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続きです!
さて、放課後である。
とりあえず緋山星海バカップルを追うことは確定なので、早々に帰り支度を済ませると、襟首を掴まれた。
にゃー。
誰かと思えば藤原さんだった。
今日部活に出ないことを咎められそうだった。
だがさすがに今日は観察したかったので、正直に話すことにした。
もちろん日記の事は隠し、星海さんに相談を受けた事、それに対しての回答。そしてその先が気になるから、隠れて観察したい。と言うことを。
藤原さんは何やら複雑そうな顔をしていたが、一緒についてくるということで話が付いた。
なんで一緒に行きたがったかはよくわからなかったが、何やら嬉しそうだったので、自然と俺も嬉しくなる。
どうやらは二人は近くのショッピングモールに行くらしい。
……ふむ、そこで何かをプレゼントする気かな?
………………うーん、見るだけ見てるが、なんとなく買う様子が見られない。
もしかしたら、手作りにしたかったから苦悩してるのだろうか?
星海さんからのもらい物なら何でも喜ぶと思うけどな。
てなわけで二人はしばらく店内をウロウロしていた。
おかげで俺と藤原さんは暇を持て余して、普通に二人で買い物してたわ。
で、この店内ウロウロ時に気付いたが、緋山も星海さんの事情を薄々察しているような顔をしていた。
気づくのが遅い。
ていうか、お前がちゃんと話しておかなかったから星海さんがテンパってるのだ。
……まあ、緋山もその事実に思い至ったようで、どうフォローしようか苦悩し出したが。
その後、結局星海さんもプレゼントを買いはせず、何も解決しないまま、時間も遅くなってきたので、家へと向かうようだ。
恐らく方向的に、緋山が星海さんを送る形だと思う。
てことはだ。
途中、公園の前を通りかかるはず。……そう、この時間ほぼ間違いなく人がいないであろう小さな公園を。
となると、星海さんの性格上、家に着く前にワンアクション起こすだろうと予想して、先回りしてみた。
もちろん、藤原さんにも同意を得た後でだ。
やってることは確実に覗きなので、お勧めはしなかったが、なんだかスパイ物の小説みたいで面白い! と言ってくださった。
その際――新しい小説のネタにもなりそうとも言っていたあたり、思考が俺に似てきた気がする。
遊具の中に隠れて、話しながら待っていた。
遊具も子供用なので、高校生二人で入るとかなり狭く、密着率が高かった。
正直俺は、顔は真っ赤で緊張しまくりだった。
死ぬかと思った。そして暗くてよかった。明るかったら確実に赤面見られるとこだった。
まあ、藤原さんの方はそれほど緊張してなかったようで、楽しげに話していた。
楽しげと言っても、暗くて顔は見えなかったので、ほんとに楽しんでたかはわからない。
妙に早口だったのが気になったが、そんな日もあるだろう。
そうこうしてる間に、話し声が聞こえた。
予想通り、この公園に立ち寄ったようだ。
さてどうする。
藤原さんと二人で耳を澄ませて聞いてみた。
「えと、えと……そ、の……遥人!」
「う、うん」
「まずは、その……お誕生日おめでとう……!」
「あ、ありがとう」
「そ、れで……ね? プ、プレゼントなんだけど…………」
「……いや! ごめん! 俺が前もって教え合ったりしてなかったから、気を遣わせて!」
「え!? え、ううん!? うちも自分で聞かなかったから! ……それで、だから……」
「え?」
「う……うちがプレゼントです!! 好きにしてください!!」
い……言いおった! 俺が冗談としたものを言いおった!!
てか、俺の言ったことわかってなかったのかな!? 俺が指示した方と自分で考えた方だと、俺が指示した方が緋山は傷つくって言ったよね!? …………いや、別に指示なんかしてないけどさ!!
…………いや待てよ……違う。
俺が助言(?)したのは前半の「プレゼントはう・ち」の部分であって、後半の「好きにしてください」はあの時言った覚えがない。
つまり、この行動は星海さんが自分で考えた行動と言う事。
――……そういう意味で言ったんじゃない!!
……対して緋山の反応は?
「――っ!! ――っ!? …………!!」
ああダメだ。大混乱だ。
でも、何か迷ってるようにも見える。……まんざらでもないのか?
