第8話 真実を追う者こそ
1. 最果て-鉄の胎盤-メインコア
「アーサーァァァァァァァ!!」
俺は死んだ───。
そのように、俺自身も、周囲の皆も思っていた。
「【テレポート】!」
メインコアの機銃から放たれた弾丸が身体を貫こうとする刹那、俺は転移したのだ。
───たす、かった?
「危なかったね。助けれてよかった。」
この体勢は───お姫様抱っこ?
俺は何者かに抱えられていた。
「よい、しょ。立てるよね?」
───あ、はい。あなたは。
「私は、【勇者】。」
首を上げると、長い金髪が俺の身体を撫でる。
彼女は、碧い瞳をした───【勇者】だった。
黒鉄のスカート、銀の鎧、そして、透き通る青の長剣。
戦士というには、清潔すぎる装いだ。
「おお…。彼女が【勇者】か。」
「思っていたよりも綺麗な人だね。」
まさかりや煮豆腐が【勇者】について興味を示す中、キリマンジャロ義経はアーサーの無事を喜び、胸を撫で下ろした。
「ふぅ、良かった…。」
しかし、メインコアは依然健在。
機銃と大量の魔力弾が《攻略組》達に向けられる。
まさかりは【勇者】についても気になるが、興味を断って指示を行う。
「弾が散らばるぞ!蛮族は盾を構えて前進!」
【勇者】は戦場を俯瞰して、メインコアを標的とした。
こちらを一瞥する【勇者】。
「それじゃ、また。」
───あ、ありがとうございました。
【勇者】は一飛びに前線へと駆け出した。
「煮豆腐殿!前線の蛮族達の体力の減りがおかしなことになってます!」
「どういうこと?」
「勇者の加護です!」
勇者と同じ戦場にいる者は、その加護を受けることができる。
「我らこそ、世界を守る守護者!この世界に仇なす者を───破壊するのだ!」
勇者の雄叫びに釣られて、前線の蛮族達も咆哮を上げた。
メインコアの体力が著しく減る。加護により、彼らは防御力のみならず、攻撃速度も大きく上昇していた。
───これが、勇者。
2.最果て-上空-浮遊キャンプ
勇者と《攻略組》の苛烈な攻勢によって、鉄の胎盤は耐久値を大きく損耗。第三形態へとその身を移行した。
アーサーは攻略組たちと、形態変化時の極太ビームから避難、【テレポート】によってキャンプへと退避した。
「迂闊な突撃はダメだよ。アーサー。」
───申し訳ない。
「命大事にだからね!」
キリマンジャロ義経と合流したアーサーは、彼女から叱られていた。
そんなところに、まさかりが通りがかった。
「まさかりさんだ。どうしました?」
「アーサー君に用があってね。」
───まさかりさん。
まさかりは神妙な様子で話し出した。
「アーサー君。俺たちは仲間だ。そして君はおそらく、レイドボス慣れしていないだろう?」
───はい。
「前線の蛮族にレクチャーしてもらえるよう、口利きしておいた。もし、君が今後ともレイドボスに挑戦して報酬を得ようとするのなら、彼の元に行くといい。」
───え、いいんですか!?
「初心者は大切に。《攻略組》のモットーだ!それじゃ、大成を祈る!」
3.最果て-鉄の胎盤-戦闘機構-5thコア
俺とキリマンジャロ義経はまさかりさんから紹介してもらった【カイン】という人の元へ向かった。
───義経さんもこっちにきちゃってよかったんですか?
