13.初めての死闘
本格的な戦闘回になります。
放たれた光の玉は一番最初によけた弾道と違い低い弾道を描き智玄の足を狙っている。マシンガンの如く細かい玉が連射的に放たれていた。
攻撃を確認すると同時に智玄は左を向き女性の周りを回るように走る。二人の距離は約5m、お互いに近づけず遠ざけられずにいる拮抗状態だ。
智玄は走りながら女性を見ていた。そのためお互いに目が合っている状態になっている。痺れを切らしたのか女性は光の玉を発射している手を少し早く動かし智玄に当てるために調整をした。
彼は何故走りながら彼女を見ていたのか、それは敵の状況を見るため隙ができる一瞬を見逃さないためだった。
智玄を先行して狙うには発射口である手を早く動かす必要がある。ホースから水を勢いよく出しているときゆっくり横に振るのと、素早く横に振るのとでその区間にかかる水量が違うように、断続的に放たれている弾幕も早く動かした分その区間の弾幕が薄くなってしまう。
彼はそこを狙った。
彼女が腕の動きを変えたタイミングで急ブレーキをかけて右足を軸にしてぎゅるりと切り替えし、弾幕の薄くなったところを使い、近づけなかった彼女へと距離を詰めた。
一瞬しまったと舌打ちをした彼女もすぐに反応して手を智玄へと戻す。智玄も近づく弾幕に反応し逆回りで再度彼は走り続ける。彼女も近づけさせないように弾幕を張った。二人の距離は3mとなった。
そこから大きな距離の変動が起こらなくなった、智玄が加速と減速を使い彼女の隙を伺うが、彼女も先程の件で警戒が強くなり、もう二度と逃すまいと鋭い目つきで彼の動きに対応している。
互いにジリ貧の状態になり体力と精神力のすり減らし合いが繰り広げられていた。
その光景をただ傍観していた者がいた。貞時である。
(3mがギリギリの様だな。近づけば互いにリスクが跳ね上がる。、遠距離攻撃であるあの女にとってはこれ以上は近づけられない。死守したい距離だろうな。智玄も下手に仕掛けられない距離だな。)
彼女も半分は動かない、半分は動けない状態でいた。動かない理由は智玄が動くの待っているからだ、先程のようにちょっとの隙をついて詰められるかもしれない。これは動けない理由でもあった。だからこの拮抗状態が生まれている。
互いに仕掛けたら返されることを理解して、動きながら策を考えている。
(お、お客さんか。)
のんびり鑑賞していた貞時が振り返りやってきたものへと近づく。
「はぁはぁ、これはいったいどういう状況なの。」
私は困惑していた。昨日の少年から会社に連絡が入ったと聞いてもしかしてと思って慌ててやってきた。かなり走ってきたので息が荒れ白い息が視界を遮る。目の前には光の玉を放ち続ける霊体の女性と、それを避けながら走り続ける少年がいた。しかし、互いに今一歩踏み出せない激しくも静かな攻防を繰り広げていた。
「止めなきゃ。」
戦闘の様子に少し圧巻されていたが、ここへ来た理由を思い出し私は近づこうとした。足を前に出そうとしたら、一人の男が行く手を阻むように近づいてきた。
「悪いな、伊東さんだったかな。邪魔するっていうのなら俺はお前さんを止めなくてはいけなくなる。」
少年と一緒に出会った少年に取り憑いている霊体の男だ。名前は確か。
「貞時さんでしたか、彼を見殺しにするつもりですか。」
起こりうる最悪の状況が頭にある以上自分の行動が妨げられ、敵意ある目で相手を見る。
「無論そんなつもりはない。」
顔を横に振りながら答えられた回答に驚く。
彼は振り返り少しだけ二人を見た後、私へ向き直し続ける。
「頼まれたんだよ、邪魔が入らない様ににしてくれと。」
貞時さんは親指でクイクイと後ろを指しながら答える。
誰にという疑問は出てこなかった。
