チャプター19「覚悟」
赤坂さんを知るため、挑んだ戦いは2人の格差が大きく、一矢報いることはできたが大和は苦戦を強いられる。そんな最中、夜桜さんの乱入があり決闘は中断を強いられる。
僕たちが指示通り構えを解いたのを確認して、夜桜さんが近づく。
「福原から聞いたぞ、お前たち何をやってるんだ。」
「…すいません。」
「…。」
そうして僕は頭を下げて夜桜さんに謝罪をしていると、赤坂さんは何も言わず夜桜さんの隣を過ぎる。
「おい、赤坂。」
「なんですか?俺はそいつに付き合わされただけ、終わったんで先に戻らせてもらいます。」
「赤坂くん、ちょっと!」
そうして、赤坂さんは福原さんのことを無視して階段を上がり姿を消す。それを追って福原さんの姿も見えなくなる。
「ったく…すまなかったな。」
赤坂さんを見ていた夜桜さんは頭をかきながら声を漏らした後、謝罪をする。
「赤坂のためだとわかっていたから様子を見ていたんだが、さすがにまずい状況だったから止めさせてもらった。」
「あはは、見ていたんですね。正直助かりました。」
(最後の一撃…あれは受け止められる気はしなかったからな…)
そうして、直感的に感じた恐怖を思い出す。
「はぁ…あれは使うなって言っておいたのにな…」
「え?何かに言いましたか?」
夜桜さんが何か言ったような気がして聞き返す。
「ん?いや何にもないさ。」
「そうですか?」
「あぁ。」
そう言って、夜桜さんは笑顔を向ける。
その後、決闘の片付け終えて部屋に戻るまで夜桜さんと行動をしていたのだが、頭の中には赤坂さんが苦しんでいた時の情景がチラつき、そのことばかり考え込んでいて壁に衝突してしまう。
「うぐ!?っ…」
「おい、大丈夫か?」
「え、えぇ…大丈夫です。」
「…」
そうして再び赤坂さんのことを考え始めていた。
「…赤坂のことか?」
「…はい。」
「勝負の途中、赤坂さんが苦しみだしたともに豹変したんです。あの様子は普通じゃなかった…」
頭を抱え苦しみ始めた赤坂さんのことを思い出しながら僕はそう夜桜さんに伝える。
「…気になるか?」
「はい…」
「そうか…」
そう夜桜さんは返事をして無言になるが、すぐにまた話し始める。
「もし…もしも、君に踏み込む覚悟があるのなら赤坂の部屋に行くといい。部屋の奥にある棚の上、そこにヒントがある。」
「…。」
(踏み込む覚悟…)
今までは良かれと思っていろいろ行動してきた。だけど夜桜さんの放った『覚悟』という言葉に引っかかり僕は返事ができなかった。
「ほらついたぞ。」
その言葉を聞いて顔を上げると目の前に僕の部屋があった。
「それじゃあ俺はこの後も仕事が残ってるから、失礼するよ。」
そうして夜桜さんは手を振りながら廊下の奥へと歩いていく。
「あっ、あの!その…」
「今、俺が話せるのはここまでだよ。ここから先は、どうするのか大和が決めた後だ。」
咄嗟に呼び止めるが、夜桜さんはこちらに一度顔を向けてそう言った後再び歩みを進め、姿が見えなくなる。
ーー夜桜事務所:屋上ーー
あれから1人で考えていたが結局選択はできなく、気持ちを整理するために屋上へとやってきて夜風を浴びていた。
「覚悟か…」
(今までいろんな人を助けたいという一心で首を突っ込んできたが、夜桜さんの『覚悟』という言葉を聞き、僕は返事に迷ってしまった。いや、恐らく赤坂さんが苦しむ様子を目の前にしたのも原因なんだろう。
つまり、僕は覚悟ができていなかった…覚悟している気になっていただけだったんだ。)
「これが赤坂さんが言っていたごっこ遊びなんだろうな…」
(救いたいという気持ちは本物だ。だけど、赤坂さんの苦しみようを見て、一歩間違えれば取り返しのつかないような気がして僕は恐怖を感じてしまった…)
「…ひっ!?」
赤坂さんとのやり取りを思い出していると、背後から首筋に何か冷たいものがあてられ変な声が出てしまう。
「春樹、お前!」
「はは、ほら受け取れ。」
振り返ると僕の反応を見て笑っている春樹がいた。
「たく…まぁ、ありがとう。」
「おう。」
そうして差し出された缶ジュースを受け取り、封をあける。それを見ながら春樹は隣に座る。
「聞いたぞ?赤坂さんと決闘したんだって?」
「あぁ…」
「はは、お前らしいな。昔から困っている人が入ればすぐに首を突っ込む。」
そう言って春樹はぐびっと缶ジュースを飲む。
「春樹はどう思う?これ以上詮索しないほうがいいと思うか?」
「さぁな。」
「さぁなって…」
そう春樹が他人事のように軽く返事をしたため僕は肩を落とす。
「だって俺はお前じゃないし、どうすればいいのか何てわからないよ。でも、一つだけ言えることはあるよ。」
「なんだ?」
そう言った春樹の顔を見て僕は聞く。
「それがお前の性分なんだから思った通り、好きにすればいいんじゃないか?」
