第14話/心-②
1.バゼリ王国-首都エノワ
ナイトリッチのスキルアビリティ、【鉄壁の陣】。その効果は、『自身のパーティメンバーは、自身の耐久値分だけ、耐久値が上昇する』というものだ。ミハルとテスタロスの防御力は、ナイトリッチと同等にまで引き上げられる。
「───なんだと!?」
こうなっては、魔法弾など効かない。一撃一撃を全て弾き、ミハルたちはアーサーに到達する───。アーサーは【魔法弾】を切り、【剛撃】をセットする。
【剛撃】/攻撃の際、筋力値が1.5倍される。
「とでも、言うと思ったかよォ!!」
(魔法弾が効かなくても、俺のエクスカリバーには、魔神王としてのバフがかかっている。そうでなければ、先ほどあいつが放った衝撃波は防ぎきれなかった。)
結論から言えば、ミハルとテスタロスを2人分突っ込んでもなお、アーサーと互角。しかし、それにはワケがあった。
【狂乱】/狂乱の魔神王の力を解放し、防御値が半減する。与えるダメージが10倍される。
【狂乱】を使用すれば、この状態からでもアーサーに勝てるだろう。だが、ダメージの影響でアーサーからは【狂乱】を使ったとわかってしまう。【第零形態】の特性で、多少の身体的欠損は許容できるアーサーにとって、それはチャンスだ。返す刀で【魔法弾】を撃ち、反撃すれば勝利なのだから。半減された防御力では、魔法弾を耐えることは難しい。
((この敵の【臨戦強化】が切れるまで待つ!))
ミハルとタスタロスはそう考えた。
一方のナイトリッチはというと、ナイトリッチはギルド【夜の剣】の四天王、バゼリ担当指揮官である。そこまで責任がある立場であるのに、ここに出向いたことには意味がある。あえて身を晒すことで、敵の狙いを自身に向けようとしていた。
(おそらく1人で攻めてきたわけではあるまい。しかし、それにしては静かすぎる。おそらくは、他の仲間は別位相で待機しているのだろう。この男がピンチになったら、フォローついでに不意打ちといったところか。)
空を見るナイトリッチ。
(未だ増援が来ないとは、何を考えている…?しかし、好都合。奴らが来ないうちに───勝負を決める。)
2.魔界-臨時キャンプ
臨時キャンプには、怒号と悲鳴が響き渡る。だが、これはおかしい。そもそも、ここに【夜の剣】が支配する部隊が送られているのは、残存勢力への牽制のためだ。
【夜の剣】自体は基本、邪神像がある地上でしか活動しない。なので、ここに対しての攻撃は比較的緩やかなはずだったのだが…。
「ざ、ザスター殿!攻め込まれています!今までにない勢いで!」
「…どれ、私が出よう。皆!適当なタイミングで襲撃を仕掛けてくれ。」
ザスターは返事も聞かず飛び出した。目に入るのは、巨大な戦闘兵器【ガルガンダ】。小型浮遊要塞である。
「………。」
『こちら、魔界侵攻軍司令官モトナリ。えー、星の会、並びに残存レジスタンスに通告する。投降せよ。』
「?」
降伏勧告。どういうことだろうか、基本的に殺して奪えばそれで済むはずだ。
『こちらにある邪神像は既に確保した。繰り返す。魔界の邪神像を我々は確保した。』
「…。なるほど。」
無くは無い話だ。これまで攻め気があまりなかったのは、邪神像を捜索していたからだろう。
「た、確かに、何名かの人員と連絡が取れない…。」
「あそこにいるのはうちの仲間だ…!こ、これは…ザスター様!」
星の会の面々は混乱する。ザスターとしても予想外な展開だが、ここで奮闘すれば、バゼリでは勝利できるかもしれない。ガルガンダほどの兵器を複数運用できるはずがない。つまり、地上世界はもっと手薄になったはずだ。
「…やってくれるね。【ムーン】。そこの君。バゼリ進行メンバーにすぐに出発しろと伝えてくれたまえ。」
「ざ、ザスター様。私たちは…。」
「我々は最後の砦兼囮となり、最後までここで戦う。以上だ。」
ザスターは【星】のアビリティジェムを砕いた。
3.浮遊大陸アスガルド-【夜の剣】本部
地下世界魔界、地上世界、そして、浮遊大陸アスガルド。夜の剣はついに、アスガルドに存在した邪神像を確保した。
「みな、よくやってくれているようで何より。」
首魁、【ムーン】は報告書を片手に、【夜の剣】の活躍に顔を綻ばせる。彼の思想はただ一つだ。
「世界を統一しよう。このままの勢いで。」
絶望があった。
攻略組が消える要因を作り、その足を引っ張った【組織】。
互いに殺し合い、【屍魂吸収】で足を引っ張り続ける魔神王達。
このままでは、ゲームクリアなんて夢のまた夢だ。
「私たちが───くだらないこの世界を、前に進ませるんだ。」
争いを止める手段は、争いだと、そう信じている。
4.【組織】-多目的室
【組織】。【ビクトリア】の情報や資源を独占する名前のない組合。第一回ワールドボス攻略前は幅を利かせていたのだが、今となっては影も形もない。
「というのも、もっと面白いものが見れるからなんだけどね。」
「いきなりひとり言かい?」
ナイトケトップギルド【水銀冠】のリーダー、ユシュエンと組織のボス、アフラは手を組んでいた。
「そうだよー。でも、楽しみだね。」
彼らの眼前。生命維持装置の中に鎮座するのは、自我を取り戻したNPC。
「ナイトケの王、ラキオ。彼を使えば───完璧な戦闘兵器を作れる。」
モニタを確認する。そこには、ザスターとガルガンダが映る。魔界のようである。
「このテストでわかるってことか。」
「彼らの性能が、どこまでか…見せてもらおう。」