「正気なの。」
「正気だと思うよ。」
誰がとは言わなかったが伝わったみたいでさらりと貞時さんは答えてくれる。
「死ぬかもしれないのよ。」
少年は攻撃を避けきっているが、表情と動きに余裕があるわけではないように見える。
相手の女性も余裕という訳ではないがリーチの差もあり、決して少年が有利という状況ではない。
「そうかもしれないが、それが彼の意志だ。彼のやり方だ。俺がどうこう言って聞く奴でもないしな。」
頭を掻きながら少し困った顔をして振り返り戦況を見ながら貞時さんは答えた。
「それでも、」
「悪いな時間だ、そこから動かないでくれよ。」
私が口を出そうとしたら食い気味に話だし、貞時さんは二人の方へ行ってしまった。
私は動くことができなかった。
ジリ貧の攻防が続いていたが、動きが出た。
(これ以上はきついわ。なんて体力なの、まだ彼は走ることができるというの。
動かなきゃ根負けする、でもどう動く。)
相手は自分に近づく隙を伺いながら自分を逃さないように円を描くように走り回っている。
離れたら相手はその時に乱れる弾幕の隙をついて離れた分以上に詰めてくる。さっきの動きで女性は智玄にその能力があることを理解し、それを恐れている。そんな状況で彼女は必死に打開策を考えていた。
(どうやて彼から離れればいいの。いや、こういう時こそ冷静にならないといけない。どうして私は距離を取ろうとしているの。彼が近距離でしか戦えないからだ。何故そう思ったのか、武器も持っていないし遠距離攻撃を持っているなら仕掛ける隙はあったからだ。
私の目的はなんだ、彼から距離をとること、違うそれは手段だ。私が安全に攻撃する手段の一つに過ぎない。私の目的は彼を倒すことだ。)
女性は活路が見えたように今までの苦しい顔からカッと目を見開き攻撃をやめた。
智玄は彼女の顔を見ていたので何か仕掛けてくることは想像できた。しかし、またとないチャンスでもある。彼は方向を変え、彼女の手の動き気をつけながら近づこうと足に力を入れる。
刹那、今まで距離を取ろうとしていた彼女が逆に距離を詰めてきた。二人の距離は1.5m程となっていた。近づきながらすでに右手を伸ばし攻撃の態勢に入っていた彼女を前に咄嗟に守りの姿勢になっていた。
智玄はしゃがんだ、相手の左手よりも低く、力が抜けたように一気にしゃがんだ。彼の視界に映っていたのは右手で大きく攻撃を仕掛けて左手でも自分をとらえていたことだった。近づきながら右手をはじいて距離を詰める方法もあったが、おそらく本命の左手の攻撃でやられる。相手の右腕を引いて引き込む作戦もあったが、まだ距離もあり左手の攻撃の脅威という同じ理由で却下だった。
智玄が瞬時に見出した答えは反応しづらい縦の動きで左手の攻撃《攻撃》ごと避ける。体を下に持っていきながら腰を引き後ろにも重心を傾ける。左手の攻撃が対応して自分を捉える前に、足に力を入れボブスレーの如く後ろに一気に跳んだ。後転のように着地をしながら回り流れで立ち上がる。距離は6mほどになっていた。
悔しそうな顔をしている女性に向かって走り出し作ってしまった距離を埋めようとする。彼女も反応し体勢を整える。
「ブレークブレーク。」
二人の間に一人の男が割り込んできて頭の上で両手を振りながら二人を止める。智玄が表情を変えずに動きを止める。彼女は少々困惑した表情で動きを止めた。
私事で申し訳ありませんが、諸事情で二日間家にいないため次回の更新が遅くなるかもしれません。
今まで毎日更新を頑張ってきましたが、それが潰えてしまうかもしれません。毎回読んでくださっている方には大変申し訳ない限りです。これからもなるべく毎日更新できるように頑張りますのでよろしくお願い致します。




