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第4話 過去からの遺産


 【ランクアップ】は、魔族、人族どちらも一度しか適用されない。


 正規条件でランクアップを行ってから、昇華の間の女神像によってランクアップを受けたとしても、既に保有している上位職業、種族より上の段階にランクアップすることはない。


 あくまでも、データ的には。


1.最果て-中央部-昇華の間


───そうか、俺は【魔神王】になっていたから、魔族判定になっていたんだ…。


───だから、魔族特有のランクアップ…上位種族への進化が行われたのか…。


 この理屈であれば、納得する。

 どうして魔族の俺が【職業】を持てるのか、とか、色々とツッコミどころはあるが。


 唐突だが、魔族は調べによると、職業を選べないのだ。

 人族とは違い、職業の代わりに種族を選ぶ形になっている。


「魔族だったのか、貴公。」


───自覚してなかったけどな。


「どういうことだ…?」


 リロは困惑した。


《 条件を満たしたので、称号スキルが付与されます。 》


《 取得称号スキル:【段位上昇】 》


《 【段位上昇】…ランクアップを行った証。レベルの上がりやすさが1.2倍になる。 》


 そういえば、称号スキルについても説明してなかったな。そろそろ説明しておこう。

 称号スキルというのは、いわゆるパッシブスキルと言われるものだ。

 取得しているだけで効果があるのだ。例えば、俺が壁を殴る時とか、補正が入る。


 【壁殴り】…壁分類オブジェクトに10000回ダメージを与えた証。壁分類オブジェクトに対するダメージ蓄積が2倍になる。


「さて、用は済んだ。私は帰るとしよう。」


 リロはそう言った。

 でも俺としては正直、どっちつかずな気分であった。

 帰りたいのはやまやまだが、女神像の破壊ってのもすっげー興味がそそられる。

 おそらく、この機会を逃したら2度とこんな場面に立ち会うことはないだろうな…。


───うーん、俺、どうしようかな…。


「なんだバゼリの、まだここでやることがあるのか?まぁ、頑張りたまえよ。」


 リロは足早に去っていく。

 ああ…置いて行かれてしまう…。

 でも、俺はリロについていく気はなかった。

 できればついていきたかったけど。


 リロは洞窟を出て行った。


「…おい、ガキ。お前に頼むことはねぇ。でてけ。」


───えっ。


 俺は壊し屋のデカいロボに背中を摘まれ、洞窟の外へと放り投げられた…!


───おわぁぁぁぁぁぁぁッ!!??


「達者に生きるっスよ〜。」


 ロボの横から、《壊し屋》のメンバー達が、俺へと手を振っていた…。


2.最果て-上空


 光が見えない暗闇の世界に吹き飛ばされる俺。


 しかし、出てけと言われたが、俺にこの島を出る気はない。

 そもそも、島外の環境が過酷すぎて、マンボウに潰されて魔界の修練場にリスポーンするぐらいしか脱出する手がないし。


 こう言う時こそ、おれの蝙蝠羽の出番だ。

 俺は鎧にしまっておいた羽根を、鎧につけておいた穴から展開して、空中で体勢を制御する。


(いやー、羽がついてるといいなぁ〜こういう時。)


 俺は空を飛べることを利用して、この島の中央部…山岳地帯を隅々まで探索することにした。

 結局、俺はリロに連れられてきた洞窟しか見てないのだ。

 最果て、と名がつくくらいの島であれば、裏ボスが眠ってるダンジョンくらいはあってしかるべきだろう。


 滑空の体勢をとり、風に乗りながら巨大な山を旋回する。


2.最果て-中央部-山岳地帯-頂上付近


 色々と探索した結果をここに記す。

 まず、この島は一つの三角錐のような形となっている。

 上空から見ると、砂浜が綺麗な円形となっていた。人工的に作られたように思える。


 次に、この島は"上の島"───この島が100個あっても足りないだろう、【浮遊大陸】の陰に隠れている。

 ここが暗闇であったのは、まさしく上部の浮遊大陸が太陽の光を遮っていたからだ。


 ネットで調べたところ、この浮遊大陸の名前はアスガルドというらしい。


 最後に、この島の山と、浮遊大陸は繋がっている。

 山岳地帯、最高度に存在する山の頂点が、浮遊大陸の底に突き刺さっているのだ。

 頂上の円周は東京ドームほど広いが、巨大で重そうな浮遊大陸を支えられるほど太くはないため、何のために突き刺さっているかは不明だ。


 ここまで見てみると、あんまり大した発見はなさそうに見える。

 だが、実は…山の頂上の外壁を破壊することに成功した。


 その山の外壁はなんか自己再生する感じの外壁であった。


 しかし、俺は【壁殴り】スキルを持っていたので、山の外壁の再生速度を上回る勢いで攻撃をしたらなんとか破壊できたのである。


 さっそく、この開けた壁の中に入ってみることにした。


3.最果て-情報出力プラント-中継管


[ 侵入者に警告します。現時点でこのプラントは自己保存のための警戒活動を行います。 ]


[ 繰り返し侵入者に警告します───。 ]


 壁の中には、機械的な構造物が俺を待ち構えていた。


(───この山、いや、この《最果て》って、それ自体が人工物なのか…?)


