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崩壊世界でマンション暮らし ~家賃はきっちりもらいます  作者: 二時間十秒


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天空国道

「よっ、と。……よし、到着」


 いくつか宙に浮かぶ破片を乗り継いで、大きな道路に飛び移ることに成功した。

 俺の後に続いて、楓と久我もジャンプしてくる。3人とも無事着地だ。


「うまくいきました。結構楽しいかもしれません」

「マジカヨ。ヒヤヒヤしたんだが俺は?」

「そういえば、久我って高いところ苦手じゃなかったか? 大丈夫か?」

「苦手なだけで絶対ムリなわけじゃあねえ。金が稼げるなら行くぜ俺は。そのために今朝マンションの五階の廊下から下を覗き込んで慣らしておいたんだからな」


 隠れた努力をしていたらしい。

 それならまだ2階くらいの高さのここは余裕だな。

 遠慮せず進んでいこう。


 俺達は道路を前へと進み始めた。

 今歩いてるところは破片ではなく、道路がそのままべりっと地面から剥がされて浮き上がった、まさに空に浮く道路そのものだ。


 幅は広いし長い。ただ、ゆるく右回りにカーブしている。

 遥か上の方に見える、紫色の輝きを中心とした大きな円を描く形に曲がっている。そしてまた結構な傾斜で上への坂道になっている。


 そんな傾斜のキツい螺旋を描く道を歩いていくが、思っていたよりは体はキツくない。それは重力が小さいからだろう。なんなら1Gの平地を歩くより楽なくらいだ。


「あ、魔石早速ありましたよ」


 道路から生えている大きな結晶を楓が指さした。

 色も濃いし大きさも大きい。かなり高品質のものだ。


「それに、あっちでも紫色が光ってます」


 そこからさらに前方を楓が指差す。そこにも同じようないい魔石があった。


「うお! いきなり二つも!? ガチで宝庫じゃねえか! こりゃ根性で来たかいあったな!」


 久我がハイテンションでスコップを使って魔石を回収している。これは俺達は楽できそうだな、と楓と目を見合わせて笑った。


 魔石を回収しつつ、道路を進んでいくこと数百メートル。

 ついに最初の道路が途切れた。


「ここが終端か……」


 途切れたところに近づき下を見てみると、俺達が最初に飛び乗った地点がはるか下に見える。ちょうどぐるりと一周したようだ。

 高さはもうちょっとしたビルくらいはある。眺めもいい……いや……。


「ここからだと遠くまで見えるけど……」

「どこも崩壊していますね……」


 ずっと遠くの方まで、俺達がこれまで見てきたのと同じような廃墟の町並みが広がっている。

 何ヶ月経っても救助も何もないから予想はついていたけれど、やっぱり彩草市だけでなく世界中があの大異変に巻き込まれたんだな。


「………………」

「………………」


 しばしの間俺達は無言で滅びた光景をただ眺めていた。


 いや、滅びたことを気に病むより、これはこれで壮観な眺めだって考えた方がいいんだろうな。どんなときでも前向きに物事考えた方がいいもんだ。


「そう、前に。前に進も……久我?」

「あ、ああ? 全然平気だが? 舐めるなよ俺を」

「いや舐めてないけど、なるほど……」


 久我は目を細めて下をチラッと見てすぐ目を逸らし、また薄目でちらっと下を見て目を逸らし、とやっている。

 5階の高さは克服できてもこれはさすがに高かったか。


 楓も心配そうな表情で。


「あの、大丈夫ですか久我さん。辛いようなら無理せず帰った方が……」

「はは、はっ! 何いってんだよ! こんなもん余裕だ。見てろよ俺が一番に飛んでいくから」


 道は途切れているが、周囲には最初にここに飛び乗った時と同じように、道路の破片がいくつも浮かんでいる。

 それらを飛び移っていけば、20mほど先にある次の長い道路まで行けるだろう。


 久我は勢いをつけてそれに向かって飛んでいく――。


「うおおおお――ぐおっ!?」


 が、そこを俺が首元を掴んで止めた。


「何しやがる!?」

「熱くなるなよ重力が低いとはいえさすがにこの高さだ、落ちたらどうなるかわからない」

「つっても飛ばなきゃ先に進めないだろ」

「そのために、いったん帰って準備したんじゃないか。ほら」


 俺は魔法の鞄からロープを取り出して自分の腰にしっかりと結びつけた。久我にも渡しそれを結ぶように言う。


「これでどうするんだ?」

「命綱。もし落ちても支えられるだろ? 一人が足を踏み外しても二人が踏ん張ってそれを落ちないようにするんだ」

「いや結構きつくねえかそれ?」

「普通ならキツいっていうか多分無理だな、4,5人はいないと一緒に引っ張られて落ちる。でもこの重力なら、二人でも十分支えられると思う」

「準備万端ですね、九重さん! 正確にはわかりませんけど、半分以下の重さになってそうですしいい考えだと思います。久我さん、つけ終わったら私にもロープまわしてください。そうすれば安全にジャンプできますよ」


 久我はなるほどと頷くと、きつく腰にロープを縛り、ついで楓もして準備は完了。


「いようし、じゃあ今度こそ行くぜ! うおおおおお!」


 久我は思い切りジャンプ!


 角度の大きな軌道で、浮かぶアスファルト塊の上に着地した。


「………………よっしゃあ! おいお前らも早く来い! こんな狭いところの上でいつまでも待ちたくねーから!」


 久我が激しく手招きする。

 俺と楓は苦笑しつつ後に続いていった。



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