「つれないこと言わないでよ。僕たちもう友達じゃないか。」
───あざっす。
5thコアへ到着すると、【カイン】さんと見られる重装備の【蛮族】と、装備も職種もまちまちなたくさんのプレイヤーが居た。
「お、君がまさかりの言ってたアーサーか。歓迎するよ。俺はカインだ。」
見立て通りだった。俺は一礼して答えた。
───よろしくお願いします。カインさん。
「あれ、義経はレイドボス常連だろ?どうしたんだこんなところで。」
「アーサーくんの付き添いだよ。」
「おっけ。それじゃあ実践形式でレイドボスとの戦い方を教えていくぜ。皆頑張ろうな!」
5thコアは自身の周囲の生命を掃討する機銃攻撃を特徴としたボスである。その特徴故、近接攻撃職は5thコアの挙動への注意を強制させられる。
俺たちは隊列を組み、【剛撃】を使った投擲攻撃を行なった。それも、投げるのは石だ。
カインが言うには、石はかなりのダメージを相手に与えるらしい。筋力値が威力に反映されやすいのだとか。
「ガガ、ガ掃討、掃討フェフェフェフェフェイズ移行ザザ。」
新米の俺たちでも、数が合わさればここまでダメージを出せる。
石を用意し、渡し、投げる。
俺たちの働きぶりは、長篠の戦いでの鉄砲隊…三段撃ちを想起させるものだった。
───石!
「はい!」
義経は魔術師なので石を用意している。
奇妙な安心感と連帯感があった。しかし、何故5thコアは攻撃してこないのだろうか。カインに聞いてみることにした。
───カインさん。なんで5thコアは動きを見せないんですか?
「コアの射程外にいるからだな。」
───えっ?それじゃあただのカモでは?
「お前、見てないのか?ミニオンを。」
ミニオン?知らない単語だ。
───ミニオンって?
「大部分のボスが展開してくる雑魚敵だ。鉄の胎盤はミニオンを生成するタイプのボスで、本来なら俺たちのような動きはミニオンから妨害される。」
───なるほど。じゃあ、今そのミニオンがいないのは。
「ああ。黒魔術師が多い7隊がリスキルしてる。ミニオンスポーンに張り付いてな。」
───ありがとうございます!
「いいってことよ。」
胸のつっかえが取れた俺は、カインに礼を言ってから一心不乱に投石を続けることにした。
4.最果て-鉄の胎盤-戦闘機構
30分の投石を終え、俺たちは5thコアを破壊寸前まで追い詰めた。
コアの体力は0と1の間を彷徨っている。あとはメインコアの攻略待ちだった。
《 アーサーさんのレベルが93に上がりました! 》
うし、レベルアップ!
《取得スキルアビリティ:【上級かばう】、【魔法剣:炎熱】》
【上級かばう】…味方1人を指定し、その味方が受けるダメージを全て引き受ける。
スキルアビリティ発動時、ダメージは50%カットされる。
【魔法剣:炎熱】…発動時、武器に炎属性を宿す。
これまた、おもしろそうなスキルだ。【上級かばう】は、ナイトの職業スキルである【かばう】の上位互換で、ダメージカットが新たに備わっている。
【魔法剣:炎熱】についてだが、炎は便利だ。灯りにもなるし、攻撃力も増加する。
可能性は無限大だな。
ステータス画面を見てにやけていると、手元のパッドが鳴り出した。ダンディライオンのスリープルームで手にしたタブレット端末だ。
───なんだ?
着信名、decode?
───どちらさま?
『ザザ……ザザザ………。』
始めに聞こえてきたのは砂嵐だった。ゲーマーとしての勘が、俺に言う。
面白いことが起きる、と。
『ザザ…遥か先の未来の原生◼️◼️…に伝える…ザザ。』
───これ、録音か?
『胎盤が◼️動し◼️場合…スリープルーム…。』
『アナウンスが故障し◼️いる可能性がある…。7つのエンジンを強制停止させた場合、エネルギーが収縮し…。』
『中性子星ができる。』
『ザザ…スリープルーム…ザザ。』
『……ブツッ。』
ほほ。
ほほほ。
───義経さん。俺ちょっと用事で抜けますね。
「はーい。」
俺はキリマンジャロ義経に離脱する旨を伝え、スリープルームへと向かった。




