チャプター20「本気でぶつからないとわかりあえないこともある」
覚悟が足りず夜桜の問いかけに答えることができなかった裕也だったが、親友である春樹に背中を押され覚悟を決める。そして赤坂の部屋で誰かと一緒に映る赤坂の写真を見つけるが、その時通信機の通知音が鳴り響く。
突如鳴り響いたイヤホンに手を沿わせ話を聞き逃さないよう意識を集中させる。
「岸和市、茨本市の2箇所でゲート災害が発生した。岸和市は西之内町、茨本市の下側全域だ。一日に2度もゲート災害が発生するのは異例の出来事だ、何が起こってもおかしくない。気をつけてくれ!」
そうして、連絡は途切れる。
僕は手に持ったままだった写真立てを再び伏せ、ゲート災害が起こっている方向を確認するため窓の外を見る。
(あれか…)
そんな時に着信音がなり、連絡に応答する。
「大和、今は何処にいる!」
「今は赤坂さんの部屋にいます。」
「そうか…今の連絡は聞いていたな?」
「はい。」
「…出れられるか?」
(おそらくここで聞かれているのは、赤坂さんとの件についてだ…)
『次同じことをしてみろ、その時は俺がお前を戦えない体にする。』
脳裏に赤坂さんが言った言葉が思い浮かぶ。だけど…僕はもう決めた。
「はい、行けます!」
「そうか…なら急い岸和市に向かってくれ!後の状況についての説明は向かいながらさせてもらう。」
「はい!わかりました!」
そうして、電話を切った僕は赤坂さんの部屋の窓から外に出て、建物の屋上をわたり岸和市を目指す。
数分も立たず、再び通知音が鳴り始め、移動しながら応答する。
「はい、大和です。」
「よかった連絡がついた。大和君、今から状況を伝えるわよ。」
「はい、理上さんお願いします。」
「うん、さっきの連絡通り二か所でゲート災害が発生しているわ、茨本市は夜桜さんと多田君が向かってくれていて、大和君が向かっている岸和市には近場にいた中川さんが対応してくれているわ。」
「じゃあ、まず僕は中川さんと合流したらいいですね。」
「そういうこと。お願いするわね。」
「はい。任せてください。」
「それにしてもまさか1日に2度もゲート災害が起こるなんてね…」
そんな時、通信機から福原さんの声も聞こえ始める。
「あれ?福原さんも一緒にいるんですね。」
「うん、今回も私はここで待機。想定外の事態だからね…赤坂君もいないし、何が起こるかわからないからいつでも出られるように待機しているの。」
「やっぱり、赤坂さんは何処にいるのかわかってないんですね。」
「えぇ…まぁ、わからないものはしょうがないから私達ができることをしましょう。」
「はい、そうですね…それじゃあ一度切り…。」
そう、返事をしようとしたが、前方にいる存在に気づき、言葉を止める。
「ん?大和くんどうかした?」
「…すみません。合流出来そうにありません。」
「へ?どうして…」
「お姉ちゃん!これ…」
「え、赤坂くん!?」
二人にも見えたのだろう…そう、今僕の視線の先には赤坂さんが立っていた。
「すみませんが、福原さん任せます。」
「あっ!?ちょっと待っ…。」
そうして僕は連絡を切りそのまま電源を落とす。
「引き返す気はないのか?」
僕が目の前に降りてきたのを確認して赤坂さんは問いかけてくる。
「えぇ。」
「…忘れていないよな?もう、俺は手加減をすることはない。それでも戦うのか?」
「何度聞いても答えは変わりませんよ。僕は引き返す気はありません。」
「そうか…残念だ。」
そうして僕たちは剣を抜き、戦闘態勢をとる。
「っ!?」
(速い!?)
