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第10話 新たな仲間

1.魔族軍司令部-入り口


 ブーンとの死闘を超えて転移石を使ってみると、そこは魔族軍の司令部だった。

 これまた白き物質にて構成された近代的な建物だ。

 ケイ素建築物っぽい感じ。


 司令部の周りを見渡すと、俺が魔界に連れてこられた時に潜ったゲートもある。

 転移魔法を使うことで物資と人員の流通をより円滑にしているらしい。

 なんでもブーン曰く、魔法に長けている魔族ならではの技術なんだとか。


 早速受付に挨拶しに行ってみると、そのまま奥の部屋に通された。

 話によれば、俺は人魔混合兵の中でも一番速く正規兵になったぽい。

 他の奴らはログインを全然しなかったり、そもそもが人族軍のスパイだったりして、使い物にならなかったらしい。


2.魔族軍司令部-応接間


(いや、スパイを連れてきて手術しちゃうのかよ。)


 まぁ、連れてくる人族プレイヤーを無差別に選んでいるっぽいから、仕方ないのか…?


「失礼します。」


 部屋の扉が開く。

 見目麗しい長い黒髪の女性がテーブルを挟んで俺の前に座った。

 事務所とかの面接を思い出すなぁ〜。


「私、【吸血鬼】をしております。【イトウ】と申します。」


 はぁ、イトウさんとな。

 名刺ももらった。魔族軍人事部に所属しているらしい…。

 なんか、すごく現代的なやりとりだな…。


───すみません。名刺も返せなくて…。


「いえ、こちらこそ、申し訳ありません。名刺は癖のようなものですので、気にしないでください。」


 なんだ、そういうマナーとかないんだな。

 心臓に悪いぜ…。


───えーと、俺、ブーンさんから此処に行けって言われていて…。


「はい、お話は聞いております。アーサーさん。貴方は貴重な人魔混合兵成功例の第一号として、広報的活動に携わってもらう予定です。」


───へ?広報?


 それって、つまり───。


「アイドルグループのようなものですね。」


 な、なんだって?

 俺、全然、アイドルの練習なんてしてないぞ。


───おれ、舞台の上で挨拶とかできる気しないんですけど…。


「…あ!あの、すみません。あくまで比喩です。」


 あ、そうなんだ。

 じゃ、なんだろう。


「この魔族軍が魔界へと活動をアピールするための、広告部隊の一員になっていただく、ということです。」


 そういうことか。


「そして、広告部隊として、派手な活躍をしていただく…そういうことです。」


 なるほどね。


───やっぱり、軍事費用を回してもらうために、こういうのが必要なんですかね?


「痛いところを突きますね…。その通りです。現実の社会と同じく、この魔界にも政府があります。そのため、我々は資金調達に苦心しているのです。」


 広告部隊なんて言葉が出てきている時点で、民衆からの支持が重要になっているんだろうなぁ、と読んでいたが、当たっていたようだ。


───分かりました。これからよろしくお願いします。


「このリストの方々が共に部隊に所属するメンバーとなります。あとで目を通しておいてくださいね。」


 資料を渡される。

 どれどれ…オーク、吸血鬼、ドラゴン、あと黒天狗か。

 なんかひとつだけ種族名の文化圏が違うやつがいるな。


「あと、これは貴方の住居の鍵です。任務期間が来るまではご自由にお使い下さい。説明に付き合っていただき、ありがとうございました。」


 おっと、もう説明は終わりか。


「何か質問はお有りでしょうか。」


───おれ、強い武器が欲しいんですけど、何か当てとかありませんかね…。


 武器は、始めた時からずっと持っていたロングソードしかなく、ブーンとの修行もあってか、かなりボロボロだ。

 そろそろ新調しないと、いざという時に素手で戦うハメになる。


「広告部隊には新兵器がテスト運用も兼ねて配備されます。その中に片手剣もありましたので、そちらを使っていただければ…。」


───了解です。ありがとうございました。


「はい、お疲れ様でした。」


 イトウさんと別れ、俺はあてがわれた住居へと赴く。


3.魔界-街道


(初めはすごいゲームだなと思ったが、今になってみると順調に強くなれてるな。)


 俺は今までのことを回想していた。


(…まぁ、明らかに正規ルートじゃなさそうだけど…。)


 初めの初めに、魔界に拉致されて、そのまま広報部隊の一員になってしまう人族プレイヤーなんて、俺ぐらいだろうな…。


───はぁ…うぉっ!?


 俯いて歩いていたら、アーサーは黒髪の男にぶつかってしまった。


「おい、気をつけろ。」


───あ、すみません…。不注意でした。


 謝って、走り抜ける。

 これ自体は本来、なんでもないこと。

 だが、こと、黒髪の男…彼に対する対応としては、下の下であった。


「───翼持ちか。」


 青年は、ばさっと黒い翼をはためかせ、アーサーの前に立ち塞がる。


───え、ちょ。なんでしょう…?


「恨みはない。だが───。」


 だが?


「切る。」


 切る?

 切る…。


───俺を?


「そうだ。」


(いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ通り魔ぁぁぁぁぁぁぁぁ。)


 長刀を構える黒髪の青年。

 名を、タイト。

 【黒天狗】の羽を駆るもの。


「抵抗しろ。でなければ、面白くない───。」


 風切る刀が戦いの火蓋を落とす。


 理不尽なバトルが、此処に始まった!

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