「そう…か…」
春樹の言葉を聞いて再び考え込んでしまう。
「なぁ、俺と裕也が友達になった時のことを覚えているか?」
「あぁ覚えてるけど、急にどうしたんだよ。」
3年前河川敷で、春樹と出会った時のことを思い出す。
「あの時の俺は両親の離婚話を聞いて1人河川敷で項垂れていたそんな時、裕也と出会ったんだよな。」
「そうだったな、何日も同じ場所で座り込んで悲しそうな顔をしてたから心配になって声をかけたら、怒鳴られてびっくりしたよ。」
あの時、春樹の両親は離婚の危機に陥っていたこともあり、整理できない思いを怒りに転換させ、出会ったばかりの僕にも攻撃的な言動をばかりだった。
「でも、それでもお前は首を突っ込んだ。裕也には関係のない他人の話だってのによ。」
初めは心配して声をかけたのに仇で返された怒りも混じっていたと思う。後は絶対に助けると意固地になっていたから更にヒートアップして毎日毎日声をかけ続けていたんだ。
「だってのに、何日も何日も声をかけられて…最終的に俺が根負け折れて話すことになった。」
初めこそそんな感じだったけれど、途中からは少しずつ春樹のことを知り始め、怒りなどは消えて単純に助けたいと思っていた。
「正直に言うとあの時の俺は裕也のことを嫌いだったんだぜ?うざい、お節介、迷惑だってな。でも、今では本当に感謝しているよ。」
春樹はそこで一度話を止め、ジュースを飲み喉を麗した後、再び話し始める。
「『大丈夫、僕がついているよ。』この言葉は今でも覚えている。今考えたら何が大丈夫なんだって思うけれど、それでもあの時その言葉を聞いて凄く安心したし、裕也のおかげで俺は一歩を踏み出す勇気を出せた。そのおかげで今も俺は家族と一緒に暮らすことができている。」
そう、最終的には春樹が両親に向けて思いの丈をぶつけ、それを聞いた両親が考えを改めて今も家族全員で幸せに過ごしている。
「まぁ…何が言いたいかといえば、迷惑だと感じる人だっているだろうけど、それでも心の何処かでは助けを求めているんじゃないかな。俺もその1人だったわけだしな…だから、無理に変わらうとしなくてもいいんじゃないかとそう俺は思うよ。」
「春樹…」
その言葉を聞いて僕の心は軽くなる。
「まぁ、どちらにせよ、俺と出会う前から今日までたくさんの首を突っ込んで引っ掻き回しながら人を助けてきたお前がこの性格を直せるとは思えないけどな。」
「あはは、ひっで友達のことを何だと思ってるんだ…でも、ありがとうな。」
「あぁ。」
そうして、僕はどうするのか覚悟を決める。
「うん、決めた…僕は赤坂さんのことを救いたい。」
「そっか、頑張れよ。」
「あぁ、ありがとう。」
そうして僕は走り出し、屋上の扉に手を置こうとしたがその前に春樹の方へと振り返る。一つずっと疑問に感じていたその答えがわかった気がして春樹に確認してみることにした。
「あっ、そうだ。春樹!」
「ん?なんだ?」
「春樹が僕と一緒にこの夜桜事務所に入ったのは、もしかして僕に恩義があったからなのか?」
「なっ!?」
そうして、頬を染める春樹だったが、
「…っそうだよ、その通りだ。」
と包み隠さず恥ずかしそうに答えてくれる。
「はは、そっか。ありがとうな。」
そうして嬉しかった僕は感謝を伝えた後、そのまま赤坂さんの部屋へと向かっていく。
ーー夜桜事務所:個室(赤坂の部屋)ーー
「…」
(確か…棚の上だったな…)
そうして僕は静かに赤坂さんの部屋の前へとやってきて夜桜さんから聞いた話通りに棚の上にあるものを探すために部屋へと入る。
ちなみに僕が特訓のため待ち伏せをしたあの日以来赤坂さんは部屋に戻った様子はないため、侵入しても気づかれる心配はない…と思う。
そうして棚の前へと到着した僕は棚の上の物をずらさないよう、落とさないよう慎重に探し始めると…
(もしかしてこれか?)
棚の端のほう何故か伏せられた状態で置かれている写真立てがあり、試しに見てみることにした。
「これは…赤坂さんと…誰だろう?」
そこには学生時代の赤坂さんと男性が笑顔で肩を組み合っているところが写っていた。
(これが夜桜さんが言っていたヒント…)
そうして眺めていると突如通信機から警報が鳴り始める。
ここまで見ていただきありがとうございました!前回の投稿から半年以上休んでしまい、今日の周年までお待たせしてしまいました。本当に申し訳ありませんでした。
3周年記念として1ヶ月間毎週木曜投稿をさせていただきます!休ませていただいていた分、納得のいく、ストーリーを書くことができていますので、お楽しみに!そして、その後についてはなのですが、もう一つの小説『転生師弟の復讐』と並行して進めていく予定とさせていただきますのでよろしくお願いします。
それでは本当にここまで見ていただき、ありがとうございました。