先手を取ろうと踏み出すが、赤坂さんの方が速く、咄嗟に防御姿勢をとってなんとか抑え込む。
「流石に一撃では終わらないか。」
そう言ってぶつかり合う刃を弾き、赤坂さんは距離を離す。それに合わせて僕は足を踏み出し、攻撃を仕掛ける。
「はぁ!!」
全て本気の一撃、手加減なんて一つもしていない、けれど全て弾かれ躱され赤坂さんには一つも攻撃が通らない。
「まぁまぁだな。」
攻撃の隙を狙われ一太刀を通される。
「っ!!ぐふ!?」
なんとか体を右に捻り躱すが腹に蹴りを喰らい、吹き飛ばされる。
「っ…くそ…いつっ!?」
膝をつき立ち上がろうとした時、頬に痛みが生じる。
(躱しきったと思ったんだけどな…)
痛みを感じ頬には触れると血が手に付着する。
(これが赤坂さんの本気…)
「っ!?」
追撃を仕掛けてくる赤坂さんに気づき、後方へと下がり、建物から降りる。
それを追って赤坂さんも飛び降り、空中で刀を振り下ろす。
「ぐっ!!」
態勢を整え、赤坂さんの一太刀を剣で防ぐがそのまま地面へと飛ばされる。
「まずい!?」
咄嗟に地面へと剣を振り下ろし叩きつけられる前に衝突するのを免れたが、勢いは殺しきれずそのまま地面に激突する。
「つぅ…」
そうして、ふらつきながらも立ち上がる。
《止まるな!上から来るぞ!》
「はっ!?」
脳裏に響く声に従い、前方に飛び込みなんとか赤坂さんの攻撃を避ける。
(あぶねぇ…あの声がなければ終わってたな…)
そうして謎の声に感謝しつつ、赤坂さんから続く攻撃を頬にかすめつつ、回避や受け流してなんとか防ぐ。
「ぐっ…」
(わかっていたけれど、今の僕じゃかなわない…)
「はぁ!!」
なんとか攻撃の合間を掻い潜り攻撃も仕掛けるが、逆に隙を突かれカウンターの肘打ちを顔に受けてしまう。
「ぐぅ!?」
攻撃から逃げるように後方へと全力で下がり、態勢を整える。
(こっちの攻撃はあまり通らない…やっぱりこれしかないか。)
そうして続く攻撃を全力で避けながら建物内へと入る。
そこで、今まで呆然一方だった赤坂さんの攻撃の手が緩まる。
(今だ!!)
その隙を見逃さず、机を掴み赤坂さんへと投げ込み、壁を蹴りつけて一気に距離を縮め攻撃を仕掛ける。
「はぁ!!」
攻撃は防がれてしまうが、渾身の一撃を受けて後方へと滑った赤坂さんは、
「まだまだぁ!!」
「ぐっ!!」
続けて迫る僕の蹴りを防ぐことはできず、モロに受ける。
「っ…なるほどな。」
そう言って、走り出す赤坂さんを僕は追いかける。
(戦いやすい場所に移動されたら駄目だ!攻撃の手を緩めるな!)
「たぁ!!」
机や壁などの間を素早く動き出し、仕掛ける攻撃は決定打にはならずとも先ほどよりも通る様になり、躱すよりも剣で受け止める数が増えている。
「屋内は邪魔な物が多いから大きな攻撃や回避はしにくい…」
攻防戦を続ける中、赤坂さんは余裕の笑みを浮かべる。
そして、
「ぐっ!!」
赤坂さんの攻撃を回避しきれなかった僕は蹴り飛ばされ、追撃を受けそうになる。
「つっ!!」
咄嗟に机に置かれた紙を中に蒔いて赤坂さんの視界を塞いですぐさま後方に飛び回避する。
「確かにこれなら外でやるよりも勝機はある。よく考えたな。ただし。」
そう言って、赤坂さんはそばにあった植木をこちらへと投げてくる。
「っ!」
体を捻って回避した後、視線を戻すと赤坂さんの姿がなかった。
「はっ!?」
「こっちだ!!」
机でできた死角から赤坂さんが飛び出し、必死に後方へと回避する。
「ぐっ!?」
(しまった!?後ろに机が!!)
