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最高の魔法技師は異世界人  作者: 夜桜
第2章 学園編
17/19

017

ギリギリ今日中の投稿間に合いました。

まだまだ毎日投稿は続く……はずです!

 

 誠たちは第7研究棟の前にいる。

 サラによるとあまり大きくはないという話であったが、とんでもないなと誠は思う。

 研究棟は、「棟」、というだけあって、4階建ての建物である。

 外観は、街の建物と比べると若干現代風であるような印象を受ける。

 誠が元の世界で研究をしていた時は、情報系であるということもあるのだが、研究室に与えられたのは3部屋程度であったため、その大きさに正直圧倒されている。


「ここが本当に僕たち3人に与えられたんですね」


「そうですわね。でも特待生3人なら当然といえば当然のような気がしますね」


 誠のつぶやきに、クリスは落ち着いた声で答える。


「私には、まだあまり実感がないです」


 ナタリアは正直な感想を述べている。

 実際、これが当然の反応だろう。

 クリスの場合は王女ということもあり、自分が優遇されるといった状況はこれまでにもしばしば見られた。

 だからこそのこの態度とも言える。


 因みにナタリアとクリスは先ほど顔合わせをしており、これから一緒にやっていくというのも了承済みだ。

 先ほどの廊下での一件があったため、クリスはナタリアにも恩を感じているようだ。


「ともかく、中に入るとしますか」


 誠はそう言って、扉の鍵を開けた。

 誠たちが中に入ると、外観を見ている時よりも落ち着くといった印象だ。

 内装もさほど堅苦しい感じはせず、研究をするための建物という感じが溢れている。

 1フロアに部屋が3部屋のようで、それぞれの部屋には専用の器具が用意されているようだ。

 とは言っても、この世界は科学が進歩しているわけではないので、科学実験の道具のようなものはなく、魔法具が主となっているようだ。

 それも誠からしたら、そこまで進んだものでもないので、研究を行う部屋自体はいくつかの部屋に限られてくるだろう。


「まずはそこの部屋に入りましょう。おそらく、ミーティングルームのような部屋でしょうから」


「ミーティング?」


 疑問を投げかけたのはクリスである。


「はい。僕の故郷では会議や相談の場のことをミーティングと言っていたのです」


「そうなのですか。私にもまだまだ知らないことは多いようですね」


「じゃあ早速ミーティングルームに行こうよ!」


 ナタリアの元気のいい掛け声とともに、3人は誠によってミーティングルームと呼ばれた部屋に入った。


 誠がミーティングルームと呼ぶだけはあって、中にはいくつかの机と、それに合わせた椅子、そして教壇が用意されている。

 3人はそのうちの丸机に付き、これからの相談を始める。


「それでは今後の研究についての相談をしたいと思います」


 ここは当然のごとく誠が仕切る。

 誠が代表ということになっているし、この中で魔法について最も理解が深いのも誠であるからだ。


「まず最終的な研究の目標ですが、魔法によってどこまでのことができるのかを見極めることですね」


「……それはまた途方もない目標に見えるわね」


 ナタリアが誠の言葉に対してつぶやく。


「そうだね。ナタリアの言うとおり本当に途方もないことだと思う。だからこれは僕の生涯の研究目標といったところかな」


「では目の前の目標としてはどのようなことを考えていらっしゃるのですか?」


 次にクリスが問う。


「そこですね。僕の中では最初は電気の制御を課題にしたいと思っています。あ、電気というのは雷を意識してもらえばいいと思います」


「雷を魔法で起こすことができる、ということなのでしょうか?」


「そうですね。その雷を小規模にしたものを発生させるといったところでしょうか」


「それはまた難しそうな問題ですね」


「いえ、電気を発生させること自体はそこまで難しくはなくて、問題はその制御なんですよね」


「えっ……もうできてるの!?私聞いてないよ!」


 ナタリアが驚きの声を上げる。

 クリスも声には出さないがかなり動揺しているようだ。


「うん。だから、その制御方法をこれから模索していこうと思います。電気の理論についてもちゃんと教えるのでご安心を」


「マコトが水を出したり、空を飛んだりものすごいなと思っていましたけど、まさか雷までとは……さすがですね」


 クリスが感嘆の声を漏らす。


「クリス先輩はあの大会をご覧になられていたのですか」


「もちろんですよ。大抵の貴族は見に行かないようですけど、私は毎年楽しみにしていますよ」


「なるほど。ではユーリ様などは見ておられなかったと」


「あれを見ていてつっかかってくる人はいないと思いますよ」


 クリスは苦笑いを浮かべている。


「それもそうですね。因みに、水の生成でしたらナタリアもできるようになっています」


「えっ!?」


 クリスが珍しく声を上げるほど驚いており、ナタリアは自信満々といった様子で胸を張っている。


「クリス先輩もすぐにできるようになります。ちゃんとお教えしますよ」


「本当ですか!?マコト、ありがとう」


 クリスは誠の手をとってお礼を述べている。

 その手のぬくもり、柔らかさを感じ、誠は頬を赤くしている。

 それもそうだろう。

 なにせ目の前で手を握っているのは、本物の王女様で、しかも絶世の美少女ときているわけだから。


「あ!クリス先輩抜けがけはずるいです!」


「えっ……あ、これはそんなのではないですよ!」


 ナタリアに言われて気づいたのか、クリスは顔を赤くしてパッと手を離した。

 これを天然でやるというのは、クリスもなかなかのものである。

 ナタリアの危機感はどんどん募っていっているようだ。


「ええっと、まあ気を取り直して、今日はクリス先輩に今までナタリアに教えたことを全部教えてしまいたいと思います」


「そういえば、授業の方は休んで大丈夫なことになってるの?まあダメって言われても休んでこっち来るんだけど」


 ナタリアが若干不安そうに尋ねる。


「ああ。その辺はサラさんがうまくやってくれたよ。それでは勉強会といきましょうか」


 こうして研究初日はクリスのための勉強会となった。

 誠の考える魔法の原理や、元素などの知識にクリスは驚きと感動とが合わさったような気持ちであった。

 なにはともあれ、クリスもナタリアに教えた内容までは理解してくれたようだと、誠は胸をなでおろす。

 実際1日で全て教えきるのは無理かと思っていたようだが、クリスは誠の言葉に拒否感が全くなく、すぐに吸収していった。

 そのため、このあたりの内容は異常なスピードで習得してしまったのである。


 これで明日からは実際の研究が始められると、誠は心を躍らせていた。



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