 俺にそう思わせるほど、ここの設備は近未来的だ。


 植物の維管束ってご存知だろうか。

 人間で言う血管みたいなものだ。


 その維管束のごとく、大量の硬質的なチューブとケーブルが、見通しきれないほどの上方から吊り下がっていた。


 上を見ても、下を見ても、ここは奥が見えないほどの深さがある。


───ふむ、上に行くか…下に行くか…。


 どちらも魅力的に思えたが、その判断の迷いが俺の命を危険に晒した。


 突如として、翼が熱線で焼き切れる。


(え?どこから…?)


 振り返れば、俺が壊した外壁。

 その断面から、無数の砲塔がこちらを睨んでいた。

 …この構造物は、変形するのも思いのままらしい。


───うおおっ!?


 体の制御が取れなくなる!

 砲塔は依然、俺を狙って熱線を吐く。


(そうだっ!)


 俺はチューブを掴み、手繰って、チューブの束の中に隠れる。

 砲塔に対して盾のように構えた。


 砲塔の熱線が俺に降りかかるが…チューブが盾となって俺へとその攻撃を通さない。


(このチューブ、相当硬いのが仇になったな。)


 そのままチューブを頼りに、俺は下へ下へとずれ落ちていった…。


4.最果て-情報出力プラント-データベース部


 チューブを降りていき10分くらいだろうか、俺は最下層へ降りることに成功した。


 この空間は、所々に青い光源が埋め込まれていて、それらが明滅している。

 その光はこの空間を照らすには頼りないもので、場は暗く、あまり周囲の確認はできない。


(【魔法剣:光撃】起動。)


 【魔法剣:光撃】…悪魔系へのダメージが上がる。光る。


 俺は魔法剣の光でこの空間を照らすことにした。


(…なんだ?これ。)


 周囲のでかい機械(スーパーコンピューターのように見える)と、それらに接続されているチューブやコード、これはまぁ、理解できる。

 だが───ステンドグラス?


 俺の視界の中央、機械の間に、礼拝堂のようなものが設置されていた。


 女神像…あの洞窟にあったものと、まるっきり同じものが鎮座している。



「驚いた。ここにたどり着くものがいるとは。」


「別に大したことではないさ、"前"の我々と同じだよ。」


 ザザ、と。

 視界にノイズが走る。


 それを境に、辺りは魔法剣の明かりが無くとも、視界が確保できる程度には明るくなっていた。

 夕暮れより、ちょっとだけ暗い程度の光量である。

 目をこしれば、礼拝堂に二人の人間が立っていた。


 一人は黄金の鎧兜を身につけた男。

 2m程の騎乗槍…いわゆるランスを、片手で持っている。


 一人は…って、え、お前は…。


───アンタ、ザスターじゃないか…?


 そうだ。

 もう一人は、俺が海底研究所で出会った【枢機卿(カーディナル)】───ザスターにそっくりであった。

 カソックを身につけていて、白衣こそ着てはいないが…。


「確かに私の名はザスターだ。だが、多分君の知っている人物とは別人だろう。」


「ふむ、ザスター。お前は名が知られているようだな。よほど【もう一人】が活躍していると見える。」


「茶化さないでくれたまえ。"ザワルド"。」


 どうやら、鎧の方の男の名はザワルドというらしい。

 ザ・スター、ザ・ワールドが元ネタかな。

 …ネーミングが安直であるな。


 俺はとりあえず、ザスター達に状況の説明を頼んだ。

 【もう一人】?スルーだ。多分まだわからない。


───良かったらこの状況を説明してくれないか?ここってどんな場所なのさ。


「いいだろう。私たちの役目だ。ここはデータベース。この星の歴史そのものがここに集約されている。」


「ま、バックアップのようなものだがな。あまり重要度は低い。ある時のために、ここは保存されているのさ。」


 ある時?


「【ビクトリア】の───今回のシーズンのエンディングのためだ。誤解を招くだろうから、これ以上、俺の口からは言えないな。」


───じゃあ、アンタ達はなんなんだ?


「前回のシーズンの【特典】…かな?賞とでも言ってしまおうか。ランキング報酬という言い方もあるがね。」


 …?


「おい、ザスター。言葉が足りなすぎるぞ。」


「…そうか。ではもう少し詳しく言おう。この【ビクトリア】には【β版】が存在していた。前回のシーズンというのは、その【β版】だ。」


「我々はその【β版】にて上位であったプレイヤーの写し身だ。AIによる複製と言ってもいい。」


「…まぁザスターにしては及第点だな。理解できたか?少年。」


───…まぁ、そこそこは。上位のプレイヤーをAIとして複製する措置が取られたってことだろ?じゃあ次の質問だ。えーと…。


 俺が次の質問を考えてる時だった。

 ザワルドが口を開く。


「待てよ。もう質問はいいだろう?」


───えっ?


「質問責めにして真相を知るMMOがあってたまるか。俺達は運営側のNPC。進行を進める必要がある。」


「多少の発言には目を瞑ってくれたまえ、少年。なにせ、我々も元プレイヤーだ。」


 場の空気が張り詰める。

 おいおい、待て。まさか、これは───。


「俺たちと戦え。勝って先へ進め。」


「強引だが、我々も職務をこなさなければならないのだよ。───覚悟したまえ。」



 ここで戦闘かよぉおおおお!?

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