1 ネコマタ、町に着く。にゃーニャー
雲一つない青空です。
雲はないけど、一つの黒い塊がありました。塊がグングンと近づいてきます。
よく見るとそれには大きな翼があって、爬虫類を思わせる顔つきで、さらに近づけば鉄を通さぬ硬い鱗が見て取れるでしょう。有り体に言えばドラゴンなのです。
そのドラゴンは茶色い箱を抱えています。決して落とさないように、けれども潰れることがないように、そして揺れて中身が壊れないように、やさしくしっかりと抱えています。
見る人が見れば【黒龍ドラゴの宅急便 揺らさず丁寧サービス】だとわかります。箱には『可愛さ注意』のステッカーが貼られていました。
箱は密閉されています。なのに、密閉は内側からビィィィッと破られました。
箱がゴソゴソッと動き、すき間から三角形がピョコンと出ました。白くて小さめなのが二つと、黒くて大きめなのが二つです。次に太い紐がするりと出ました。白が二本に黒が二本です。三番目は声です。叱るようなにゃーニャーと眠たそうなにゃーニャーでした。
ドラゴンの行く手には街が見えます。ドラゴンは街の上をぐるっと回ってから、配達先へと降りてゆきます。場所は街のはずれ、ネズミ―ダンジョンのすぐ近くです。
着払いにもかかわらず受け取り主はいません。なぜでしょうか。
地上にズシンッと降り立って、ドラゴンは促すようにギャォォーーーンと叫びました。
すると箱から、うーにゃーと、一人と一匹が飛び出しました。
一人は少女です。整った顔立ちに眠そうな目が妙にマッチしていて、艶のある黒髪を左右に束ねたおさげ髪で、しかもネコの耳と二又の尻尾がついています。そして頭の上には白ネコを乗せています。
一匹はネコです。愛らしくふにゃけた表情に、綺麗な白い毛並み、尾は長くて二本あります。少女の頭に寝そべるように乗っています。
ネコミミ少女は、頭の上のネコを顔の前に抱えて、
「この子、ネコマタのシロマタさん」
と言いました。カメラ目線で言いました。白ネコはニャーと鳴きました。
「ぼく、ネコマタのクロマタ、よろしく」
そう言いながら一人と一匹は頭と耳と尻尾をぺこりと下げました。
要するに、ネコねこにゃーニャーということなのです。




