第8話/変わり果てた世界
「光だ。やっと帰れるぞ。」
「長かったな。アーサー。」
上昇していく体。一気に駆け上がる。
地上に出たら何をしようかな。そろそろ、メインストーリーを進めてみようかな。俺もすっかりレベルが上がった。(※描写外ではあるが、しっかりレベルアップしている。)
「…ん?なんだろう。音がする…これは…。」
「誰かがここで争っているのか?」
俺たちは顔を見合わせ、急いで出ることにした。俺たちがいない間に、魔界で何かあったらしい。
1.暗黒の大穴
───そこには、地獄が広がっていた。
そこら中に広がっている【死体】、血、はらわた、そして、死臭。見える限りで争っているのは…魔物と魔物、怪物同士だ。片方は、猛攻を仕掛けている。もう片方は追い詰められているようだ。
…猛攻側の様子がおかしい。具体的には、瞳が赤く発光している。暴走モード?
幸運なことに、俺たちはまだ気づかれてはいないようだ。
「どうする。アーサー。」
「情報収集しないとな。とりあえず、ここから離れないと…。」
この時になるまでは、こんなことが起きるなんて思わなかったろう。だが、予兆はあった。
あの日、堕天使と共にゆっくりしていたあの日。俺たち以外の職員は、思い返せば見かけなかった。スレイに連れられ、この大穴に行く時も、魔物を見つけることはできなかった。
…あそこにいるのは…。まさか…!?
「…なぁ、堕天使。あいつ、タイトじゃないか?」
「……。そうだな…。本気で、どういうことだ?これは。」
目を凝らせばわかる。少し遠くで魔物プレイヤーらしき者を襲っていたのは、タイトだった。…【第二形態】を発動して戦闘準備する。不意打ちされるかもしれない。
「アーサー。とりあえず…タイトに話を聞いてみないか?」
「…無理だろう。他の人を捕まえよう。」
タイトの目は発光している。それに、戦いに夢中なようだ。(別にあいつの性質を鑑みれば、おかしいことではないが)…これは一体、何が起こったんだ…!?
2.暗黒の大穴-臨時キャンプ
近くの仮設キャンプに身を寄せた俺たち。そこでは、顔馴染みの胡散臭い男が待っていた。ザスターだ。
「ようこそ、歓迎しよう。アーサー君とその仲間たち。」
「ザスター。なんであなたがここに?」
「ふむ、この男がザスターか。」
「話は過去に遡る。」
「勝手に遡らないでほしい。」
───話は過去に遡る。
それはこの件に至るまでの道筋だ。
「そもそも、何故、ギルド間で諍いが生じたのか?」
二つのワールドボス、【鉄の胎盤】、【魔神王】が討伐されてから1週間が経った。攻略組は完全に崩壊し、世界は群雄割拠の様相を呈している。
バゼリ地域では、攻略ギルド【夜の剣】、対戦ギルド【コロシアム連合】、そして、ザスターのギルド【星の会】が目立って戦争をしていた。略奪すら厭わない、本物の戦争を───。
「確かに、なんで争ってんだ?」
「我々は、あるものを狙っていた。【邪神像】だ。今から語るのは、極秘だった事だ。」
【邪神像】。それは、4大勢力であるバゼリ、ジオマ、ナイトケ、ザマルにそれぞれ一つずつ───今シーズンでサイレント実装された置物である。
起動して一定時間防衛し、起動完了させた勢力は、その地域のNPCと、そこで倒した敵プレイヤーを支配できるという能力を授かる。
「ふっ、人を支配するとは…邪悪な力極まれり、だな。」
「…で、これはどうするんですか?」
「邪神像を破壊することで、支配は終了する。邪神像は数時間後、ランダムな場所に再度出現するらしい。ちなみに、動かすことはできない。ここまでが、邪神像についてわかっていることだ。」
俺は頷き、決意を秘めた。おそらくタイトも操られているのだろう。それも、きっと集団で襲われて、抵抗できずに…。
「敵は誰なんだ?ザスター。」
「敵は、【夜の剣】。我々を凌いでバゼリの邪神像を支配。力をつけて、混迷状態だったジオマを陥落させた後、2国分の力を持ってして、一夜にナイトケとザマルを沈めた。…正直、我々の勢力が落とされていないのは幸運だった。」
…思ったより緊急度が高い。それで、俺はどうしたら良いんだろうか。
「邪神像を破壊さえすれば、勢力を取り戻すことができる。今、奴らの戦力が最も手薄なのがバゼリ地域だ。ナイトケやザマルが抵抗している分ね。特選メンバーと共に行ってきて欲しい。」
3.ブリーフィングルーム
「よかったのか?堕天使。俺についてきて。」
「構わん。顔馴染みを放っておくわけにはいかない。」
ここだ、と紹介されたブリーフィングルームに入る。道中、負傷したプレイヤーや、あまりの実力差に絶望して塞ぎ込むプレイヤーを見た。魔界であれば、いくら殺されようと支配されることはない。しかし、心を折りさえすれば、立ち上がることはない。
「…どうやら、俺たちと、ここのメンバーが、最後の希望みたいだな。」
「ふっ、違いない。」
踏み出す。メンバーは、俺と堕天使を入れて12人だった。少数精鋭というよりかは、有効な働きができる人員がこの程度しかいなかったというのと、殺され、支配された後のリスクが多すぎないプレイヤーをチョイスしたのだとか。
「…だが、それにしても…。なんでお前が、ここにいる?」
「………。」
銀鎧の男。
鉄の斧を持ってして、かつての俺たちを切り倒した───悪党、とは、また違うか。じゃあ、鬼神。
「…俺が居たら、悪いようだな。そこのお前───誰だか知らねぇが、どこかで会ったか?」
「覚えてないか?…お前にはいつか、リベンジしようと思ってたよ。俺はアーサー。」
「………。」
剣を抜く。別にここなら死んだって構わないだろう。蘇るとしても、魔界の教会で蘇ることができる。この行動は、あえて言うなら、通過儀礼だ。
「おいっ、アーサー!」
堕天使に目配せした。頼むから、許してくれ。
…かつての記憶が、蘇る。
『…おい、【枢機卿】。攻略組にはいつ戻る。』
『私は立場としては君達…攻略組と対立している。だが、《ナギト》君になら、期限くらいは言ってもいいかな。』
目を開ける。もう、逃げることはない。
「そこの銀鎧…ナギト、とか言ったな。俺と勝負しろ。」




