164「リレーはいまいち? 」
数か月更新していないみたいな扱いになってたので、当たり障りのない話UPしときます。
それは農園研修より前の話。
学生会で、リレー大会の打ち合わせがあった。
リレー大会は昨年から俺の発案で始まったから、俺が参加せにゃならんかった。それに、去年の予想外のアクシデントでルール変更をせにゃならんと思ってたし。
校舎三階の会議室。
元会長。現会長とそのお供男子。そして新秘書子ちゃんの一年生女子。んーで、俺。
去年の失敗を色々挙げつつ、改善点を出していた。
前回は午後だけの大会だったので、午前と午後に分けても良いのではないかとなった。
一学年だけでも男女合わせて約百人が外園の円路を走るのだ。
円路を四分割するとは言え、全員走り切るのに一時間を近くかかるのだ。円路を二十五周だからな……。
その後が、代表が走る借り者競走。そっちは、三学年混合チームの代表が、男女南北に分かれて走る。各学年男女六名、計三十六名が走るわけだが……。
「男子の選抜メンバーですが、一般男子学生からも出場したいという要望が結構あったのよ」と、銀髪の元会長。
「それは、俺にも言われましたね。面白そうだからと」
「まぁ、合法的に女子と近くで関われるイベントだから……」
「そんなに楽しんですか?」
ポニテの秘書子ちゃんは不思議そうにしている。
「うまくいけば、意中の人と二人で走れるし」
「腕っぷしがある野郎なら、女の子を担げるからな」
何それ?わけわかんないみたいな顔で一年生女子は口を開けている。
「ルールに同伴者を担いで走ってはいけないってなかったから……」元会長は困った顔をしている。
「今回は、同伴者の身体に触れてはいけないと加えますか?」と、淡々と現会長。
「怪我人出た場合の事を考えて残しておいても構わないと思うの」
「だからって米俵担ぐみたいのは……」
「コメダワラ?」
秘書子ちゃんが俺を見る。
「いや、ほら、パン屋の小麦粉袋とか、酒樽担ぐみたいな感じ? そんな風にして雑に女の子扱うのはダメやん」
二年生と三年生は、そうでしょうねと相槌。
俺らは運営の裏方だから、借りもの競争には出ない。
「勝負に勝つ気なら、皆さん士官学校組出してくるわよ」
「景品のケーキセットは、お茶のお誘いのギミックとしては最高ですからね」
「増やしますか? 選手? 各チーム一人は一般男子で。それに合わせて女子も……」
「女子も出たい人いるみたいだし……」
「なら、人数増やす方向で」
「三年生は今年で最後だし、勝っても負けても楽しいイベントにしないと」
元会長は嬉しそうに笑っていた。
ウキウキとしたイベント企画も、なんやかんやで水を差される。
****
それは野営訓練が終わった週末の事だった。
会議室。
その日は、書記係が士官学校組と体幹訓練してたので、書記係は秘書子ちゃん。
そして、代わりではないが別の方が会議室にいなさる……。
横机と横机を前に新旧会長と対面する俺。俺から見て左手の縦机に副学長が腕を組みでーんと座っておられた。
独特の威圧感。
副学長の対面に秘書子ちゃんだが、怖くないのか……。
「勝負事にもかかわらず、こんなちんけな内容でいいのか!?」
ドンっと拳で机を叩かはる副学長。
「でも、ジョン先生。魔物退治や瘴気迷宮対策の為の訓練ではありませんし」
「どちらかと言うと、唐突なメンバー編成でもフレキシブルに対応する為の訓練ですけど……」
「紅白戦と違って全学年がまみえるイベントがありません。狭い学園で連係を取る練習みたいなもんです」
「なら、あの借りもの競走とはなんだ! 婦女子を抱えて走るとは!」
「あれはー……」
「抱えて走るなとルールになかったんです。そんなん全く想定してませんでしたから!」