しかし、後方には机があり、それ以上下がることができずに腕を掴まれ、投げ飛ばされてしまう。
そうして、窓に激突した僕に、赤坂さんは追い打ちをかける。
なんとか腕で攻撃を防ぐが、その勢いで窓が窓ごと外れ、外へと放り出されて地面を転がる。
そうして、赤坂さんも追うように建物から飛び降り、僕の前に立つ。
「俺がそうである様にお前も自由に動けないことを忘れたら駄目だな。」
「つぅ…」
(くそ…誘導された…)
ふらつきながらも立ち上がり、口に含んだ血を吐いてから再び構えを取る。
(屋内戦闘でも駄目なのか…)
赤坂さん対策に考えていた作戦が失敗に終わり焦りを感じていた。
「もう諦めろ。お前が何をしたって俺にはかなわない。」
「嫌だね…諦めなければ可能性はある…」
(まだ、チャンスはある…諦めるかよ…)
「っ!?そうか…それなら…」
僕の言葉を聞いた赤坂さんは驚いた顔をした後、怒りを露わにする。そして、その瞬間赤坂を中心に冷たい空気が辺りを包む。
(殺気!?いや…実際に辺り一帯が寒くなっているのか…?)
大阪の夏に肌寒さを感じる筈はなく、この異常な状況に冷や汗をかく。
「お前に1ミリの可能性すらないってことをわからせてやる。」
「っ!?」
(嫌な予感がする!!)
嫌な気配を感じ後方に飛んだ瞬間、辺り一帯が氷に包まれる。
「なっ!?」
氷の上に着地するが、上手くバランスが取れず滑って手を地面につく。
(これ本物なのか…)
地面の冷たさに本物の氷であることを確信する。
「さぁ、これが俺の本気だ。必死に食らいついてこいよ?」
「っ…もちろん!」
(くっそ…異能とかに憧れてはいたし、普段なら喜んでたんだろうけど、この状況では流石に喜んでいらないな…)
「行くぞ!」
そう言って、赤坂さんは氷上を真っ直ぐに突っ込んでくる。
「はぁ!!」
そんな赤坂さんを俺は正面から迎え撃つ。
3.4撃とぶつかり合う剣と剣、力的には拮抗しているが、慣れていない氷上での戦闘で一方的に押し込まれていた。
(一旦引いて…)
そうして、後方へと飛ぼうとしたが、
「ぐ!?しまっ!?」
足を滑らせ床に膝をつく。
「はぁ!!」
「うぐっ!?」
隙を晒した僕を逃すわけもなく、赤坂さんは腹に蹴りを入れる。
「うぐぐ…はっ!?」
続いて赤坂さんが形成した氷を飛ばしてきており、痛む体を無理やりに動かし頭から飛び込み何とか避ける。
滑る体を無理やり起こし、休む暇もなくこちらへと飛んで来る氷から逃げるため走って、遮蔽物に隠れる。
(くっそ…足元も悪いし、息も吸う隙がねぇ…っ!?)
「ぐっ!?」
遮蔽物に隠れて呼吸を整えようとするが、壁にしていた遮蔽物から氷の柱が飛び出し、僕を襲う。
「俺の能力は自分から半径10メートルに氷を形成することができる。遮蔽に隠れたって無駄だ。」
「っ!?」
後方からそう赤坂さんの声が聞こえ、剣を振るうとカーンという剣と剣がぶつかる音が響く。
(いつの間に後ろに…)
鍔迫り合いになるが態勢の悪かった僕は、押し返されてしまう。
「もうわかっただろ。お前に勝機は無い。無駄な抵抗はやめておけ。」
「…やっぱり優しいですね。」
「は?」
(確信したやっぱりこの人は…)
ここまで見ていただきありがとうございました!激しくなる赤坂とのバトル…この先どうなるのか…続きはまた来週!お楽しみに!




