第11話/決戦準備
1.臨時キャンプ-宿舎前
俺はみっともない敗北を喫した。ああ、もう。情けない限りである。【ジャスト回避】とか、よくありそうな概念なだけになぜ今まで現れなかったのか…。
「単純に1万回回避したやつがそんなにいないらしいぜ!」
PvP…。PvPは二斧による速攻を得意とするオークだ。
「だからさ、あまり気にするなよ?アーサー。気晴らしにどこか行こうぜ。集まったんだし。」
こっちのドラゴン…ドラフォイはサラマンダーの炎魔術師。以前より体躯は大きくなり、羽も生えている。ちょっとあったかい。
「そうだな、久しぶりにこの3人でどっかいくか。」
決戦は3日後みたいだし、ちょっと何か買い物でもしたいな。
「じゃあ堕天使も誘ってきてくれ。僕のおすすめの場所に連れていくよ。」
2.ジオマ-塔
堕天使はちょっとやりたいことがあるので、留守番だそう。塔までは、ドラフォイのテレポートでひとっ飛びだった。
「ここは?」
「その前に…アルカナって知ってるか?」
「ドラフォイ。アルカナって言えば、タロットのやつだろう?」
「そう。」
ドラフォイは勿体ぶりながら続けた。アビリティジェムを俺たちに見せながら。
「アビリティジェム、これらはアルカナの名前が振り当てられている。そして僕がザスターに聞いたところ、【魔術師】、【女帝】、【戦車】、【隠者】、【塔】、【星】、【月】、【審判】、【世界】。この9個が確認済みだそうだ。」
その後、それぞれとの遭遇条件も教えてくれた。【星】、【世界】、【月】はワールドボスイベント中に戦闘エリアに出ていること。【魔術師】、【戦車】、【審判】は一定レベル以上で戦闘エリア。【塔】、【女帝】、【隠者】は、未だ遭遇報告がない。
「そう!だから、この塔という建築物が【塔】の遭遇条件なのかなと思っていてね!」
「単純な話だな。」
俺たちは塔の中に踏み込んだ。
3.塔
早速中に入ると、アラートが発生。まぁそうだよな。不法侵入者だし。ロボット兵が大量に出てくる。
「やるぞ!【魔術:燃焼】!」
「しゃあねぇな。」
ドラフォイは魔法を放ちながら、大きな身体で敵を薙ぎ払う。燃焼はデバフ系魔法のようで、耐久力を減らすようだ。魔物としてのフィジカルと合わせて、理に適っている。
PvPは高速アタッカーだが、オークとしての身体の大きさを活かして、格闘にも手を出しているようだ。手足含めて、4刀流と名乗ることもできそうだな。
「俺も続くぞ!」
4.塔-最上部
大した苦戦もしなかった。ドラフォイの弱体化&広範囲攻撃のコンボが思ったより効いていたようだった。厚い鱗のおかげで、ロボット兵の銃弾攻撃も効いてない。
「物足りねぇなぁ…。道中一本道だったぞ。ここにいれば【塔】に会えるのか?」
「さてね。ちょっと調べてみよう。」
俺たちは調べることにした。奥にはコンソールがあったので、ぽちぽち押していくと、なんか【塔】が変形を始めた。
「みんなで押した結果だから、責任は等分で。」
「そう言ってる場合か!?」
「うおお!ずり落ちるぐえっ。」
この部屋はミキサーのように回転し始めた。うごご。その時だった、ダトムの声が聞こえた。ダトム!?
ダトムは、序章第12話に登場した兵器会社の社長で、伸びる剣をつくってくれた人でもある。
『お、おい!侵入者に告ぐ、要求はなんだ!』
「あ、ダトムさん?お久しぶりです。」
『アーサー!?』
俺たちは今までの経緯について話した。
『このクソガキどもが。でも、おかしいな。メインシステムにはロックがかかっているはずだ。』
!俺の懐で何かが震え出す。取り出してみる。…出てきたのは、鉄の胎盤のタブレットだった。なになに、敵性システムハッキング完了…?揺れも止まった。
「んー、電源落としておかなかったから、勝手にハッキングしちゃったのかな…。」
『馬鹿ー!』
だが、こうなればこっちのものだ。タブレットには、この塔の機能が簡潔に紹介されている。大砲、巨大ロボット、空中要塞になれるらしい。
「これはもらいますよ。」
『それは良いけど、本来の所有者がいるはずだ。そいつはどうした?』
ザザ、と。
視界にノイズが走る。
「え?」
「アーサー!しゃがめ!」
PvPの声に従い、しゃがむ。俺の頭があった位置を熱線が通り過ぎた。
『…そこにいるのは、過去の俺だ。まぁ頑張れ。通信を切る!』
俺の視線の先にいたのは、ダトムそっくりの人間だった。顔以外にはパワードスーツを身につけている。
《 warning! warning! 》
《 【STORY BOSS】『塔』 》
「俺はザタワ。俺の塔を手に入れられる奴らかどうか、見極めさせてもらうぜ。」
へっ、アルカナだなんだと粋がりやがって。【第零形態】を起動する。その上で、【臨戦強化】だ。圧倒的なパワーで無双してやるよぉ〜!!
【第零形態】/放出する粒子を逆流させ、体内の粒子濃度を上昇させる。魔力の生成が進み、MPが上昇。また、肉体は本能的な形態を取り、思考に追従して変化する。
【臨戦強化】/【瞬間強化】×【光陰正視】のアビリティコネクト。一定時間、筋力、俊敏を3倍し、動体視力を戦闘する敵に合わせて補正する。
「オラァッ!!」
「───力押しか?しかし!俺は、無策ではないッ!!」
フリスビー並みの大きさのバリアによって、拳が防がれる。なんなんだこのバリア!?
「空間断絶バリアだ!攻撃転用もできるぞ───このようになッ!!」
ザタワの背中からマニピュレーターが出現。俺に向かってフリスビーのようにバリアを投げてきた。【臨戦強化】のおかげで、俺は避けることができたが、ドラフォイは体が大きいのでいくつか当たってしまったようだ。
「くっ…【魔術:燃焼】!」
マニュピレーターが脆くなる。
「ナイスだぜドラフォイッ!」
PvPが斧を投げることによって、厄介な投擲戦術を封殺できた。そう思ったのも、束の間である。新しいマニュピレーターが8本くらい生えてきた。
「何がナイスだってぇ〜?」
「嘘だろ畜生っ!?」
「駄目だ皆!ここにいたらやられるぞ!」
「【魔術:爆炎弾】!」
空間断絶バリアも8基。残弾はおそらく無限大。このままではやられてしまうだろう。しかし、ここでドラフォイが放った火炎球は、バリアを通り抜けた。
「ぬっ…ぐう。」
「アーサー、聴け!あいつのバリアは僕の魔法を通した!魔法なら勝ち目はある!」
この狭い部屋の中、逃げ回りながら魔法を撃つのはドラフォイには無理だ。PvPは【第二形態】を起動しているが、奴はバリアを全身に展開できるかもしれない。そうなったら、もう物理攻撃はおしまいだ。
俺の、俺の魔法………。
「───わかった。やってみる。」