「不慮の事故だったんです、先生……。負傷した女子を取り敢えず次の走者の所に運んだら、そうなってしまったと……」
副学長は、元々軍人だ。海外派遣された先で、魔力無しの国との戦闘で片目を負傷している。その後、国内の警護や瘴気対策の役職にいたが、瘴気の怪物討伐で負傷した片目を更に傷めてしまい、今は殆ど見えていない。だから、サングラスみたいのをかけている。前世のショート動画で見た海外のレスラーさんみたいでゴツいというか怖いと言うか……。堅物なのか硬派なのか、お貴族のお嬢様抱えて走るって軟弱に見えるんかなー。
「そもそも、誰がこんなふざけた競技を考えた!」
気不味く小さめに手を挙げる俺。
「貴様かっ!」
「そもそも、『女子とお近付きになりたいからおもろいイベント考えろっ』て言ってきたのは当時三年生の先輩ですよ。プロムで壁ススキが嫌だからって」
「誰だ、そいつらは!」
「……察して下さい」
「……。あいつらか」と、吐き捨てる様に副学長が舌打ちした。
「いざとなったら女性を抱えて逃げるというのも、訓練みたいなもんじゃないですか?」
「被災者救護も軍人の仕事か……」
「そうそう」と学生らは頷く。
「そもそも士官学校の意識がおかしいでしょ。人数の少ない女子学生や掃除のおばちゃんまでにセクハラするって。そんなだから女子学生に避けられるんでしょ」
「軍務に就く者は血気盛んなんだ。この学園でも」
「やらかしたら一族十年入学出来ません!」と、頬をぴくつかせて元会長。
「学園も士官学校も国王陛下の直轄下位組織です。人様、それも王様の御屋敷の従業員や客人に狼藉って、俺からしたらあり得ないですけど」
「そういう考えをみんなが持っていればね……」
「クライン卿って意識高いですね」と、一年生女子。
「兎に角だ、あの軟弱競技はやめろ」
「「イヤです!」」と、即答で前会長と現会長がハモる。
「あれはあれで、女子からも好評だったんです」
「うちの学年だと、踊りに誘ってもらえたってベリンダ嬢とか喜んでましたよ」
プロムで似非シンデレラが踊ってた相手って当時の三年生の人で借りもの競走の人だったらしい。
相手の素性が多少分かるから女子からしたらお誘い理由が出来て断る必要がなくなるからか……。
「士官学校組の競技増やしますか?」
現会長が副学長を覗き込む。
「どうせ、丸一日潰すつもりです。C様、士官学校用に何かしら競技を考えて下さらない? なるべく走るやつで」
またアイデア出しか……。
「走る距離増やすか……。」
うーんと、悩む。
「パン食い競走はだめだし……。サスケみたいな障害物競走はだめだ……」
「サスケって何ですか?」
一年生女子が不思議そうに聞く。
「あっ、なんていうか身体能力を駆使して高い壁登ったり、池の上を渡る鉄の棒を掴んで移動するアスレチック競技……。無理だろ、大掛かりな装置がいるから。そもそも、外園の円路に穴とか空けられないでしょ?」
「そうよね……」
「なら、着ぐるみでも着て、動きにくい格好で走らせるとかどうですか?」
俺は苦笑しながら副学長を見た。
先生は腕を組みうーんと唸っている。
「まあ、着ぐるみは大げさでも、麻袋に両足入れてぴょんぴょん跳ねるなんてのも障害物競走の定番かな。それなら円路を傷めないし」
「魔法で土をいじっても片付けるのは大変よね」
「水とかかけたら円路がどろどろになります……」
「いっその事、ウエスタ村まで走っていって、行った印のなんか取って帰ってこいみたいな」
「学外だと、職員を配置するのがな……」と、腕組みして副学長。
「中継も無理ですしね」
正直、普通にリレーと借りもの競走でええやんと俺は思ってた。
それで、借り者競走のルールの改定案だけ出して、お開きになった。




