ほど消えないが、火の弾ける音に紛れられる。


「明日は上から入る」


 起きている男が、火の向こうへ声をかけた。


 横になっていた女が目だけを開く。


「採石場まで?」

「ガレオの印があれば、その先も見る」

「何もなかったら」

「風穴へ戻る。飛ぶ魔物の巣なら、狭い方を使う」


 ガレオを探している。


 上の入口から入れば、採石場に残した遺体までたどり着くかもしれない。


 四人をここで殺せば、明日は来ない。


 眠っている三人から先に血を吸い、最後の一人を音撃で止める。


 できるかもしれない。


 だが、四人とも戻らなければ、次はもっと多く来る。


 ガレオ一人で捜索が出た。


 四人なら、町や兵士まで動くかもしれない。


 殺すより、探す場所を変えた方がいい。


 俺は木から離れ、風穴とは別の亀裂へ向かった。


 黒骨洞へ入る道は一つではない。


 細い獣道から中層へ下り、採石場を目指す。


 ガレオの遺体は、灯りが消えた場所に残っていた。


 匂いは強くなっている。


 小さな虫が服の隙間へ集まり、開いていた目は乾いていた。


 俺は傷ついた手に巻かれた布を噛んだ。


 血で固まり、簡単には外れない。


 爪で裂き、細い部分だけを取る。


 ガレオの血と汗が染みついていた。


 これなら、人間の鼻でも分かるかもしれない。


 採石場から上の入口へ続く道へ向かう。


 途中には、古い木の支柱が何本も残っている。


 一本は根元が腐り、天井の石を辛うじて支えていた。


 ガレオをここへ誘う時には使わなかった。


 崩せば、俺も上の道を失うからだ。


 今は人間が使う道を残す方が危険だった。


 金属線を支柱の割れ目へ回す。


 反対側を、坂の上にある丸い石へ結んだ。


 石の下から小さな欠片を一つずつ抜く。


 重さが線へかかる。


 俺は天井近くの横穴へ入った。


 最後の欠片を爪で押す。


 丸い石が坂を転がった。


 金属線が張り、支柱の根元を横へ引く。


 一度では倒れない。


 石がさらに落ち、線が食い込む。


 腐った木が折れた。


 天井から砂が落ちる。


 次に、大きな石が一つ落ちた。


 それが床へ当たり、周囲の岩も崩れ始める。


 音が洞窟全体へ広がった。


 横穴の中まで砂埃が入り、息が詰まる。


 しばらくして音が止まると、上へ続く道は石で塞がれていた。


 人間が掘れば、いつかは通れる。


 明日すぐには無理だ。


 俺は別の道で風穴へ戻った。


 四人は崩れる音を聞いて起きている。


「洞窟の方だ」

「今入るな。二次崩落がある」


 火の周りで声が重なる。


 その間に、ガレオの布を咥えて北へ飛ぶ。


 わざと一度だけ、月の前を横切った。


「上!」


 弓を持った人間が立ち上がる。


 矢が来る前に木々の間へ入った。


 布を夜狩り梟の岩場まで運ぶ。


 枯れ木の根元には、大梟の血と角兎の骨が残っていた。


 ガレオの布を、爪痕のある枝へ引っかける。


 近くには、昨日抜けた灰色の羽もある。


 人間が何を考えるかまでは決められない。


 少なくとも、風穴だけを見ているよりは迷う。


 朝まで離れた木で待った。


 四人は最初に上の入口へ向かい、崩れた石を確かめた。


 掘ろうとはしなかった。


 その後、昨夜俺が飛んだ北へ進む。


 斥候の女が、枯れ木に残した布を見つけた。


「ガレオのだ」


 布を袋へ入れ、周囲の骨と大梟の血を調べる。


「ここで襲われたのか?」

「分からない。血が新しすぎる」

「昨夜の飛ぶやつは」

「梟じゃなかった」


 女は木の高い位置に残る俺の爪跡を見た。


「別にいる」


 四人は長く話した後、風穴へ戻った。


 赤い杭へ新しい切り込みを足す。


 そのまま町の方へ引き返していった。


 俺は追わなかった。


 風穴の前には杭と人間の匂いが残っている。


 今までのようには、ここを使えなくなった。

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