パワハラ上司によるありがたいお言葉
※ここからは、パワハラ上司が語ります
「上司様、聞いてくれ! おい短編作家、俺をかば――」
誰が喋って良いと言った。
黙れ。
(下っ端はトマトみたいに潰れました)
数式を並べ、係数を弾き出し、PV単価だの、月間三万文字だのと、得意げに最強投稿戦略を語り合っていたようだな。
チアスコアの画面を血走った目でにらみつけ、リワードの試算をして、月十万稼ぐための皮算用……実に楽しそうだったではないか。
……お前、何か思い違いをしているようだな。
お前たちは式を解いたつもりで、最も大切な存在である『読者』を見失っている。
お前たちは「満額の係数を得るためには月三万文字が必要だ」と聞いて、とにかく三万文字の枠を埋めればよいと思ったのか?
三万文字とは、ただの『器』だ。中身の入っていない空っぽの器を、読者の前に並べてどうする。読者は文字の羅列を食っているのではない。物語という名の感情を食っているのだ。
三万文字あれば評価される? 違う。三万文字を読ませるだけの価値と熱量があるから、読者はついてくるのだ。
無意味なステータス画面の連呼、本筋に関係のないモブ同士の雑談、昨日食った飯の冗長な描写……そんな薄い水で三万文字に水増しして、読者の腹を膨らませようとするな。
三千文字でも、濃密な展開があれば読者の心に深く刺さる。逆に、三万文字あっても空虚な更新を続ければ、読者は呆れて逃げていく。
数字は器の大きさを示すだけだ。その器に何を盛るか。読者をどうもてなすか。それは、すべて書き手であるお前たちの責任だ。
戦場を知ること自体は悪ではない。
月三万文字を書け。それはいいだろう。
だが、それを目的にするな。
三万文字を『埋める』な。三万文字を使って『物語を進めろ』。
それができぬ三万文字など、ただのゴミだ。文字の無駄遣いだ。
お前たちは、いつも間違える。
無料だから雑でいいと思っている。無料だから引き伸ばしても文句は言われないと思っている。
いいか、読者は無料で読んでいるように見えるが、決して無料ではない。読者は、己の命である『時間』を払っているのだ。
その決して取り戻せない時間を、お前たちの作品に差し出している。
読者は金を払っていなくても、人生の時間を払ってお前たちの文字を追っているのだ。
『更新』とは、読者の時間を預かるという、極めて重い行為だ。
広告収益の原資は、最終的には読者の時間だ。
読者の可処分時間を奪っているという自覚を持て。
無料だからこそ、読者は残酷なほど簡単に去るのだ。
つまらなければ、一秒でブラウザを閉じる。
展開が薄ければ、無言でブックマークを外す。
更新を追うことが苦痛になれば、二度と戻ってこない。
お前の作品の代わりなど、このサイトには星の数ほどあるのだからな。
お前の一話を読む数分間で、読者は別の名作小説を読めたかもしれない。
流行りの漫画を読めたかもしれない。
動画を見ることも、疲れた体を休めて眠ることもできた。
その選択肢をすべて捨てさせておいて、中身のない引き伸ばし更新を出すなど、万死に値する。
そして、肝に銘じておけ。
お前たちが係数1.0を獲得していようが、0.5だろうが、読者には関係ない。
読者はただ「面白いかどうか」だけを見ている。
続きが読みたいか。それだけだ。
PVの向こうには、生身の人間がいる。チアスコアの向こうには、読者の削られた時間がある。リワードの向こうには、誰かが貴様の物語に期待してページを開いたという、事実がある。それを肝に銘じろ。
分かったら、さっさと書け。こんなバカなエッセイを読んでいる暇があったら、一行でも物語を進めろ。
お前の作品の更新を、今か今かと待っている読者がいるのだろう?
……なら、書け。
結論:チアーズプログラムなんか気にせず好きに書けばいいよ。




