14.ブレイクタイム
何とか間に合いました。
俺の前に一人の男が割り込んで来る、貞時だ。
こいつが来たってことは少し無理してたのか気づかなかった。
「二人とも熱くなりすぎだぞ少し休憩をとれ共倒れするぞ。お互いに手を出さないように俺が見てやるから一回休め。」
俺は後ろを向き堂々と彼女に背を向け持ってきた荷物の方へと歩いていく。走り回っていたから気づかなかったが寒いからして体からの蒸気がすごいな、かなり体温が上がっていた。上のジャージを脱ぎ半袖の黒いTシャツになって粗熱を取りながら2Lのスポーツドリンクを飲んでいた。
「すまない、助かった。」
けがるそうに女性が貞時に話しかけていた。
「しかし何故止めたんだ。正直私はもう少しで限界だった冷静さを欠いて捨て身になっていたかもしれない。彼はまだ状況をしっかり判断できていた、このままだったらあなたの憑き人さんに軍配が上がっていたんじゃないかしら。」
はっはっはと笑いながら貞時は答えていた。
「そうかもしれないな、ただ攻撃をして相手を負かすことだけが勝利ではないからな。」
「どういうことだ。」
「まあ、あんまり細かいことは気にするな。止めなきゃいけないと思ったから止めただけだ。まずはしっかり休みな、一時休戦にしただけで決着を止めたわけじゃくぁないからな。」
「わかった、休ませてもらうわ。」
「ああ、奇襲とかさせないから安心して休みな。」
振り返りながら手を振って貞時は歩き出した、というかこっちに来た。
「よう、まだいけそうだな。」
「一発も当たってないからね。でも止めたってことは。」
「ああ、時間だ作戦を変えた方が良い。」
「だから最初から俺の作戦にしてればよかったのに。」
「たわけ、始まった時の状態と今の状態ではお前さんの生存率は上がっているんだ。感謝して動け。」
二人でへらへらと会話をしているが、俺も余裕があるわけではない。気を張り詰めながら結構長い時間走っていたため、まだ息も荒れている。
「わかってるよ、ありがとうありがとう。こっちはいつでも始められるようにしとくよ。」
「ん、わかった。ではあっちの様子を見て始めてやるよ。」
貞時は女性の方へ向かっていった。
俺はストレッチをしてあまり体を冷やし過ぎない様に休憩を取りながら周りを見た。不図、目をやった先に伊東さんが歩いて来るのが見えた。
「あ、どうも伊東さんこんばんわ。」
「こんばんわ。あなた一体何を考えているの。」
挨拶と一緒に怒られた。わかってるよ勝手に人の仕事を奪ってってことでしょう。もちろん考えているよ。
「ああ伊東さんの仕事の邪魔はしません。もちろん報告には行くつもりでしたよ。俺は仕事でやっている訳じゃないんで、調べたことや聞いたことは何でも話すつもりでいました。勝手に仕事を取るような感じになってしまってすいませんでした。」
もちろん本心だよ。最初はこの人達の仕事だったんだから。こっちの勝手な好奇心で迷惑をかける訳にもいかない。
呆れた様子で伊東さんは頭を抱えた。おや、思っていた答えと違ったのかな。
「もちろんこの件に関して何かあれば聞くつもりでいたわ、そのために少しでも信用してもらおうと名刺を渡したんだもの。」
ああ、あれそういう意図もこもっていたんだ。大人ってすごいな先を見据えて行動しているんだな。行き当たりばったりで動いていたからな。特に今日はひどかった。
「でも本題はそこじゃない。あなた、死ぬかもしれないってことわかってる?」
そういうことか伊東さんは昨日会ったばかりの俺の事を心配してくれているんだ。会社の方針がそうなっているのか、それとも個人でやっているのかどちらにしてもいい人だな。
「ねえ、聞いてるの。」
「聞いてますよ。もちろん分かったうえでやってますよ。」
死の危険があることはもちろん知っている。承知の上でやっていることだ。でも、その危険を承知の上でもやりたいことがある。
「わかってるんだったら今すぐ止めなさい。さっきも見ていたし確かにあなたは強いかもしれないけど、」
「伊東さん。」
止めようとしてくれている伊東さんの言葉を遮って自分あ《じぶん》の話をする。
「心配してくださってありがとうございます。でも、死ぬ覚悟はできてるんで、最後までやらせてください。」
俺は頭を下げてお願いする。俺と伊東さんは昨日知り会ったばかりの人同士だ、別にこうまでする間柄でもないし、こうまでしなくても勝手にすればいい、でもこの時の俺はこうしなくちゃいけないと感じた。いや、こうしたかったのかもしれない。
「駄目よ。と言って無理やりにでもあなたを止めたいと思っているわ。
でも、私達は昨日あったばかりだし、あなたに私の言うことを従わせる権限もない。
何とか説得してやめてもらいたかったけどこの件に関してあなたは引く気はないんでしょう。」
「残念ながら。」
「説得、いえ説教する時間はなさそうだからこれだけはお願いするわ。
この後生きた状態で私の説教を聞きに来て頂戴。説教の部分に関しては強制しないわ。」
「わかりました、必ず聞きに行きます。」
俺は一礼し、伊東さんから離れようとする。
「ああ、ごめんもう一つ。」
伊東さんの呼び留める声に俺は状態だけ振り返る。
「あなたの死ぬ覚悟はあなただけがするものじゃない、今はなんとなく覚えてて、私のお願いをかなえて来て頂戴。後でじっくり説明するから。」
「よくわからないけどわかりました。」
再度俺は歩き始めた。まずはこの一件に終わりを迎えさせるために。
これからも毎日更新できるように頑張ります。




