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49:ダンジョン踏破

 巨大な剣が横薙ぎに振るわれる。まだ子供の俺ではまともに食えば良くて重症、悪くて即死の破壊の旋風。いくら袈裟切りよりも力を入れにくい横薙ぎであろうと、サイクロプスの膂力を持って振るわれれば範囲と殺傷力を兼ね備えた最優の攻撃と言っても過言ではない。


「ただ俺に振るにはお前の身長は高すぎるかな」


 サイクロプスに向け走り出していた俺の体を、より前に倒し、より体を深く沈め、破壊の旋風を潜り抜ける。サイクロプスを強者足らんとするのはその巨体、そして弱者()強者(サイクロプス)を食らうために突くべき弱点も、その巨体だ。


 しかし初撃を潜り抜けたところで、俺の攻撃を届かせるにはまだまだ遠い。さらに後隙の大きい横薙ぎを躱されて、サイクロプスには焦るどころか苛立つ様子も見られない。大剣の勢いを抑えず、生まれた遠心力にそのまま乗るように、腰をひねり、剣を持っていなかった左拳が振るわれる。初撃の回避で俺の速度をだいたい理解したのだろう、殴打という点の攻撃を進路上に繰り出してきた。


 俺は脚甲を出し、地面を蹴ると同時に、足裏で爆発を、背中で追い風をそれぞれ魔法で起こして加速する。魔法を用いた急加速により、俺を叩き潰すはずだった拳は後方で地面を殴る。2回の死を置き去りにし、最初の目標を目の前にした俺は、より一層力を込めて地面を蹴り、爆発と追い風を発生させ、体全体を弾丸のように射出する!


「まずは一本目!!」


 魔具を大太刀に変え、射出の勢いに反して、風魔法によって空気抵抗を軽減して振りぬかれた一閃は一切のかかりなく巨人の足首を切断する。


「ゴアアアアア!!!」

「痛がってる間にもう一本…」


 魔具を手甲に変え、進路上に創り出した石柱を掴み体を回す。未だ無事なもう片方の足首を正面に収めた瞬間手を放し、手甲を脚甲に、地面を踏みつけ、再度俺という弾丸を射出する!


「貰う!」

「グアアアアア!!ゴアッ!!」


 二度振りぬかれた大太刀は使い手の希望通りに、両足首を奪い去った。もう立っていられないことを理解したサイクロプスは、激痛に耐えながら後方に飛びのいて、壁を背にして寄りかかる。


「膝立ちとかになってくれたら楽だったんだけどそうくるかぁ…」


 両足を失うということは歩けず、立てないという状態を生み出すが、戦闘において、それらがもたらす最も致命的な状況は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことである。


 どれだけ巨大であろうと、どれだけ膂力があろうと、人型である以上後ろを見ることはできないし、後方に有効な攻撃をすることはできないし、後方からの攻撃を防ぐこともできない。それを防ぐため、サイクロプスは壁に背を預けた。当然体勢は悪くリーチも短くなり、攻撃に力も入らない、だが元々サイクロプスのリーチ、力、共に俺を殺すには過剰なのだ、攻撃をモロに食らえば普通に死ぬのは変わっていない。


「ちなみに出血多量で弱るのを待つのはダメ?」

「そんな情けねぇ選択したら俺がサイクロプスに変わって坊主をしばくぞ」


 ダンジョンボスが強い方に切り替わるのは流石に勘弁してほしいので大人しくサイクロプスに向かっていく。足首がなくなろうと、脚がなくなったわけではない、脚を振れば、その脛、腿は打撃として十分な破壊力を持ち、無事な上半身から繰り出される斬撃、殴打は先ほどと変わらず死を叩きつけてくる。


 脚を駆け上り、振られた剣を駆け上り、眼前に飛び出したところで振り上げられた拳を盾で受け止める。空中で受けた拳の衝撃によって、体を打ち上げられた俺は、脚甲を出現させ、天井へと()()した。瞬間、闇魔法でサイクロプスの視界を奪い、迎撃態勢を整える時間を奪う。


「これでしっかりぶち抜かれてくれよ…!」


 天井へ叩きつけられた衝撃をバネに、爆発を、追い風を、重力を、相手の力、魔法の力、星の力を自らの破壊力へと変換した弾丸は射出された瞬間、脚甲を馬上槍という弾頭へと切り替え、サイクロプスの大きな瞳に着弾した。


「うおっ!ぐっ!がっ!!」


 ゴロゴロと、つい先ほどまで弾丸だった俺は薬莢のようにサイクロプスという山を情けなく転がり落ちる。痛い!固い!ぶよっとした!いったっ!!


 床まで転がり落ちた俺は、即座に治療魔法で痛みを和らげ、サイクロプスを確認する。様々な力を束ねて突き立てられた馬上槍は一直線に頭部を貫き、後方の壁へと縫い付けていた。


 先ほどまで破壊を振りまいていた巨人からは、殺意も、敵意も、怒りも、何も感じない。魔具を消し、噴き出した血を水で流して、戦闘の終了、ダンジョン踏破を3人に告げる。


「ボス戦終わったよ!これでダンジョン踏破だよね!」

「坊主にしては珍しくド派手に決めたな」

「…最後の着地までしっかりできてれば文句なし」

「私には絶対できない動きだねぇ…。今でもBランクになれるぐらいの強さはあるんじゃないかい?」


 ふっふーん、必要に迫られたとはいえ、自分史上最高にド派手なトドメがさせてとても気持ちいいのでサラのお小言にもノーダメージ、今のアルクくんはダンジョン踏破も果たして上機嫌なのです。


「ただなあ、ダンジョン踏破にはまだ少しはええな」

「え、ボス倒したら終わりじゃないの?」

「…ん」


 俺の疑問に、サラはサイクロプスの死体を指さして答える。いや、気配も感じないし、どう見てももうあれ死んでるじゃん、ボス倒してると思うけど。


「…帰還用の転移魔法陣の部屋、あの後ろ」

「えっ」


 こと切れて、壁に寄り掛かり鎮座するサイクロプス、最奥の部屋にて最後の障害だった元ダンジョンの番人は、死してなお最後の障害物として現ダンジョンの番人を務めていた。


「今からあれどかすのぉ…」

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