「お! 落ち着こう光。なんかおかしい。深呼吸して」
「う、うちじゃヤですか!?」
「そうじゃない!! むしろ大歓げ――違うっ!! そうじゃなくて、落ち着いて話そうってこと。光あきらかに追い込まれてテンパってるから!」
ああ、よかった。緋山がこれ幸いと星海さんの言葉を受け入れちゃったら、とんだ十八禁になるとこだった。
とりあえず、この時、隣の藤原さんが言った――カオスだね……と呟いたのが印象強かった。
だって同感だったもの。
で、その後の会話。
「すー……はぁー……」
「落ち着いた?」
「ん」
「まずは、お礼。祝ってくれてありがとう。すごく嬉しかった」
「う、うん」
「でも、ものすごく照れた」
「あぅ……」
「正直、めちゃめちゃ嬉しかったし、ほんとに好きにしてしまおうか……なんて欲求も出てきて、焦った。俺の理性さん頑張った」
「っ!! …………」
「でも、そういうのはそんな簡単にはほしくない。もう少しお互いを良く知ってからにしたんだ。……わかる?」
「…………うん。ごめんね」
「謝ることじゃないよ。俺のためのプレゼントにしようとしたんだから。……でも、そういうのはもうちょっと後。俺としては、光からの『おめでとう』の言葉だけで、満足すぎるんだから」
「でも…………」
「どうしても俺にプレゼントをしたい……とか嬉しいこと考えてるなら一つお願い」
「え?」
「次の日曜。デートしよう? そしてその時のプランを考えてきてほしい。オレがほんとに喜びそうなデートプラン」
「あ………………うん!」
……以上、二人の会話でした。
つまり次のデートでもてなしてもらうことをプレゼントにするってことね。
緋山にしては機転がきいてる。
しっかし、予想以上に甘かった。
途中でおでこコツンっとかもやってたし。
そんなこと出来る人初めて見たから、マジかって思った。
でも、とりあえず一件落着したということか。
「あ、そうだ…………今日のは誰の入れ知恵?」
ん?
「え、入れ知恵とかじゃなくて……」
「……いや、なんとなくわかるや。そんなこと言いそうな奴」
「や、だから違くて!」
おや?
「光が相談する相手で、かつ今日二人でいなくなった時があるのは……うん。あいつだ」
……俺だねぇ。
「確実にあいつの入れ知恵た。うん……覚えとけよマジで」
あ、そうなっちゃいますぅ?
一応星海さんは止めてくれたけど……。
「遥人、待って待って」
「ん? あいつの言った事だろ?」
「そうだけど、違くて!」
まあ、冗談でも俺が言ったことは確かだし、そのお怒りは甘んじて受けるか。
その後、二人は仲良く公園を出て行った。
俺も、藤原さんを遅くまで付き合わせてしまったので、送っていくことにした。
帰りでは、俺も先ほどの赤面と緊張はなりを潜めてくれてた。
おかげで気まずくならず、話の流れで誕生日の話題をしつつ、藤原さんを無事送り届けることが出来た。
ただ別れ際、何故か顔を藤原さんにジッと見られ――ずるい。と一言呟かれたが。
さて今、この日記の今日の分を書く前、妹さんからメールがあった。
内容は「兄が機嫌よく帰ってきたので、どんなサプライズを仕掛けたのか知りたい件」というものだった。
なので、放課後に藤原さんと二人で観察した、カップルの買い物風景を教えてあげた。
もちろん、公園の事を言うのは気が引けたので、買い物終わった後に、星海さんからプレゼント貰ったから機嫌がよかったんじゃない? と教えてあげた。
すると、数分もしないうちに妹さんから電話。
何故!!
……緋山達の事をもっと詳しく聞きたいのかと思ったが、何故か俺と藤原さんのことを聞かれまくった。
……なんか藤原さんと妹さん相性悪いんだよなぁ……。
俺と幽霊部員みたいなものかな?
……改めて、今日までの日記を見直してみたが、正直、心のどこかでこれを日記で終わらせることにもったいなさを感じていた。
なので、卒業式。
その時に配るであろう最後の部誌に載せる小説を、この日記をもとに書いてみようか。
もちろん創作として……フィクションとして、主人公たちがゲームの主人公だということも隠さずに書いてみたい。
そうすれば、確実に俺も転生者だとバレるだろう。
もしかすればすごく怒られる……どころか、いくら創作とは言え、下手すればこの高校で出来た絆も全て消えてなくなるかもしれん。
それでも、書いてみたいと思ってしまったのだから仕方ない。
それに今まで隠して観察してきたのだ。
それくらいは甘んじて受け入れる。
…………叶うなら、その後も友達でいたいけどな。
それまでは、通常通りに、俺の楽しい友人たちを観察して、日記に書き記していく。
それともう一つ。その小説の話だ。
一応、まだ先の話だが、タイトルは決まっている。
というか、これ以外にありえない。
タイトル――『ギャルゲー乙女ゲー観察日記』――
ラスト数行がもう一つの最終回でした。
ありきたりかと思ったんで、省いたんですが、結局書いちゃいました。
今回の話で『ギャルゲー乙女ゲー観察日記』は完結です。
主人公の観察できていない部分は多々ありますが、それはそれで謎の方が面白いかと思います。
改めまして、今まで読んでくださった方々、ありがとうございました!!




